7月5日の海戦 (1942年)

7月5日の海戦：アリューシャン列島における日米の激突

1942年7月5日（連合軍記録では7月4日）、第二次世界大戦中の太平洋戦線、アリューシャン列島のキスカ島沖で、日米両海軍が交戦しました。この海戦は、アメリカ海軍の潜水艦による奇襲攻撃が発端となり、日本側の駆逐艦に大きな損害を与える結果となりました。

海戦の背景

日本軍は、特殊潜航艇や水上戦闘機、海軍陸戦隊を輸送するため、水上機母艦「千代田」と輸送船「あるぜんちな丸」を、第18駆逐隊の駆逐艦3隻（霰、不知火、霞）で護衛し、横須賀からキスカ島へ派遣しました。

1942年5月5日、大本営はミッドウェー島とアリューシャン列島西部要地の攻略を命じ（MI作戦とAL作戦）、AL作戦成功後のアッツ島は陸軍、キスカ島は海軍が防備を担当することになりました。

6月4日、第四航空戦隊（空母龍驤、隼鷹）を基幹とする第二機動部隊はウナラスカ島のダッチハーバーを空襲しましたが、ミッドウェー作戦はアメリカ軍の邀撃により大敗。その後、北方部隊はAL作戦（アダック島上陸中止、アッツ島とキスカ島攻略）の続行を決定しました。

6月7日から8日にかけて、北海支隊はアッツ島を、舞鶴鎮守府第三特別陸戦隊はキスカ島を占領。日本軍はアッツ島を熱田島、キスカ島を鳴神島と改名しました。

当時のキスカの地上兵力は、海軍陸戦隊、12cm平射砲4門、7cm野戦高角砲4門などであり、防備は脆弱でした。6月9日にキスカに進出した飛行艇6機は、偵察や哨戒を実施しましたが、大きな戦果は得られませんでした。

一方、連合軍はキスカ島気象観測室からの連絡途絶により、PBYカタリナ飛行艇でキスカ島湾内に艦船複数隻を発見。アメリカ本土の一部が占領されたことに、米国民の世論に若干の動揺がありました。6月12日には駆逐艦「響」が空襲を受けて損傷しています。

海戦の勃発と被害

7月5日早朝、「千代田」と「あるぜんちな丸」がキスカ湾に入港。濃霧の中、キスカ島沖に停泊していた第18駆逐隊は、アメリカ海軍の潜水艦グロウラーの奇襲を受けました。

グロウラーが発射した魚雷は、駆逐艦「霰」に命中し、同艦は船体が分断されて沈没。「不知火」と「霞」も大破し、航行不能となりました。この奇襲により、日本海軍は大きな痛手を受けました。

当時の第18駆逐隊司令、宮坂義登大佐は、転錨時刻を遅らせたこと、霧のため予定位置に停泊できなかったことなどを要因として回想しています。

損傷艦の帰投

アメリカ軍潜水艦の脅威が増す中、日本海軍はアッツ島やキスカ島への警戒を強化。7月15日には、潜水艦グラニオンが駆潜艇25号と27号を撃沈するなどの被害も発生しました。

危機感を覚えた北方部隊は、増援部隊を内地へ帰投させます。7月10日には、第一水雷戦隊司令官の大森仙太郎少将を指揮官とする北方部隊護衛隊が編成され、キスカ周辺の敵潜掃討と艦船の護衛警戒を行うことになりました。

「千代田」は「初春」に護衛され、7月12日にキスカを出発。「不知火」と「霞」は、タンカーの残骸に隠れて応急修理を行いました。7月17日、横須賀鎮守府は救難用資材人員の輸送を命じ、救難隊が派遣されました。

7月28日、「霞」は応急修理により曳航可能となり、「雷」に曳航されキスカを出発。その後、舞鶴に到着し、修理を受けました。「不知火」も8月15日に「電」に曳航されてキスカを出発し、舞鶴で長期の修理に入りました。

海戦後の関係者

第18駆逐隊司令の宮坂大佐は、責任を感じて自決を図りましたが、一命をとりとめました。不知火駆逐艦長の赤澤中佐は、駆逐艦「涼月」の艦長となり、後に戦死。陽炎駆逐艦長の有本中佐は、その後も陽炎艦長としてガダルカナル島の戦いに従事。霞駆逐艦長の戸村中佐は、駆逐艦「満潮」艦長などを歴任しました。霰駆逐艦長の緒方中佐は、軽巡洋艦「木曾」副長などを経て、キスカ島撤退作戦に参加しました。

まとめ

7月5日の海戦は、アリューシャン方面の戦いにおいて、日本海軍が受けた痛手の一つです。この海戦を教訓に、日本海軍は対潜哨戒や護衛体制を強化しましたが、その後の戦局に大きな影響を与えることとなりました。

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