ARH-70 (航空機)

ARH-70 アラパホ

ARH-70 アラパホ（ARH=Armed Reconnaissance Helicopter）は、アメリカ軍のためにベル・ヘリコプターが開発を進めた次世代偵察ヘリコプターです。この機体は、民間機のベル407をベースにしており、老朽化しているOH-58 カイオワの後継機として期待されていました。アラパホという名称は、アメリカ先住民のアラパホ族に由来しています。

開発の背景

2004年までに、アメリカ軍は348機所有していたOH-58Dのうち、30機以上を失っており、そのほとんどがイラク戦争での撃墜によるものでした。また、当時開発が進められていたRAH-66 コマンチは、ステルス機という高度な要求から開発が遅れ、予算も圧迫されていました。このため、2004年にはRAH-66の開発が中止され、その結果として既存のOH-58Dの延命措置が講じられましたが、彼らの基本設計はベトナム戦争時代のものであり、老朽化が深刻な問題となっていました。

アメリカ軍は、RAH-66の開発断念から得た教訓を踏まえ、民間で実績のある技術（商用オフザシェルフ、COTS）を活用し、開発コストと時間を大幅に短縮する方法を模索しました。その結果、2008年9月までに30機のARH-70を導入し、8名の教官を訓練することが目標として掲げられていました。

開発の課題

しかし、ARH-70の開発は多くの困難に直面しました。2006年7月に初飛行を果たした際は注目を集めましたが、翌年の2月には4号機がテキサス州で初飛行中に燃料系統のトラブルに直面し、ゴルフ場に不時着する事故が発生しました。この事故ではパイロットは無傷でしたが、アメリカ軍は30日以内に問題解決策を提示するようベルに要求し、ARH-70の飛行を一時停止しました。その結果、プログラムの予算は当初の見込みを大幅に上回り、2007年5月にはARH計画の継続が承認される事態となりました。

2007年7月には、下院歳出委員会がARH-70の今後の予算についての審議を行った際、開発研究の評価がほぼゼロに近いことが判明しました。一方で、2008年1月には政府高官がARH-70の輸出計画を検討し始め、結果としてアメリカ国内での発注数を超える1,000機以上の生産が見込まれる状況となりました。

開発中止の決定

しかし、開発予算の増大が続き、最終的に2008年10月にARH-70の開発中止が正式に発表されました。当初の計画では1機あたり856万ドルでの調達が見込まれていたものの、最終的には1機あたりのコストが1200万ドルを超える見込みまで膨らみました。また、導入予定年も2009年から2013年まで遅延することが示唆されました。このような状況を受け、アメリカ軍は既存のOH-58の電子機器を一新し、安全対策を強化することに舵を切りました。

機体の性能

ARH-70の設計は、2名の乗員と6名の収容が可能で、主なスペックは次の通りです：

• - 全長：10.57m
• - 主回転翼直径：10.67m
• - 高さ：3.56m
• - 空虚重量：1,178kg
• - 最大離陸重量：2,268kg
• - 最大積載量：847kg
• - 航続距離：300km以上

搭載される武器は、GAU-19ガトリング砲やハイドラ70ロケット弾が含まれ、戦闘力の向上が計画されていました。

関連するプログラム

ARH-70の開発中止により、新たな偵察ヘリコプターの導入は引き続き課題となっており、将来型攻撃偵察機や、RAH-66のような次世代機の開発が求められています。

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