A.P. モラー・マースク

A.P. モラー・マースク：海運業界の巨人、その歴史と事業

A.P. モラー・マースクは、デンマークを拠点とする世界的な海運コングロマリットです。売上高において長年世界一の地位を保ち、特にコンテナ船事業で圧倒的な強さを誇ります。コペンハーゲンに本社を置き、ナスダック・コペンハーゲンにも上場しています。

グローバルな事業展開: 世界125カ国以上に拠点を持ち、約250隻の船舶を保有しています。その中には、コンテナ船だけでなく、タンカーや車両運搬船なども含まれ、多様な輸送ニーズに対応しています。運航しているコンテナ船は550隻以上に及び、世界中の港湾を結ぶ広大なネットワークを構築しています。海運事業の他にも、流通、造船といった関連事業にも広く進出しています。青地に7角形の白い星が描かれたファンネルマークは、世界中の海でその存在感を示す象徴となっています。

歴史: 1904年、ピーター・マースク・モラー親子が中古汽船を購入したことから始まりました。第一次世界大戦後の好況を追い風に、造船所の建設や海外拠点の設立などを進め、着実に事業を拡大しました。第二次世界大戦中の困難も乗り越え、戦後は日本支社の開設や東南アジア、中東、西アフリカへの航路開設など、グローバル化を加速させました。

1970年代からは、コンテナ船の投入を本格化させました。コンテナ化による輸送効率の向上と、台湾、香港、シンガポールなどへの子会社設立は、世界的な海運ネットワークの構築に大きく貢献しました。他社買収も積極的に行い、1979年にはSvitzer A/Sを買収、2006年にはP&O ネドロイド、2016年にはハンブルク・スードといった業界の有力企業との合併・買収を通じて規模を拡大しました。これにより、マースクは世界をリードする海運企業へと成長を遂げました。

1990年代には、コンテナ船の大型化やコンテナ開発など、技術革新にも積極的に取り組んでいます。1996年には当時世界最大のコンテナ船である「REGINA MÆRSK」を投入しました。また、1999年にはシーランドの国際定航部門を買収、更なる事業拡大を図りました。

エネルギー事業への参入と撤退: 一時は、Maersk Oilを通じて石油・ガス事業にも参入し、北海油田などでの開発・生産に携わっていました。生産量は相当な規模に及びましたが、2017年にフランスのトタルに売却しました。

日本における事業: 日本には1947年に支社を開設し、その後、現地法人のマースク株式会社を設立しました。横浜や神戸などに拠点を展開し、自社ターミナルも保有していましたが、現在はターミナル運営から撤退し、船舶の寄港・荷役を中心に事業を行っています。日本と欧州間の直行航路は一時廃止されましたが、その後復活しています。

現代のマースク: 現在も世界的な海運会社としてその地位を維持し、デジタル化やサプライチェーンの最適化など、業界の変革にも積極的に取り組んでいます。2022年のロシアによるウクライナ侵攻においては、ロシア発着の貨物予約を停止するなど、世界情勢への対応も示しました。マースクの歴史は、常に変化と革新を繰り返しながら、海運業界のリーディングカンパニーとしての地位を築き上げてきたことを物語っています。その歴史と規模、そして世界への影響力は、現代の国際貿易においても重要な役割を担っているといえるでしょう。

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