AA (映画)

『AA』は、2006年に公開された青山真治監督によるドキュメンタリー映画です。音楽批評家・間章（Aida Aquirax）の人物像とその思想を、彼と親交のあったミュージシャンや批評家たちのインタビューを通じて深く掘り下げています。間章は、日本におけるフリージャズ、インプロヴィゼーション（即興演奏）、そしてプログレッシブ・ロックの普及に大きく貢献した人物として知られています。この映画では、彼の音楽的な業績だけでなく、その思想や人物像にも迫り、彼の着目したインプロヴィゼーションの過去、現在、そして未来について考察しています。

映画の製作期間は約5年にも及び、上映時間は7時間以上という大作です。その内容も多岐にわたり、大友良英や灰野敬二といった著名なミュージシャンのライブ映像、出演者同士が意見を交わす場面など、見どころが満載です。また、映画中には「生きているデレク・ベイリー」という言及がありますが、デレク・ベイリーは映画公開の前年に亡くなっています。この点も、映画に独特の深みを与えています。

映画は、以下の6つの章で構成されています。

第1章 時代の未明から（54分）: 間章の音楽活動の初期を振り返り、彼がどのような音楽に触れてきたのか、そのルーツを探ります。
第2章 反復する未明（77分）: 間章の音楽批評の核心に迫り、彼の思想がどのように形成されたのかを詳細に分析します。
第3章 非時と廃墟そして鏡（81分）: インプロヴィゼーションが持つ可能性と限界について、多角的に考察します。
第4章 僕はランチにでかける（77分）: 間章の日常に焦点を当て、彼の音楽観がどのように日常生活に影響していたかを探ります。
第5章 この旅には終わりはない（79分）: インプロヴィゼーションの進化と未来について、関係者たちがそれぞれの視点から語ります。
第6章 来たるべきものへ（75分）: 間章の遺した思想と、それが現代の音楽にどのように影響を与えているのかを考察します。

映画には、以下の著名な音楽家や批評家が出演しています。

大友良英
亀田幸典
近藤等則
佐々木敦
清水俊彦
副島輝人
高橋巖
竹田賢一
灰野敬二
平井玄
本間亮
湯浅学

また、大里俊晴がインタビュアーとして出演し、彼らの証言を引き出しています。

『AA』は、単なる音楽ドキュメンタリーではなく、間章という特異な人物を通して、音楽、批評、そして人間の存在そのものについて深く考えさせる作品です。彼の思想と音楽に対する情熱が、スクリーンを通して観る者に強烈な印象を与えるでしょう。

この映画は、音楽ファンだけでなく、哲学や思想に興味のある人、そしてドキュメンタリー映画を愛する全ての人々にとって、見逃せない作品と言えるでしょう。

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