7月14日革命

1958年7月14日イラク革命：ハーシム王朝の終焉と共和国の誕生

1958年7月14日、イラクにおいて、急進的な自由将校団による軍事クーデターが発生しました。このクーデターは、長きにわたるハーシム王朝の終焉をもたらし、イラク共和国の樹立という新たな時代を切り開きました。しかし、その裏には、王政への不満、汎アラブ主義の高まり、そして国際情勢の複雑な絡まり合いがありました。

ハーシム王朝と高まる反王政感情

1921年、イギリスの支援の下、ファイサル1世によって樹立されたハーシム王朝は、パレスチナ戦争での敗北などにより、国民からの支持を失いつつありました。特に、国王ファイサル2世、摂政アブドゥル＝イラーフ、首相ヌーリー・アッ＝サイードらは、親英的であるとしてアラブ民族主義者から強い反発を受けていました。こうした状況は、クーデターの発生を孕む土壌となっていました。

エジプト革命の影響と自由将校団

イラクの自由将校団は、1952年のエジプト革命でムハンマド・アリー朝を打倒したナセル率いるエジプトの自由将校団を模倣していました。汎アラブ主義を信奉する彼らは、アラブ諸国の現状を腐敗し、アラブ統一を阻むものと捉え、体制転換を志向していました。スンニ派中流家庭出身者を中心とした将校たちは、1952年以前の中東情勢や、エジプト自由将校団の成功に強い影響を受けていました。

クーデターの計画と実行

アブドルカリーム・カーシムとアブドッサラーム・アーリフ大佐を中心とした自由将校団は、秘密裏にクーデターを計画しました。当初は、エジプトのナセル大統領からの支援を期待していましたが、実際には精神的な支援にとどまりました。

クーデターのきっかけは、イラク王国がヨルダンへの軍隊派遣を決定したことでした。カーシムとアーリフ率いる部隊はバグダードを経由して派遣されることになり、その過程でクーデターを実行したのです。

7月14日早朝、バグダード放送局を占拠した彼らはクーデターの決行を宣言。ファイサル2世、アブドゥル＝イラーフ、ヌーリー・アッ＝サイードらは殺害され、ハーシム王朝は崩壊しました。王室一家殺害については、命令によるものか、現場の判断によるものか、現在も議論が続いています。

クーデター後の混乱と鎮圧

サイードは一時逃亡しましたが、後に発見され射殺されました。彼の死をきっかけに、バグダード市内で暴動が発生。アーリフの「売国奴」粛清の呼びかけにより、暴徒による破壊行為がエスカレートしました。カーシムの外出禁止令によってようやく鎮圧されましたが、その後もサイードの遺体が暴かれるなど、社会不安は続きました。

アメリカ合衆国への衝撃と国際情勢

イラクにおけるクーデターは、アメリカ合衆国に衝撃を与えました。CIA長官のアレン・ダレスは、ナセルの関与を疑い、中東諸国への連鎖反応を懸念しました。イラクのハーシム王政は、アメリカにとってソ連の進出を抑える重要な同盟国でした。このクーデターは、アメリカ合衆国の中東における影響力を弱体化させる出来事となりました。

共和国の樹立とその後

クーデター後、臨時憲法が制定され、イラク共和国が樹立されました。カーシムは首相兼国防大臣となり、強い権力を掌握。革命評議会が実権を握り、シーア派、スンニ派、クルド人の代表からなる主権評議会が大統領の役割を担いました。イラクは中東条約機構から脱退し、ソ連を含む共産主義諸国との同盟関係を築き、社会主義的な方向へ傾いていきました。しかし、この共和国の樹立は、イラクにおける政情不安の始まりに過ぎず、その後もイラクは様々な混乱と変動に見舞われることになります。

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