AWAKE (L'Arc〜en〜Cielのアルバム)

L'Arc〜en〜Ciel 10th Album 『AWAKE』

『AWAKE』は、L'Arc〜en〜Cielが2005年6月22日にリリースした10枚目のオリジナルアルバムです。前作『SMILE』から約1年3ヶ月ぶりとなる本作は、バンドにとって新たな挑戦と深化を示す作品となりました。Ki/oon Recordsから発売されたこのアルバムは、L'Arc〜en〜Cielのスタジオアルバムとしては、過去最多の収録曲数と最長の収録時間を誇ります。

アルバムの構成

本作には、先行シングルとして発表された「Killing Me」「New World」「叙情詩」の表題曲に加え、2004年6月に発表された「自由への招待」を含む全12曲が収録されています。マスタリングは、U2やニルヴァーナを手掛けたハウィー・ウェインバーグが担当し、前作に引き続き、音質のクオリティを高めています。

従来のアルバムでは、10曲または11曲を基本としていましたが、『AWAKE』では初の12曲構成となりました。tetsuyaは、この収録曲数の増加について「12曲でも聴き手を飽きさせない自信があったから」と語っています。また、hydeは「レコード世代なのでアルバムは10曲というこだわりがあったが、時代に合わせて変化した」と述べています。さらに、本作は前作に続き海外でもリリースされ、アメリカ盤にはボーナストラックも収録されました。

制作背景とコンセプト

アルバム制作は、ライブツアー「SMILE TOUR 2004」を経て開始されました。ライブを意識した楽曲制作が行われ、hydeは「ライブで盛り上がる曲を作りたい」という意向を示しています。kenも「ギターを思い切り弾くモードだった」と語り、バンド全体として、ライブでの一体感を重視した楽曲制作が行われました。

hydeが手掛けた歌詞の世界観は、「愛と平和」がテーマとなっており、反戦や平和への想いが込められています。hydeは「無償の愛に気づいたから」とテーマを選んだ理由を語り、内省的なリリックが多くなった背景には「深く自分を突き詰めていくと、そこにしかなかった」と述べています。また、音楽の力で世界を変えるという意識ではなく、「言わずにいられなかった」という率直な気持ちが込められています。

アルバム全体としては、一つのテーマに沿ったコンセプチュアルな作品となり、hydeは「コンセプトアルバムではないが、方向性は同じところを目指した」と語っています。kenは、本作を「お手紙みたいな気分」と表現し、それぞれの曲がメッセージを込めていることを示唆しました。

録音作業と音楽性

録音作業は、2004年9月から2005年4月頃まで行われ、先行シングルのレコーディングを挟みながらアルバムが制作されました。曲作りは、2004年7月のアメリカ公演後から開始し、各メンバーが個人で曲作りを行う期間が長く取られました。tetsuyaによると、各メンバーから合計20曲ほどのデモが提出され、その中から楽曲が選ばれました。

また、本作では、従来のレコーディングに比べ、メンバー4人でリハーサルを重ねる期間が長く取られ、楽曲選考もメンバー全員で演奏したうえで決定されました。yukihiroは、本作を「『HEART』に近い」と語り、kenは「4人全員が作曲をした上で、L'Arc〜en〜Cielとして曲を吐き出している」と、バンドとしての結束力を強調しました。

音楽性としては、L'Arc〜en〜Cielのポップミュージックを基本としながらも、オルタナティブロック、ポップパンク、インダストリアルなど、多様な要素が取り入れられています。特にhydeが作曲した楽曲が多く収録されており、ソロ活動で制作していた楽曲も含まれています。また、ギターサウンドはリフ中心で構築され、ドラムサウンドもスネアとキックの音量が大きくなるなど、新たなアプローチが試みられました。

メンバーの心境

kenは、前作以降、音楽のメディアとしてのパワーの置きどころに迷いを感じていたと語り、音楽の進化が停滞しているのではないかという懸念を示しました。しかし、本作を制作するにあたっては、「音楽の中に自分の特色を足す」という意識を持ち、「一生懸命」演奏することに価値を見出しました。

また、カーペンターズやブラック・サバスを聴き直すことで、音楽への姿勢を前向きに変化させたと語っています。ライヴツアーを通して聴衆の顔を見たことが、より誠意を込めた音楽制作への意識を高めたと述べています。

hydeは、歌詞について「人間の愚かさ」に強い関心を示し、未来への希望を込めたと述べています。「自分も悪魔の一員」という視点から、世界や人間に対する深い考察を歌詞に反映させました。アルバムの出来栄えについては「深く理解しているのは自分だけかもしれない」としながらも、自身の世界観がリアルになるにつれて、より異質なものになっていくと語っています。

アルバムタイトルとアートワーク

アルバムタイトル『AWAKE』は、「目覚め」を意味し、hydeの「本当の愛に目覚めてほしい」という想いが込められています。タイトルには、物質的なものにとらわれず、本当に大切なものに気づいてほしいというメッセージが込められています。

ジャケットには、1998年の『HEART』以来5作ぶりにメンバーの姿が登場。写真家でデザイナーのモート・シナベルが担当し、アートワークもまた、アルバムのコンセプトを象徴するようなデザインとなっています。

ライヴツアー

アルバム発売後には、ライブツアー「AWAKE TOUR 2005」を開催。ツアーは、アルバムのテーマである反戦や平和といった、hydeの思想を反映した演出が組まれました。また、アジア3都市を巡るライブツアー「ASIALIVE 2005」も開催し、海外での公演も行いました。

リリース形態

フィジカルは、通常盤（CD）の1形態で発売。初回限定仕様は、紙製デジパック、スーパーピクチャーレーベル仕様となっています。また、各種音楽配信サイトでもダウンロード販売が解禁され、2014年にはハイレゾリューションオーディオ音源も配信されました。2019年には、各種サブスクリプションサービスでのストリーミング配信も開始。2022年には、リマスターされたボックスセットも発売されました。

批評と評価

音楽ジャーナリストの宇野維正は、「『AWAKE』はラルクの精神のルネッサンス」と評し、前作『SMILE』をリハビリと捉え、本作を新たな再生と表現しました。また、音楽評論家の小野島大は「生まれ変わった新人バンドのデビューアルバム」と評し、本作を傑作と絶賛。音楽ライターの能地祐子は、「前作は覚醒の予兆だった」と述べ、多彩な楽曲がひとつの宇宙を構築しているとしました。鬼頭隆生は、「バンドが結束を固めて加速している」と評価しています。

アルバムは、オリコン週間アルバムチャートで初登場1位を獲得し、同年度の年間アルバムチャートでも上位にランクインするなど、大きな成功を収めました。

収録曲解説

「New World」: yukihiroが作詞作曲を手掛けた、ブレイクビーツを取り入れたストレートなギターロック。hydeがサビを根本から変更し、合作クレジットとなりました。

「LOST HEAVEN」: ブルージーなメロディとファンキーなリズムが特徴的な楽曲。映画『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』のエンディングテーマとして書き下ろされました。

「叙情詩」: クラシカルなイントロからモダンな16ビートに展開するミディアムナンバー。kenが作曲し、hydeの歌声を意識して作られた楽曲です。

「TRUST」: シーケンシャルギターが効果的に導入された楽曲。tetsuyaが作曲し、ベースに加えギターも担当しています。

「Killing Me」: hydeが作詞作曲を手掛けた、疾走感のあるロックナンバー。アルバムの制作を象徴する楽曲です。

「AS ONE」: ラウドでメタリックなナンバー。スリップノットのようなサウンドを意識して制作されました。

「My Dear」: キーボードをフィーチャーした楽曲。hydeがソロアルバム用に制作していたものを、バンドアレンジで収録。アコースティックバージョンも後に制作されました。

「EXISTENCE」: ソリッドなギターが印象的なロックナンバー。1拍半ごとにノートが移行するギターリフが特徴的です。

「自由への招待」: tetsuyaが作曲した、疾走感と清涼感のあるポップロックナンバー。バンド活動再開を象徴する楽曲です。

「Ophelia」: ジャズテイストのクールなナンバー。hydeがソロアルバム用に制作していたものを、バンドアレンジで収録しました。ベースの歪んだサウンドが特徴的です。

「星空」: 平和への祈りに満ちたバラードソング。イラク戦争のニュースをきっかけに制作された楽曲です。

「twinkle, twinkle」: 希望と幸福感に満ちたポップソング。アルバムのラストを飾る、kenが作詞作曲を手掛けた楽曲です。

「HEAVEN'S DRIVE (live at Yoyogi National Stadium June 26, 2004)」: アメリカ盤のみに収録されたボーナストラック。ライブ音源です。

まとめ

『AWAKE』は、L'Arc〜en〜Cielが新たな境地を切り開いた意欲作であり、多様な音楽性とメッセージ性の強い歌詞が融合したアルバムです。メンバーそれぞれの個性が発揮され、バンドとしての結束力も感じられる作品となっています。

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