3つのバイエルン舞曲

3つのバイエルン舞曲 作品27

『3つのバイエルン舞曲』作品27は、英国の作曲家エドワード・エルガーが手がけた管弦楽のための組曲です。この作品は、エルガーが1895年に完成させた6曲構成の合唱曲集『バイエルンの高地から』（From the Bavarian Highlands）作品27aの中から、特に人気の高かった3曲を選んで、管弦楽版として再構成されたものです。

もともとの合唱版では、歌詞を作曲者の妻キャロライン・アリス・エルガーが手がけています。これらの歌詞は、夫妻が1894年秋にドイツのバイエルン地方、特にガルミッシュ＝パルテンキルヒェン周辺で過ごした、心満たされる休暇の思い出にインスパイアされたものです。アリスはそれぞれの曲に表題を与えるとともに、夫妻が滞在中に訪れたお気に入りの土地の名を副題として添えました。これにより、音楽は単なる描写に留まらず、特定の場所と結びついた感情や風景を呼び起こすものとなっています。

管弦楽版の初演は1897年10月23日、作曲者自身のタクトによって実現しました。これは、当時ロンドンの水晶宮でアウグスト・マンス卿が主宰していた著名な演奏会シリーズの一環として行われたものです。初演は好評を博し、当時の『タイムズ』紙は、エルガーがこの舞曲を、そしてマンス卿がプログラムの他の部分を、それぞれ「第一級の様式」で指揮したと称賛する批評を掲載しています。この成功を受けて、『3つのバイエルン舞曲』は、エルガーの初期の管弦楽作品の中でも早くから広く親しまれるようになりました。

この組曲は以下の3つの楽章から構成されています。それぞれの曲には、アリスが付した土地の副題が付記されています。

第1曲：踊り (ゾンネンビッヒル)
The Dance (Sonnenbichl)
アレグレット・ジョコーソ、3/8拍子、ト長調
この楽章は、明るく、生命力にあふれた活気のある音楽です。バイエルンの祝祭や民俗舞踊を思わせるような、快活なリズムと陽気な旋律が特徴で、聴く者に楽しい気分をもたらします。

第2曲：子守歌 (イン・ハンマースバッハ)
Lullaby (In Hammersbach)
モデラート、3/4拍子、ニ長調
穏やかで牧歌的な雰囲気を持つ楽章です。静かで優しい旋律が中心となり、特に、ホルンによって奏でられる瞑想的で物思いに耽るような旋律が印象的です。バイエルンの美しい田園風景や、穏やかな休息の時間を思い起こさせます。

第3曲：射撃手たち (バイ・ムルナウ)
The Marksmen (Bei Murnau)
アレグロ・ヴィヴァーチェ、3/4拍子、ト長調
この組曲中で最も長く、演奏時間は約4分半を要します。エルガーの描くフィナーレの特徴が凝縮されたような楽章で、冒頭から活気に満ちた力強い展開を見せます。音楽は次第に高揚し、壮大さを増しながら進み、最後はオーケストラの華やかな響きの中で、勢いよく終結を迎えます。射撃大会のような賑やかな催しを連想させる、祝祭的なフィナーレです。

これら3つの舞曲は、それぞれ異なる性格を持ちながらも、全体としてエルガーらしい旋律美とオーケストレーションの巧みさを示しています。バイエルンでの幸福な休暇の記憶が、エルガー夫妻の共同作業によって、色彩豊かな管弦楽作品として結晶化した好例と言えるでしょう。その親しみやすいメロディと表現豊かな音楽は、今日でも多くの聴衆に愛されています。

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