AIM-120 (ミサイル)

AIM-120 AMRAAM (アムラーム)

概要

AIM-120 AMRAAM（Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile）は、アメリカのレイセオン社が製造する中距離空対空ミサイルです。当初はヒューズ社が開発しましたが、同社がレイセオン社に吸収合併されたため、現在はレイセオン社が開発と製造を行っています。

開発経緯

AMRAAMは、1970年代にAIM-7 スパローの後継として開発が始まりました。1979年にはヒューズ社とレイセオン社が概念実証段階に進み、試作ミサイルの発射実験の結果、ヒューズ社の設計が採用されました。1982年に全規模開発契約が締結され、1991年にはアメリカ空軍が、1993年にはアメリカ海軍が初期作戦能力を獲得しました。その後も改良が進められ、AIM-120B、AIM-120Cなどの派生型が開発されました。

当初、AIM-120Bは非ステルス機、AIM-120Cはステルス機に搭載される予定でしたが、ステルス機の配備遅れにより、現在は非ステルス機でもAIM-120Cが使用されています。また、射程延伸などの改良を施したAIM-120Dも開発されています。

特徴

撃ちっ放し能力と同時多目標攻撃能力

AMRAAMの最大の特徴は、「撃ちっ放し能力」（fire and forget）と「同時多目標攻撃能力」です。従来のセミアクティブ・[[レーダー・ホーミング]]（SARH）誘導方式のミサイルとは異なり、AMRAAMはアクティブ・[[レーダー・ホーミング]]（ARH）方式を採用しています。これにより、ミサイル自体がレーダー波を発射して目標を追尾するため、発射母機はミサイル発射後に回避行動をとることができます。

ただし、ミサイルに内蔵されたレーダーはサイズに制約があるため、遠距離目標の捕捉には限界があります。そのため、AMRAAMでは中間誘導と終末誘導を組み合わせています。中間誘導では、慣性誘導や指令誘導を使用し、目標に接近した段階でアクティブ・[[レーダー・ホーミング]]による終末誘導に切り替えます。このシステムにより、AMRAAMは複数目標への同時攻撃も可能となりました。

その他の特徴

AMRAAMはECCM能力（対電子妨害対抗能力）に優れており、ジャミングを受けた場合でもその発信源に誘導される機能を持っています。また、チャフによる妨害にも強いとされています。

さらに、AMRAAMはAIM-7 スパローよりも小型軽量化されており、搭載できるミサイルの数が増加しました。これにより、従来は短距離ミサイルしか搭載できなかった箇所にも中距離ミサイルが搭載可能となり、航空機の生存性が向上しました。

名称

AMRAAMは、Advanced Medium-Range Air-to-Air Missileの頭文字を取ったものであり、開発期間が長かったため、通称として定着しました。「スラマー」という非公式の愛称もあります。

基本型・派生型

AIM-120A

最初の実用型で、以後の改良型の基本となりました。

AIM-120B

AIM-120Aの誘導装置を改良し、プロセッサーをデジタル化したモデルです。

AIM-120B+

AIM-120Bの改良型で、AIM-120C系列の改良を取り入れたモデルです。

AIM-120C

F-22の兵器倉に収容するために、フィンを小型化したモデルです。細かな改良型が存在します。

AIM-120C-4: 弾頭威力を増強したモデル。
AIM-120C-5: ロケットモーターの大型化や誘導部の小型化、ECCMを強化したモデル。
AIM-120C-6: 目標探知装置をアップグレードしたモデル。
AIM-120C-7: 新型レーダーアンテナや誘導電子機器の改良、慣性基準ユニットの装備、目標探知装置の強化など、大幅な改良が施されたモデル。

AIM-120D

最新型で、射程が1.5倍に向上し、GPS/IMUを装備したモデルです。双方向データリンクも搭載しており、高角度でのオフボアサイト射撃に最適化されています。

システム改善プログラム

AMRAAMの性能向上のため、いくつかのシステム改善プログラムが実施されています。SIP-1、SIP-2、SIP-3などがあり、ソフトウェアやハードウェアの更新が行われています。

フォームフィット機能更新プログラム

老朽化したAMRAAMの生産を継続するために、新しいシグナルプロセッサを開発するプログラムです。集積回路の遅延問題が発生していますが、解決に向けて取り組まれています。

FMRAAM

AIM-120の発展型として計画されたラムジェットエンジン搭載型ミサイルです。しかし、開発計画はキャンセルされました。

NASAMS

ノルウェーとアメリカが共同開発した、AMRAAMを使用する中高度防空ミサイルシステムです。

実戦使用

AMRAAMは、1992年にイラク軍のMiG-25を撃墜したのが初の実戦使用です。ユーゴスラビア紛争でも使用されました。

輸出

AMRAAMは、アメリカ製の戦闘機だけでなく、ユーロファイター タイフーンやサーブ 39 グリペンなど、多くの国の戦闘機に搭載されています。

日本での運用

航空自衛隊では、試験的にAIM-120B及びC-5、C-7が導入されましたが、本格導入は見送られ、国産の99式空対空誘導弾が採用されました。しかし、F-35Aのウェポンベイの問題から、AIM-120の導入が検討されています。近年、日本への輸出が承認されており、導入が進められています。

採用国

多くの国で採用されており、国際的な標準的な中距離空対空ミサイルとなっています。

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