63式装甲兵員輸送車

63式装甲兵員輸送車

63式装甲兵員輸送車（63式裝甲運兵车／63式履带装甲输送车、WZ-531/YW-531）は、中国が開発した装甲兵員輸送車です。当初は西側諸国から様々なコードネームで呼ばれていました。

概要

63式は、中国がソ連の技術援助を受けずに独自に設計した初の国産装甲戦闘車両です。中国人民解放軍では、59式戦車の部隊配備開始に伴い、戦車に追随できる装甲兵員輸送車の必要性が高まりました。59式戦車の国産化を機に、装甲戦闘車両の開発も始まり、1958年に63式の原型である「58式装甲兵員輸送車」の開発がスタートしました。

58式は試験の結果、要求水準を満たせず開発は中断されましたが、その設計を基に63式が開発されました。

開発

58式の改良型も要求水準に達せず、設計を大幅に変更。開発中の軽戦車や水陸両用戦車との部品共通化が求められ、最終設計案が完成しました。1962年2月に試作車が完成し、良好な結果を得て、翌年から「63式装甲兵員輸送車」として生産が開始されました。

1964年の大規模演習で公開されましたが、問題点も多く、1965年から改良型の開発が始まりました。1966年には改良型の試作車が完成しましたが、文化大革命の影響で正式承認が遅れ、長らく「63式装甲兵員輸送車」の名称で生産・配備されました。

構造

63式の車体は、前部左側に操縦手席、右側に車長席、中央部に機関室、後部に兵員室を持つ構造です。鋼板の溶接で構成され、7.62mm弾を防ぐ程度の防御力があります。水密構造で水上走行も可能で、波切板を立ててキャタピラで推進します。武装は12.7mm重機関銃1挺で、車体側面には射撃孔があります。

比較

80式装甲兵員輸送車

1980年代には、海外市場向けにエンジン換装などの改良を施した「YW-531C」が開発され、「80式装甲兵員輸送車」として輸出されました。

63-I式

自走砲の開発に伴い、車体を延長し、転輪を増やした「63-I式」が開発されました。

63-II式

建国35周年記念の軍事パレードに合わせて、63-I式とYW-531Cの成果を盛り込んだ「63-II式」が開発されました。通信装置を換装した「WZ-531K」も存在します。これらは85/89式装甲兵員輸送車のベース車両となりました。

運用と実戦経験

63式は現在も2,300輌以上が配備されています。北朝鮮、アルバニア、イラクなど多くの国に輸出され、ベトナム戦争、ウガンダ・タンザニア戦争、アンゴラ内戦、中越戦争、イラン・イラク戦争などで使用されました。天安門事件では、デモ隊を鎮圧する様子が報道され、広く知られることとなりました。

各型および派生型

63式: 初期量産型
63A式: 改良量産型、12.7mm重機関銃搭載
63-I式: 車体延長型、転輪5個
63C式: ドイツ製エンジン搭載、80式とも呼ばれる
YW-750: 装甲救急車型
63-II式: 63C式を基にした改良型
WZ-531K: 63-II式の通信装置換装型
66式水陸両用装甲兵員輸送車: 海軍陸戦隊用水陸両用型
YD-801: 消防車型
63D式/63E式: 指揮通信車仕様
YW-701: 兵員室を嵩上げした指揮通信車型
YW-721: 長距離通信装置搭載の装甲通信中継車型
70式122mm自走榴弾砲: 63-I式の車体に榴弾砲を搭載
70式130mm自走ロケット砲: 63式の車体にロケット弾発射機を搭載
YW-304: 81mm迫撃砲搭載の自走迫撃砲型
YW-381: 120mm迫撃砲搭載の自走迫撃砲型
自走対空砲型: 87式25mm連装機関砲搭載
323式装甲兵員輸送車: 北朝鮮が63式を基に開発
PT-85: 北朝鮮が323式の車体延長型に85mm砲を搭載
BMT装甲戦車: タミル反乱軍が63式にサラディン装甲車の砲塔を搭載

参考文献

ステイン・ミッツアー、ヨースト・オリマンス『朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍』大日本絵画、2021年。

関連項目

装甲兵員輸送車
85/89式装甲兵員輸送車

外部リンク

FAS(Federation of American Scientists)＞Type 63 YW-531 Armored Personnel Carrier
* 日本周辺国の軍事兵器＞63式/80式装甲兵員輸送車（WZ-531/YW-531C）

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