Adaptive Multi-Rate

AMR（Adaptive Multi-Rate、適応多重レート）は、ノキア、エリクソン、シーメンスが共同で開発した音声コーデックです。1998年10月に3GPPによって標準的な音声符号化方式として採用され、現在ではGSMネットワークで広く利用されています。1999年には、第三世代携帯電話方式の日欧標準であるW-CDMAの音声符号化方式としても採用されました。

AMRは、MP3やAACなどの音楽圧縮を目的としたコーデックとは異なり、音声に特化して設計されています。これにより、高い圧縮率を実現していますが、音質は音楽用コーデックに比べて劣る場合があります。これは、音声データを効率的に圧縮することに重点を置いているためです。

NTTドコモの携帯電話「FOMA 900i」シリーズでは、「着うた」のファイル形式としても採用されました。このことは、AMRが携帯電話の音声コンテンツにおいても重要な役割を果たしていたことを示しています。

AMRの発展形として、AMR-WB（Wideband）やAMR-WB+というコーデックが登場しました。これらのコーデックは、AMRよりも広い帯域を扱うことができ、音質の向上を実現しています。そのため、AMRをAMR-NB（Narrowband）と呼び、区別することがあります。AMR-NBは、狭帯域音声に特化し、限られた帯域幅でもクリアな音声を伝送できる特徴を持っています。

AMRは、その効率性から、携帯電話ネットワークだけでなく、VoIP（Voice over Internet Protocol）などの様々な分野でも活用されています。音声通話の品質を維持しながら、データ量を削減するのに役立つため、帯域幅が限られた環境でも安定した通信が可能です。また、リアルタイムでの音声処理に適しているため、通信アプリケーションや音声認識システムにも利用されています。

技術的な詳細

AMRは、可変ビットレート符号化方式を採用しています。これは、音声の特性に応じてビットレートを動的に調整することで、効率的なデータ圧縮を実現する方法です。無音部分や静かな部分ではビットレートを下げ、音声が活発な部分ではビットレートを上げることで、データ量を削減しながら音質の劣化を最小限に抑えます。

AMRの符号化には、CELP（Code Excited Linear Prediction）というアルゴリズムが用いられています。CELPは、人間の音声生成モデルに基づいており、少ないパラメータで効率的に音声データを表現できます。これにより、高い圧縮率と比較的良好な音質を両立することが可能になっています。

関連技術

音声符号化：音声をデジタルデータに変換する技術の総称。
コーデック：音声や動画などのデータを圧縮・展開するソフトウェアやハードウェア。
AMR-WB：AMRの広帯域版であり、より高音質な音声伝送が可能。
AMR-WB+：AMR-WBの拡張版であり、さらに高音質で効率的な音声圧縮を実現。
GSM-EFR: GSMで利用される音声コーデックの一つで、AMRが標準化される前に利用されていた
GSM-HR: GSMで利用される低ビットレートの音声コーデックの一つ
G.722.2：ITU-Tによって標準化された広帯域音声コーデック。

外部リンク

Mobile:モバイルキーワード:AMR【えーえむあーる】
* 拡張子辞典【amr】

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