ARB (バンド)

ARB（エーアールビー）

日本のロックシーンにおいて、その硬派な姿勢と社会的なメッセージで異彩を放ったロックバンド、それがARB（エーアールビー）です。バンド名は、アーヴィング・バーリンの楽曲に由来する「Alexander Ragtime Band」の頭文字から取られており、当初はフルネームを用いることもありましたが、3rdアルバム『BOYS&GIRLS』以降は「ARB」が正式名称となりました。

1976年に結成されたARBは、ギタリストの田中一郎とドラマーのKEITHを中心に活動を開始。ボーカリストを探す中で、先輩ミュージシャンである甲斐よしひろの推薦もあり、石橋凌が加入し体制が固まります。1978年、シングル「野良犬」でメジャーデビューを果たしますが、当初所属していた事務所がアイドルグループとして売り出そうとしたことに反発。純粋なロックを追求するため、デビューからわずか1年足らずで独立を選びます。

1980年代に入ると、福岡発のロックムーブメント「めんたいロック」の第二世代として注目を集めるようになります。彼らの音楽性の最大の特徴は、その歌詞の世界観にありました。戦争、労働、社会の矛盾や不条理といった重いテーマを真正面から扱い、聴く者の心に強く訴えかけるメッセージソングを数多く発表。特に労働者をテーマにした楽曲群は「Work Song」と呼ばれ、ARBの代名詞の一つとなりました。このような姿勢から、「社会派バンド」として評価されることになります。作詞はボーカルの石橋凌がほとんどを手がけましたが、一部の楽曲では初期メンバーやギタリストの白浜久（クレジットは「Ryo&Hisashi」）も作詞に参加。作曲は石橋と歴代ギタリスト、ベーシストが中心となって行われました。

ARBは活動期間を通じて度重なるメンバーチェンジを経験しました。特にギターとベースのパートは多くのミュージシャンが入れ替わっており、その度にサウンドも変化を遂げています。初期は田中一郎によるギターサウンドが特徴的でしたが、田中脱退後に加入した斉藤光浩時代にはややポップな要素も加わりました。さらに白浜久が加入すると、打ち込みを多用した実験的なアプローチを取り入れるなど、音楽性の幅を広げています。一方で、ボーカルの石橋凌とドラムのKEITHはバンドの核として不動の存在であり続けました。

石橋凌が俳優としても活動するようになると、その並行した活動がバンドに影響を与えます。松田優作監督作品『ア・ホーマンス』への出演はその代表例で、映画主題歌に楽曲が使用されました。しかし、俳優業への傾倒が深まり、1990年には石橋が俳優業に専念することを宣言。同年10月27日、国立代々木第一体育館での公演をもって、一度目の解散を迎えます。

約8年の沈黙を経て、1998年にARBは復活を果たします。石橋凌、KEITHに加え、新たに内藤幸也（G）とEBI（B）が加入し、再び精力的な活動を展開。武道館ライブを実現するなどその存在感を改めて示しましたが、2006年3月、石橋のバンド脱退に伴い活動停止を発表します。石橋自身はこれを「解散」と位置づけています。

ARBはその長い歴史の中で、多くのミュージシャンに影響を与えてきました。ユニコーン、甲本ヒロト、真島昌利、BOØWY、福山雅治など、多岐にわたるアーティストがARBからの影響を公言しています。彼らの楽曲はトリビュートアルバムやアニメの挿入歌としてもカバーされており、世代を超えてその楽曲が語り継がれています。また、初期のアイドル路線拒否のエピソードや、ファンの愛称「ARB KIDS」など、彼らの硬派な姿勢とファンとの結びつきを示す逸話も数多く存在します。

解散後も、メンバーそれぞれが音楽活動を続けています。特に2018年にはデビュー40周年を記念し、KEITHを中心に歴代ギタリストやベーシストが集結したイベントが開催されるなど、その歴史と楽曲は今もなお多くの人々に記憶され、愛され続けています。

ディスコグラフィには、「野良犬」「魂こがして」「トラブルド・キッズ」「AFTER '45」「HARD-BOILED CITY」など、彼らのメッセージとサウンドを凝縮した数々のシングルやオリジナルアルバム、ライブアルバム、ベストアルバムが残されています。

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