ARIB外字

ARIB外字とは



ARIB外字は、一般社団法人電波産業会（ARIB）によって規格化された、放送分野で使用される特殊な文字集合です。主にFM文字多重放送、字幕放送、データ放送などで、JIS X 0208に含まれない記号や漢字を表現するために用いられます。

概要



ARIB外字は、JIS X 0208にない文字を補完する目的で作成されました。具体的には、字幕放送で頻繁に使用される記号を集めた「追加記号集合」と、固有名詞などで必要となる漢字を集めた「追加漢字集合」で構成されています。

  • - 追加記号集合：音楽記号（♬）、矢印（➡）など、字幕放送やデータ放送で頻繁に使用される記号が含まれています。特に音楽記号は、背景で音楽が流れていることを示すために多用されます。
  • - 追加漢字集合：固有名詞や人名などで必要となる、JIS X 0208に含まれない漢字が収録されています。

これらの文字は、テレビの字幕放送、データ放送、ラジオのFM文字多重放送、タクシーの車内テロップなどで幅広く利用されています。近年では、ワンセグや地上デジタル放送の普及に伴い、一般の視聴者もARIB外字に触れる機会が増加しています。

字形と書体



ARIB外字は、字幕放送での利用を考慮し、視認性の高いゴシック体や丸ゴシック体で表示されることが多いです。また、遠くからでも見やすいように設計されています。規格では、JIS X 0201の文字は半角、JIS X 0208およびARIB外字は全角で実装することが定められています。

ARIB外字を含む文字集合



ARIB STD-B24規格では、ARIB外字を含む文字集合を伝送する際に、8ビットを単位とした「8単位符号」を使用することが規定されています。この文字集合には以下が含まれます。


これらの文字集合は、制御文字によって切り替えられます。エンコーディングはISO/IEC 2022|ISO_IEC 2022に準拠しています。また、Shift_JISやUnicode（UTF-8、UTF-16）での伝送も可能です。Unicodeの場合、BOM（バイト順マーク）が必須となります。

フォント実装



ARIB外字をフォントとして実装する場合、Shift_JISやEUC-JPの外字として扱われることが一般的です。追加記号集合はJIS X 0208の90区1点から94区93点に、追加漢字集合は85区1点から86区43点にマッピングされます。地上波デジタル放送では8単位符号、ワンセグではShift_JISで実装されます。

Unicodeとの関係



以前はUnicodeにARIB外字はほとんど含まれていませんでしたが、Unicode 5.2で大半が「その他の記号」ブロックに収録されました。ただし、音楽記号は既存の文字を組み合わせる必要があり、サイズの異なる漢字は収録されていません。Unicode 13.0では「Symbols for Legacy Computing」ブロックに一部のモザイク集合が追加されましたが、まだUnicodeに未収録の文字も存在します。

含まれる文字



ARIB外字には、番組表の囲み文字、野球中継の守備位置記号、地図記号、音楽記号などが含まれています。一部の音楽記号は2文字で構成されます。4Kテレビ向けに記号が追加され、Unicode 9.0で採用されています。

ARIBフォント



ARIB外字を収録したフォントは「ARIBフォント」として販売されています。これらのフォントには、ARIB外字のみを含むもの、JIS X 0208やJIS X 0213の文字をすべて含むものがあります。主なフォントベンダーとしては、モリサワ、モトヤ、SCREEN、フォントワークス、リコー、カルチ、ユービック、ダイナコムウェア、タイプバンク、和田研、にしき的フォントなどがあります。マイクロソフトのSegoe UI Symbol、NotoのNoto Sans Symbolsにも一部のARIB外字が収録されています。

参考資料



  • - ARIB STD-B24「デジタル放送におけるデータ放送符号化方式と伝送方式」
  • - ARIB STD-B3「FM多重放送の運用上の標準規格」
  • - ARIB STD-B62「デジタル放送におけるマルチメディア符号化方式（第2世代）」

ARIB外字は放送分野において重要な役割を担っており、今後もその活用が期待されます。

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