8.8 cmロケット発射器43型

8.8 cmロケット発射器43型（プップヒェン）

8.8 cmロケット発射器43型は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ軍が開発・使用した対戦車ロケット砲です。後に8.8 cmロケット式対戦車銃43型に名称が変更されました。愛称の「プップヒェン（Puppchen）」は、ドイツ語で「お人形ちゃん」という意味で、その小型で可愛らしい外観からそう呼ばれました。

概要

本砲は、WASAG（ドイツ語版）のエーリッヒ・フォン・ホルト博士によって設計されました。しかし、開発経緯に関する資料は少なく、同威力のロケット弾を使用するパンツァーシュレックとの関係性など、不明な点が多く残されています。

構造

プップヒェンの構造は非常にシンプルです。プレス加工された鋼板を溶接した単脚型の砲架、ロケット燃料の燃えカスを防ぐための薄い盾、二重構造の薄肉砲身で構成されています。仰俯や旋回にはギアを使用せず、駐退機も備えていないシンプルな砲架が特徴です。2個の転輪により移動が可能で、通常の砲に比べて小型で簡易な作りでした。

車輌牽引や馬匹による長距離移動の際には、2.8 cm重対戦車銃用のものと同じプレス鋼板製の転輪や、雪上用のソリを装着できました。戦闘時には、姿勢を低くして敵に発見されにくくするため、転輪などを外して砲に紐を付けて引きずって移動しました。また、8つの部品に分解して、人力で長距離を運搬することも可能です。

ロケット弾

プップヒェンで使用するロケット弾はRGr4312です。後に採用されたパンツァーシュレック用のRPGr4322や4992と同じ弾頭を使用しており、形状もよく似ています。パンツァーシュレックは、反動をなくすためにロケットの推進力を発射器で受け止めず、後方に爆風として放出するため、推進剤が多く、ロケット弾の全長がやや長くなっています。一方、プップヒェンは、薬室（実際には砲身後部末端）の閉鎖機で発射時の爆風をすべて砲架で受け止め、二重構造の砲身の間から前方にガスを逃がす方式を採用しています。発射時には、砲全体が20 - 30 cmほど跳ね上がる様子が記録映像で確認できます。

性能と評価

プップヒェンは、携帯式ロケットランチャーであるパンツァーシュレックと比較して、有効射程が350 m、最大射程が700 m、砲口初速が150 m/sと優れています。しかし、小型軽量であるものの、生産コストや軽快さではパンツァーシュレックに劣りました。1943年中に3,000門程度が製造されたにとどまり、その活躍もあまり記録されていません。

使用砲弾諸元

名称: 8.8cm Raketenpanzerbüchse Granate 4312
全長: 498.8 mm
胴部直径: 88.7 mm
重量: 2.66 kg
初速: 140 m/sec
弾頭炸薬重量: 0.656 kg
推進薬重量: 0.046 kg
最大射程: 700 m

参考資料

月刊グランドパワー 2004年8月号（ガリレオ出版）

関連項目

対戦車砲

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