AT-L

AT-L：ソ連の軽砲兵トラクター

AT-L（ロシア語: Артиллерийский Тягач, Лёгкий）は、「軽砲兵トラクター」を意味し、1940年代にソビエト連邦で開発された装軌式砲兵トラクターです。この車両は、特に野戦砲兵部隊において、重い火砲を牽引するための重要な役割を担いました。

開発と概要

AT-Lは、1947年にハリコフトラクター工場で開発されました。その設計は、当時のソ連における既存の軍用トラック、トラクター、装甲戦闘車両のコンポーネントを流用して効率的に製造されました。6トンの牽引力と2トンの積載能力を持ち、口径122mmや152mmの榴弾砲、160mmや240mmの重迫撃砲といった、当時のソ連軍の主要な火砲を牽引するために使用されました。

運転台はZiS-150またはZIL-164トラックのものを採用し、走行装置は片側6個の転輪と3個のリターンローラー（上部転輪）で構成されており、安定した走行性能を提供しました。この設計は、不整地や悪路での移動を可能にし、砲兵部隊の機動力を高めることに貢献しました。

AT-LM：改良型モデル

1950年代半ばには、AT-Lの改良型であるAT-LMが開発されました。AT-LMは、走行装置とステアリング装置に重要な改良が加えられました。特に外見上の大きな変更点として、片側6個の転輪がやや大型の5個の転輪に変更され、上部転輪が廃止されました。この改良により、よりスムーズな走行と操縦性が向上しました。AT-LMの生産は1967年まで続けられ、AT-Lとともにソ連軍の砲兵部隊で広く使用されました。

運用と実戦

AT-LとAT-LMは、ソビエト連邦とその影響下にあった東欧諸国で広く使用されました。また、中東戦争においては、シリア軍やエジプト軍によっても使用されました。これらの車両は、戦場で鹵獲されることもあり、イスラエル国防軍によって鹵獲されたAT-LMは、現在イスラエルのラトルン戦車博物館に展示されています。この展示は、ソ連製兵器の歴史と実戦での役割を物語る貴重な証拠となっています。

関連車両

AT-Lは、ソ連の砲兵トラクターのシリーズの一つであり、以下のような関連車両が存在します。

AT-T: 同時代に開発された重砲兵トラクターで、25トンの牽引力と5トンの積載能力を持っていました。より大型で重い火砲の牽引に使用されました。
AT-S: 同時代の中型砲兵トラクターで、16トンの牽引力と3トンの積載能力を持っていました。AT-Lよりも大型で、より幅広い用途に使用されました。

まとめ

AT-Lとその改良型であるAT-LMは、ソ連軍の砲兵部隊における重要な戦力であり、その設計は後の砲兵トラクターの開発に大きな影響を与えました。その実戦での活躍と、博物館での展示は、冷戦時代の軍事技術と戦史を理解する上で重要な役割を果たしています。

出典

（記事内容に基づき、参考文献は省略）

外部リンク

6個の転輪を持つ初期型AT-Lの写真（外部サイト）

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