ARIEL (小説)
『ARIEL』は、笹本祐一が執筆し、鈴木雅久がイラストを手がけた日本のSF小説シリーズです。ソノラマ文庫より1987年から2006年にかけて全20巻が刊行され、後にソノラマノベルスや朝日エアロ文庫としても再刊されました。連載は雑誌『獅子王』で始まり、その後は文庫書き下ろしに移行し、2004年に全52話をもって完結。その功績は高く評価され、2005年には星雲賞日本長編部門を受賞しています。また、過去にはOVAやオーディオドラマといったメディアミックス展開も行われました。
物語は、巨大ロボットもの、宇宙からの侵略、スペースオペラといったSFの基本要素に、ファーストコンタクトやタイムトラベルといった多様なテーマを織り交ぜた独特な世界観で展開します。全52話という構成は、あたかもテレビシリーズを意識したかのような形式で描かれています。
ストーリーの核となるのは、日本の国立科学研究所SCEBAI（スケベイ）所長である岸田博士が開発した女性型巨大ロボット兵器ARIEL（エリアル）と、銀河帝国から惑星侵略業務を請け負う三流企業ゲドー社との攻防です。岸田博士は、自身の姪である河合美亜、そして孫の岸田絢と岸田和美という、いずれも一般人の女性3人をARIELのパイロットに指名するという型破りな人選を行います。
一方、地球侵略のために派遣されたゲドー社の宇宙戦艦オルクスの艦長アバルト・ハウザーは、地球より遥かに進んだ科学力・軍事力でARIELを苦しめます。しかし、ゲドー社は倒産寸前であり、地球侵略は会社再建の最後のチャンス。そのため、効率より報奨金狙いで侵略を長引かせようとしたり、経費削減のために経理部長のシモーヌ・トレファンが作戦に介入したりと、内情は火の車です。
対する地球側も、SCEBAIがARIELの活躍を政府にアピールしつつ、精一杯の技術で防衛にあたります。しかし、パイロットたちは報酬目当て、面白半分、あるいは大学受験中でそれどころではないといった具合で、今一つ地球防衛に本気になれません。このように、やっつけ仕事のような侵略活動と、やはりどこか力の抜けた防衛戦が繰り返されます。
物語の途中で、宇宙の破壊者「星壊し（スターブラスト）」セイバー、タイムトラベラー、大手侵略企業の大艦隊、宇宙海賊、さらにはハウザー艦長の家族といった多様な第三勢力が登場し、宇宙人側の思惑も複雑化。地球もその混乱に巻き込まれていきます。作中ではおよそ1年間という時間の流れでこれらの出来事が描かれます。
登場人物たちは非常に個性的です。SCEBAI所長の岸田博士は、世界征服を夢見るマッドサイエンティストでありながら、示現流の達人であり飛行機も操縦する超人。白衣の懐から何でも取り出す特技を持ち、周囲を自分のペースに引きずり込みます。亡き妻あゆみを深く愛しており、ARIELのデザインやメインコンピューターにはその思いが反映されています。ARIELパイロットの美亜は文武両道で常人離れした能力を持つ大学生、絢は大学受験に苦悩しつつもエリアルの砲手を務める真面目な孫娘、和美は能天気で天真爛漫ながら天性の勘で操縦をこなす女子高生と、三者三様。SCEBAIには、岸田博士の古くからの友人で「人体改造魔」と呼ばれる天本教授や、薙刀の達人である警備主任の羽那らいてうといった強烈なキャラクターたちが脇を固めます。
ゲドー社側も同様に魅力的な面々が揃います。ハウザー艦長は高い指揮能力を持つ美形ながら、豪快な姉たちには頭が上がりません。経理部長シモーヌは凄腕の酒豪で、経費削減のために作戦に介入します。副官デモノバは常に冷静沈着なベテラン参謀です。地上工作員のナミ・ファランドールは、女子高生たちに振り回されつつも工作員としての実績を上げてしまう悲劇的なキャラクターです。
主役メカであるARIELは、身長40メートル、重量800トンという巨大ロボットでありながら、独特の丸みを帯びた女性的なデザインが特徴です。そのスペックは、超電導モーターによる駆動、核融合炉による動力、第6世代ニューロ光コンピューター「AYUMI」の搭載など、地球の技術としては驚異的なものですが、宇宙人の兵器と比較すると原始的で、正面からの戦闘では苦戦を強いられます。装甲もキロトン級核兵器に耐えるとされますが、宇宙人の標準的なビーム兵器には効果が薄い描写もあります。しかし、改修された次世代型AAは慣性制御ユニットによって性能が飛躍的に向上しました。ARIELの運用には、岸田博士の近親者であるパイロット3人の習熟度が重要であり、特にAIであるAYUMIの「学習」が鍵を握ります。戦闘シーンでは、宇宙人から見て「原始的」「ハリボテ」と評されることもあるARIELが、ゲドー社の内部事情やパイロットたちの奮闘、あるいは幸運によって辛くも勝利（または撃退に見える形）を収めるという展開が作品のユーモラスな一面を際立たせています。
宇宙人のメカとしては、ゲドー社の母艦オルクスや、恐竜や怪獣のような姿をした様々な「降下兵」が登場します。これらの宇宙技術はエリアルのそれを遥かに凌駕しており、一発で都市を破壊できるエネルギー兵器や重力制御システムを備えています。また、ナミの愛車である改造されたフォルクスワーゲン・ビートル型宇宙艇は、見た目に反して単独で地球・木星間を往復できるほどの高性能を持ち、作中で最も活躍するメカの一つかもしれません。
物語の終盤、地球は銀河帝国への加盟という形で新たな局面を迎えます。改修されたARIELは、地球籍の調査船「摩利支天」に搭載され、銀河辺境の探索へと旅立ちます。
『ARIEL』は、ハードなSF設定と、個性豊かなキャラクターたちが織りなす日常、そして絶妙なコメディのバランスが魅力のシリーズです。巨大ロボットや宇宙人侵略といった壮大なスケールでありながら、どこか親しみやすく人間味あふれる物語が展開されます。
物語は、巨大ロボットもの、宇宙からの侵略、スペースオペラといったSFの基本要素に、ファーストコンタクトやタイムトラベルといった多様なテーマを織り交ぜた独特な世界観で展開します。全52話という構成は、あたかもテレビシリーズを意識したかのような形式で描かれています。
ストーリーの核となるのは、日本の国立科学研究所SCEBAI（スケベイ）所長である岸田博士が開発した女性型巨大ロボット兵器ARIEL（エリアル）と、銀河帝国から惑星侵略業務を請け負う三流企業ゲドー社との攻防です。岸田博士は、自身の姪である河合美亜、そして孫の岸田絢と岸田和美という、いずれも一般人の女性3人をARIELのパイロットに指名するという型破りな人選を行います。
一方、地球侵略のために派遣されたゲドー社の宇宙戦艦オルクスの艦長アバルト・ハウザーは、地球より遥かに進んだ科学力・軍事力でARIELを苦しめます。しかし、ゲドー社は倒産寸前であり、地球侵略は会社再建の最後のチャンス。そのため、効率より報奨金狙いで侵略を長引かせようとしたり、経費削減のために経理部長のシモーヌ・トレファンが作戦に介入したりと、内情は火の車です。
対する地球側も、SCEBAIがARIELの活躍を政府にアピールしつつ、精一杯の技術で防衛にあたります。しかし、パイロットたちは報酬目当て、面白半分、あるいは大学受験中でそれどころではないといった具合で、今一つ地球防衛に本気になれません。このように、やっつけ仕事のような侵略活動と、やはりどこか力の抜けた防衛戦が繰り返されます。
物語の途中で、宇宙の破壊者「星壊し（スターブラスト）」セイバー、タイムトラベラー、大手侵略企業の大艦隊、宇宙海賊、さらにはハウザー艦長の家族といった多様な第三勢力が登場し、宇宙人側の思惑も複雑化。地球もその混乱に巻き込まれていきます。作中ではおよそ1年間という時間の流れでこれらの出来事が描かれます。
登場人物たちは非常に個性的です。SCEBAI所長の岸田博士は、世界征服を夢見るマッドサイエンティストでありながら、示現流の達人であり飛行機も操縦する超人。白衣の懐から何でも取り出す特技を持ち、周囲を自分のペースに引きずり込みます。亡き妻あゆみを深く愛しており、ARIELのデザインやメインコンピューターにはその思いが反映されています。ARIELパイロットの美亜は文武両道で常人離れした能力を持つ大学生、絢は大学受験に苦悩しつつもエリアルの砲手を務める真面目な孫娘、和美は能天気で天真爛漫ながら天性の勘で操縦をこなす女子高生と、三者三様。SCEBAIには、岸田博士の古くからの友人で「人体改造魔」と呼ばれる天本教授や、薙刀の達人である警備主任の羽那らいてうといった強烈なキャラクターたちが脇を固めます。
ゲドー社側も同様に魅力的な面々が揃います。ハウザー艦長は高い指揮能力を持つ美形ながら、豪快な姉たちには頭が上がりません。経理部長シモーヌは凄腕の酒豪で、経費削減のために作戦に介入します。副官デモノバは常に冷静沈着なベテラン参謀です。地上工作員のナミ・ファランドールは、女子高生たちに振り回されつつも工作員としての実績を上げてしまう悲劇的なキャラクターです。
主役メカであるARIELは、身長40メートル、重量800トンという巨大ロボットでありながら、独特の丸みを帯びた女性的なデザインが特徴です。そのスペックは、超電導モーターによる駆動、核融合炉による動力、第6世代ニューロ光コンピューター「AYUMI」の搭載など、地球の技術としては驚異的なものですが、宇宙人の兵器と比較すると原始的で、正面からの戦闘では苦戦を強いられます。装甲もキロトン級核兵器に耐えるとされますが、宇宙人の標準的なビーム兵器には効果が薄い描写もあります。しかし、改修された次世代型AAは慣性制御ユニットによって性能が飛躍的に向上しました。ARIELの運用には、岸田博士の近親者であるパイロット3人の習熟度が重要であり、特にAIであるAYUMIの「学習」が鍵を握ります。戦闘シーンでは、宇宙人から見て「原始的」「ハリボテ」と評されることもあるARIELが、ゲドー社の内部事情やパイロットたちの奮闘、あるいは幸運によって辛くも勝利（または撃退に見える形）を収めるという展開が作品のユーモラスな一面を際立たせています。
宇宙人のメカとしては、ゲドー社の母艦オルクスや、恐竜や怪獣のような姿をした様々な「降下兵」が登場します。これらの宇宙技術はエリアルのそれを遥かに凌駕しており、一発で都市を破壊できるエネルギー兵器や重力制御システムを備えています。また、ナミの愛車である改造されたフォルクスワーゲン・ビートル型宇宙艇は、見た目に反して単独で地球・木星間を往復できるほどの高性能を持ち、作中で最も活躍するメカの一つかもしれません。
物語の終盤、地球は銀河帝国への加盟という形で新たな局面を迎えます。改修されたARIELは、地球籍の調査船「摩利支天」に搭載され、銀河辺境の探索へと旅立ちます。
『ARIEL』は、ハードなSF設定と、個性豊かなキャラクターたちが織りなす日常、そして絶妙なコメディのバランスが魅力のシリーズです。巨大ロボットや宇宙人侵略といった壮大なスケールでありながら、どこか親しみやすく人間味あふれる物語が展開されます。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。