FA-MAS

FA-MAS（ファマス）とは

FA-MAS（Fusil d'Assaut de la Manufacture d'Armes de Saint-Étienne）は、フランスのサン＝テティエンヌ造兵廠が製造したブルパップ方式のアサルトライフルです。その独特な形状から「クレーロン」（軍隊ラッパ）とも呼ばれています。1977年にフランス軍に制式採用され、長年にわたり主力小銃として活躍しました。

概要

FA-MASは、全長75.7cm、重量3.7kg、口径5.56mmのブルパップ型ライフルです。上部レシーバーにはキャリングハンドルがあり、光学照準器を取り付けることができます。初期型のF1は専用の25発弾倉を使用しましたが、1994年以降のG2バージョンからはSTANAGマガジンが使用可能になりました。2017年よりH&K HK416Fへの更新が進められており、2027年の完了を目指しています。

特徴

ブルパップ方式

携帯性を向上させるため、銃身を短縮せずに全長を短くできるブルパップ方式を採用しています。これにより、取り回しの良さと銃身の長さを両立しています。

作動機構

作動機構には、AA-52機関銃と同様のレバー遅延式ブローバックを採用しています。この方式は、てこの原理を利用してボルトの開放を遅らせることで、反動を軽減し、高い連射速度と安定性を実現しています。

命中精度

ガスポートを持たない長い銃身は、高い命中精度をもたらします。また、ブルパップ形状や銃身軸線の位置、レバー遅延式ブローバックの効果などが複合的に作用し、優れた集弾性を発揮します。

操作性

コッキングハンドルは銃の上面にあり、左右どちらからでも操作可能です。セレクターは、安全、セミオート、連射を切り替えられ、さらにバースト（3点射）ユニットを組み込むことも可能です。二脚が標準装備されており、伏せ撃ちなどの依託射撃も安定して行えます。

ライフルグレネード機能

FA-MASは、対人・対軽装甲用のAPAV 40と対装甲用のAC 58のライフルグレネードを運用できます。直接照準用と間接照準用のアリダード式照準器が付属しており、射距離は最長340メートルまで設定できます。

光学照準器

初期型はキャリングハンドルが固定式であったため、取り付けられる光学照準器が制限されていましたが、後期型では脱着式に変更され、ピカティニーレール付きのものと交換できるようになりました。しかし、コッキングハンドルの位置関係から、光学照準器は射線よりも高い位置に装着されることになります。

欠点と対策

精度の低下

ブルパップ方式の採用により、前後サイトの間隔が短くなり、長距離射撃時の命中精度が低下する傾向がありました。これを補うため、二脚を標準装備し、依託射撃時の安定性を向上させました。

健康被害

銃床に機構が組み込まれているため、射撃時に顔の近くに機構が存在し、健康問題が生じました。

- 呼吸器系: 排出された硝煙を吸い込むことで、呼吸器系を害する可能性がありました。
- 聴覚系: 作動音や破裂音が鼓膜を痛める可能性がありました。
- 顔への怪我: 排出口が顔の位置にあるため、薬莢が顔に当たる危険性がありました。排莢方向は整備時に変更できますが、左右撃ちを臨機応変に切り替えることはできません。

弾の相性

初期型のF1は、M193弾を想定して設計されたため、NATO弾を使用すると動作不良を起こす危険性がありました。応急処置として、鉄製の薬莢を持つNATO弾を生産し、他国製のNATO弾の使用を禁止しました。G2ではSTANAGマガジン対応に伴い、NATO弾も使用可能となりましたが、F1も現役であるため鉄製薬莢は引き続き使用されています。

バリエーション

- F1: スタンダードモデル
- F1 スナイパー: キャリングハンドルを小型のマウントレールに変更したモデル
- G1: F1にハンドガードを追加したモデル
- G2: G1をSTANAGマガジン対応にしたモデル
- G2 コマンド: カービンモデル
- G2 SMG: G2 コマンドにバーティカルグリップを追加したモデル
- G2 ピカティニーレール: F1 スナイパーをSTANAGマガジン対応にしたモデル
- G2 スナイパー: F1 スナイパーの銃身延長モデル

民生品として、フルオートと3点バースト機能を排除したものが、フランス国内と北米向けに計600丁限定で販売されました。

使用国

- フランス
- アラブ首長国連邦
- セネガル
- カメルーン
- ガボン
- ジブチ
- フィリピン

F1型はアラブ首長国連邦軍、G2型はフィリピン国家警察の特殊部隊で採用されています。

登場作品

（省略）

脚注