AMD Catalyst

AMD Catalyst（エーエムディーカタリスト）は、かつてAMD（旧ATI）が開発していたグラフィックドライバおよびユーティリティソフトウェアです。AMD Radeon（旧ATI Radeon）シリーズ、AMD FirePro（旧ATI FirePro）シリーズ、AMD APUに対応していました。旧称はATI Catalystです。

提供されるソフトウェアのバージョン番号は「(公開された年の下1桁、2010年からは下2桁).(公開された月)」という形式でしたが、これらはドライバーの内部バージョンとは異なりました。

FireProシリーズ向けの「Catalyst Pro」は、ワークステーション向けのドライバーであり、OpenGLや各種プロフェッショナル向けグラフィックスアプリケーションソフトウェアへの最適化が施されていました。

Catalystに含まれる主な機能

- Catalystディスプレイドライバー：Direct3D、OpenGL、Mantleに対応したグラフィックドライバです。
- OpenCLドライバー：並列処理を行うためのAPIであるOpenCLに対応したドライバーです。
- DisplayPort/HDMI用オーディオドライバー：DisplayPortやHDMI接続時のオーディオ出力に対応したドライバーです。
- Catalyst Control Center（CCC）：グラフィック設定を調整するためのユーティリティソフトウェアです。動作には.NET Frameworkの導入が必要でした。
- AVIVO：HD動画のGPU支援プログラムで、動画のデコード、エンコード、解像度変更などを支援しました。
- Hydravision：マルチディスプレイ環境を構築するためのドライバソフトウェアです。
- Multi-Media Center (MMC) and Remote Wonder (RW)：マルチメディア機能とリモートコントロール機能を提供していました。
- 3D設定：3Dグラフィックスの表示に関する詳細な設定を行うことができました。

3D設定の詳細

デスクトップ版Catalyst 10.6を例にとると、全体的な設定として、パフォーマンスと画質の間で調整が可能でした。設定レベルは「最適パフォーマンス」「ハイパフォーマンス」「バランス」「パフォーマンス」「高画質」「最適画質」の6段階があり、左に調整するほど描画が高速になる一方で画質は荒くなり、右に調整するほど画質が向上する一方で描画負荷が増大しました。

アンチエイリアシング

フィルターレベルは「Box」「Narrow-tent」「Wide-tent」「Edge-detect」の4種類があり、倍率を上げることで画質が向上しますが、描画負荷も増大します。

適応アンチエイリアシング

「スーパーサンプリング」は、軽負荷で中画質の「パフォーマンス」設定と、高負荷で高画質の「画質」設定がありました。「マルチサンプリング」は「滑らか」と「鮮明」の間で調整可能で、左に調整するほど軽負荷で中画質、右に調整するほど高負荷で高画質になりました。

異方性フィルタリング

1ピクセルごとのサンプル数を2xから16xの間で調整可能で、値が大きいほど高画質になり奥行き感が増しますが、描画負荷も増大します。

Catalyst A.I

ドライバがサポートするアプリケーションが起動した際に、最適化された動作設定を自動で適用する機能です。無効にするとアンチエイリアシングが効かないケースもありましたが、古いゲームでは動作が不安定になることもありました。

ミップマップ詳細レベル

「パフォーマンス」と「画質」の間で調整可能で、左に調整するほど軽負荷で中画質になり、右に調整するほど高負荷で高画質になりました。

垂直リフレッシュを待機

垂直リフレッシュは、一般にV-Sync（垂直同期信号）と呼ばれるもので、描画速度に関わる設定です。「オフ」にするとフレームレートの上限が解除され高速に描画されますが、アプリケーション側で設定されている場合は無効になります。基本的には「アプリケーション側で指定しない限りオフ」が推奨されました。

AVIVOの詳細

AVIVOは、HD動画のGPU支援プログラムであり、動画のデコード、エンコード、解像度変更支援、インターレース解除などの機能で構成されています。一部機能はハードウェア固定機能を用いており、DirectShowフィルタとして提供されていました。これらの機能を個別に利用することも可能でした。

AVIVOビデオコンバータ

動画を別の形式に高速変換するためのソフトウェアです。Catalyst Control Centerの基本モードから動作させることができました。変換処理にはGPUアクセラレーション技術が用いられ、高速なDivX互換'>[エンコード]]を可能にしていました。対応形式はMPEG-1、MPEG-2、MPEG-4]、[[Windows Media Videoなどでした。画質設定はビットレートのみで、詳細な出力設定はサポートされていませんでした。また、1パスエンコードのみに対応していました。

一部のモバイルデバイス向けのプリセット設定では、解像度変換も行われました（例：iPodビデオ(H.264, 320x240)）。

主なフィルタ

- ATI MPEG Video Decoder (MPEGまたはWindowsMediaVideo形式の映像デコード)
- ATI MPEG Video Encoder (映像エンコード)
- ATI MPEG Audeo Decoder (MPEGオーディオ形式の音声デコード)
- ATI MPEG Audio Encoder (音声エンコード)
- ATI Video Scaler Filter (映像サイズ変換)

これらのフィルタは、対応ソフトウェアやAVIVOビデオコンバータを用いることで動作しました。

AMD OverDrive

AMD OverDrive（旧称ATI Overdrive）はオーバークロック機能を提供していました。ロック解除後に操作可能となり、GPUクロックやメモリクロックを簡単に調整できました。GPU温度の表示機能や、温度上昇時の自動クロック速度低下機能、ファン速度の手動調整機能も搭載していました。

Switchable Graphics

メーカー製ノートPCには、CPU内蔵GPUとAMD製単体GPUを切り替えられるものがありました。Catalyst Control Centerでは、アプリケーションごとのGPU選択や、電源接続状態に応じたGPU選択を設定できました。

CrossFire/CrossFireX

複数のGPUを協調動作させて分散レンダリング処理を行う技術で、Catalyst Control Centerで詳細な設定が可能でした。

AMD Catalystは、グラフィックカードの性能を最大限に引き出すための重要なソフトウェアでした。

脚注

外部リンク

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