86式自動歩槍 S型

86式自動歩槍 S型

86式自動歩槍 S型（または86S式自動歩槍）は、中華人民共和国の中国北方工業公司（ノリンコ）が製造した、56式自動歩槍をブルパップ方式に改造した自動小銃です。アメリカの民間市場向けに輸出されたAK系統の銃器として知られています。

開発の背景

1950年代初頭にイギリスがEM-2を開発して以来、中国でもブルパップ方式の研究が行われていました。1970年代末、戦闘の近代化に伴い、軽量・コンパクトで高い威力、精度、信頼性を備えた銃器が求められるようになります。当時の中国はブルパップ方式に関する十分なノウハウを持っていませんでしたが、AUGやFA-MASを参考に開発に着手しました。

1983年には試験用の試作型としてWTC-1とWTC-2が開発され、試験が行われました。WTC-2は、従来の7.62x39mm弾仕様と新型の5.8×42mm弾仕様の2種類が試作されています。

WTC-1とWTC-2は1985年5月に中国国内の様々な機関や部隊に向けて公開試験を実施し、高い評価を受け、機械化部隊への採用が推薦されました。しかし、ブルパップ方式の銃器は当時の戦術的思想に適合せず、採用は見送られました。

採用には至らなかったものの、ブルパップ方式の将来性は評価され、後の95式自動歩槍の開発に役立てられました。

WTC-1とWTC-2は軍に採用されなかったため、民間市場へ向けた販売が検討され、設計を洗練。民間輸出仕様として再設計され、1986年ごろに86式自動歩槍 S型が開発されました。86式自動歩槍 S型は、アメリカのチャイナスポーツ社を通じて、1989年から1994年に規制が強化されるまでに約2,000挺がアメリカに輸出されています。

構成

86式自動小銃 S型は、56式自動歩槍をベースにしており、レシーバーはほぼそのまま流用されています。ブルパップ化にあたり、銃床とハンドガードを取り除き、レシーバーを延長。そこにトリガーとグリップを移動させ、マガジンリリースレバーからレシーバー後端にかけて小型の銃床が追加されています。

従来AKの大型セレクターは廃止され、レシーバー右側面のグリップ上に小型セレクターを備えています。ハンドガードの代わりにレシーバー前端には折りたたみ可能なフォアグリップが追加されており、射撃時の安定性を高めています。従来のアイアンサイトは廃止され、フロントトラニオンからガス導入部にかけて大型のキャリングハンドルが追加されており、照準器の機能も備えています。

86式自動歩槍 S型は、AK同様のガス圧ロングストロークピストン方式で作動しますが、コッキングレバーは縦型に変更され、キャリングハンドル内に移動しています。銃身は、アメリカへの輸出の際SBR（Short Barreled Rifle：短銃身ライフル）認定を受けないよう延長されています。

86S式自動歩槍は、中国の銃器開発史における過渡期の製品であり、ブルパップ方式の可能性を追求した意欲的な試みとして評価できます。その設計思想は、後の95式自動歩槍に大きな影響を与えました。

関連項目

AK／AKM
56式自動歩槍
EM-2
AUG
FA-MAS
95式自動歩槍

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