5.8×42mmDBP87

5.8x42mm DBP87：中国人民解放軍の小口径アサルトライフル弾薬

5.8x42mm DBP87は、中華人民共和国で開発された小銃用弾薬であり、中国独自の小口径小銃弾として知られています。

概要

人民解放軍では、5.56x45mm NATO弾や5.45x39mm弾といった他の小口径高速弾と比較して、より重い弾頭を高初速で射出することにより、優れた性能を発揮すると評価しています。

中国は、日中戦争で対峙した大日本帝国陸軍の三八式実包が、自軍の7.92x57mmモーゼル弾よりも小口径であるため、低反動かつ低伸する弾道による高い命中精度を有している点を評価していました。しかし、朝鮮戦争でソ連から供与されたモシン・ナガンなどの兵器により、小銃弾の口径がモーゼル弾と大差のないソ連式に改められました。

1970年代、中国はベトナム戦争でアメリカ軍が使用したM16自動小銃や5.56x45mm NATO弾に触れ、再び小口径弾薬を脅威と認識しました。軽量な小銃と小口径高速弾の組み合わせによる、高い命中精度、資源の節約、携行弾薬の増加といったメリットに着目し、中国軍も小口径高速弾を求めるようになりました。

当時、ソ連を含む東側諸国では5.56x45mm NATO弾のような小口径高速弾は実用化されておらず、中ソ関係も冷え込んでいたため、中国は独自に小口径高速弾を開発せざるを得なくなり、5.8x42mm DBP87が誕生しました。

開発経緯

1971年、中国独自で開発する小口径高速弾の要求仕様が以下の様にまとめられました。

口径：6mm前後
初速：1000m/s前後
腔圧：3200kg/cm2以下
有効射程：400m
威力：600m以内で殺傷能力と装甲貫通能力が56式7.62mm普通弾以上
射撃精度：フルオート射撃で63式自動歩槍以上
弾道特性：400m射撃において弾道高低差0.4m以下
弾頭：普通弾のみならず徹甲曳光弾、焼夷弾の設計も考慮
銃の重量：3.2kg以下
銃の特性：構造が簡単で、生産性、経済性、操作性に優れ、軍の作戦要求に適合

これらの要求に基づき、中国各地の研究所、工場、軍が協力して予備研究と検証を開始しました。最終的には、3つの研究所、2つの学院、27の工場、1つの軍基地、および関連する軍部隊が参加し、5.6mm、5.8mm、5.81mm、5.98mm、6mmといった様々な口径の弾薬が試作・検証されました。

1978年、5.8mmと6mmの2つの口径で要求を満たせることが確認されました。それぞれの口径に長所がありましたが、最終的に5.8mm口径が採用されることになりました。

1979年、5.8mm口径の弾薬と小銃の開発が開始され、1987年に5.8x42mm DBP87と87式自動歩槍として完成しました。しかし、87式自動歩槍の性能に軍が満足しなかったため、5.8x42mm弾の配備と56式7.62mm弾の更新は95式自動歩槍の完成と配備まで遅れることになりました。

その後、5.8x42mm弾はDBP95、DBP10と改良が続けられ、現在はDBP191が最新の改良型となっています。

5.8x42mm弾は、小口径化、軽量化、高初速化という国際的な軍用弾薬のトレンドに沿ったものでした。5.56x45mm NATO弾や5.45x39mm弾などの弾薬と同様に、従来のより大口径で重い銃弾と比較して、兵士が携行できる弾薬の量が増加し、長射程での弾道特性が向上、ボルトにかかる圧力や射手に伝わる反動が軽減されるため、軽量な銃器の設計や自動火器の精度向上に貢献しました。

性能

弾丸重量4.15gのDBP87/95弾薬を、95式自動歩槍の463mm長の銃身から発射した場合、銃口初速は930m/sです。銃身長557mmの95式班用機槍から発射した場合は940～960m/sです。100mの距離で8～10mmの鋼板を貫通します。これは、同じ距離で6～8mmの鋼板を貫通する56式7.62mm普通弾よりも優れています。

コスト抑制のため、弾薬ケースは鋼製で、腐食を防ぐため、薬莢はダークブラウンの防護塗装で覆われています。鋼は真鍮よりも柔軟性に欠けるため、発砲時に薬室内の隙間を十分に塞ぐことができず、真鍮製薬莢に比べて性能が低下します。燃料効率の高い無煙発射薬と非腐食性の雷管がDBP-87に使用されています。

DVP88重弾は、88式汎用機関銃や88式狙撃歩槍で使用するために、遠距離での射撃精度と威力を向上させた派生型です。

弾丸重量5gで、銃身長557mmの95式班用機槍からの銃口初速は870m/sです。銃身長620mmの88式狙撃歩槍からの銃口初速は895m/sです。有効射程は800mで、85mの距離で16mm、1000mの距離で3.5mmの鋼板を貫通します。射程600mで非常に良好な精度を発揮すると報告されています。

DVP88を95式自動歩槍で使用すると銃の寿命を著しく損ないます。逆にDBP87/95を88式汎用機関銃や88式狙撃歩槍で使用した場合、銃の寿命は損なわれませんが、DVP88ほどの遠距離性能は得られません。

DBP10は、小銃、狙撃銃、機関銃で弾薬を共用できるように設計されています。弾丸の形状と銅ジャケットの材料を改良することで、銃身の摩耗と過熱を抑制し、射撃精度を向上させています。

DBP191は191式自動歩槍と共に開発され、射程と銃身の耐用命数を向上させています。

人民解放軍陸軍は、5.8x42mm弾が5.56x45mm NATO SS109弾や5.45x39mm 7NG弾よりも優れていると主張しています。この弾薬は300mの距離でより弾道が低伸しており、装甲貫通力も優れています。また、同じ距離でより大きな速度とエネルギーを維持できるとしています。新型のDBP10は、弾丸重量が4.6g、銃口初速が915m/sで、既存の全ての5.8x42mm弾薬を使用する銃器に適合するように設計されています。DBP10は、従来のDBP87/95弾とDVP88弾を代替する予定です。弾丸形状の流線型化、耐腐食性雷管の採用、鋼芯の直径縮小、銅被覆鋼製薬莢と銅合金弾丸ジャケットなどが改良点として挙げられます。弾薬には燃焼効率が向上した発射薬が使用されており、発砲後に銃器内部に残留物を残しません。また、質量が4.6gに増大されたDBP10は、装甲板や他の硬目標に対する貫通力が向上しています。従来のDBP87/95弾の試験では、人体に重大な損傷を引き起こす可能性は低いと指摘されていましたが、DBP10でもこの問題は改善されていません。

弾種

DBP87 普通弾
DBP95 普通弾
DBP10 普通弾（ベルダン型雷管）
DBP10A 普通弾（ボクサー型雷管）
DBP191 普通弾
DBX87 曳光弾
DBX95 曳光弾
DBX10 曳光弾
DVP88 重弾
DVC88 重徹甲弾
DVC12 重徹甲弾
DVX88 重曳光弾
DVX12 重曳光弾
DBU141 狙撃用高精度弾
DBK01 空砲
DBF07 ゴム弾

採用例

87式自動歩槍
95式自動歩槍
95B式自動歩槍
95式班用機槍 QBB-95 LSW
88式狙撃歩槍
03式自動歩槍
88式通用機槍
QTS-11
* 191型5.8mm自動歩槍

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