Adaptive Server Enterprise

SAP Sybase Adaptive Server Enterprise (ASE)とは

SAP Sybase Adaptive Server Enterprise (ASE) は、かつてSybase社が開発し、現在はSAP社が提供するエンタープライズ向けの高性能な関係データベース管理システム (RDBMS) です。UNIX環境で特に強力なRDBMSとして知られていますが、Windows版も提供されています。

ASEの歴史

ASEの起源は、カリフォルニア大学バークレー校で開発された「University Ingres」という画期的なRDBMSに遡ります。この技術は、後に多くのデータベースシステムへと発展しました。Sybaseは1990年代にはOracleに次ぐ第2位のデータベースベンダーとなり、ストアドプロシージャや楽観的ロックといった先進的な機能を実装し、クライアントサーバモデルの概念をDBMSに導入しました。その後、シェアは減少しましたが、現在でも重要なデータベース技術として利用されています。

ASEは、1987年にUNIX版が最初にリリースされ、当初は「Sybase SQL Server」という名称でした。1988年には、Sybase、マイクロソフト、アシュトンテイトの3社共同でOS/2およびWindows版が開発されました。その後、アシュトンテイトが撤退し、マイクロソフトがSybaseの主要パートナーとなりました。

1993年にSybaseとマイクロソフトは共同開発を終了し、それぞれ独自のSQL Serverを開発することになりました。マイクロソフトがSybase SQL ServerをベースにMicrosoft SQL Serverを開発した一方、Sybaseは1996年に製品名を「Adaptive Server Enterprise (ASE)」に変更し、Microsoft SQL Serverとの差別化を図りました。

ASEの技術的特徴

ASEは、Tabular Data Streamプロトコルを使用した低水準プログラミングインタフェースを提供します。初期バージョンではDBLIBが使用されていましたが、バージョン10以降ではCTLIBが使用されています。

1998年のASE 11.9.2では、行レベルロックと分散結合がサポートされ、SMP環境での性能が向上しました。1999年のASE 12.0では、Javaのサポートや高可用性、分散トランザクション管理が導入されました。2001年のASE 12.5では、動的メモリ確保、XMLとSSLのサポート、およびEJBコンテナのサポートが追加されました。

2005年のASE 15.0では、クエリオプティマイザの書き直し、表の分割格納、仮想列機能が導入され、性能が大きく向上しました。列レベル暗号化のサポートも後に追加されました。さらに、データベースダンプを仮想データベースとしてマウントする機能が計画されています。

SAPによる買収と現在

2010年、SAP社がSybase社を買収し、製品名は「SAP Sybase Adaptive Server Enterprise」となりました。これにより、ASEはSAPアプリケーションのプラットフォームとして頻繁に採用されるようになりました。

バージョン番号が12から15にジャンプしたのは、13が欧米で、14が中国で不吉な数字と認識されているためです。

ASEの構成と機能

ASEは通常、複数のデータベースを持つ「データサーバ」として構成され、システムデータベースとユーザデータベースに分けられます。システムデータベースはメタデータを格納し、ユーザデータベースにはアプリケーションデータやストアドプロシージャが格納されます。ユーザは認証を経てデータベースにアクセスし、アクセス権は権限によって制御されます。データベース言語として、Sybaseとマイクロソフトが独自に拡張したTransact-SQL (T-SQL) を採用しています。ASEとMicrosoft SQL Serverは、インターフェースレベルで互換性があるため、同じドライバを使用できる場合があります。

Transact-SQL (T-SQL)

T-SQLは、Sybaseとマイクロソフトが独自に拡張したSQL言語であり、制御フロー、局所・グローバル変数、文字列操作関数、DELETE文とUPDATE文の強化など、SQLをより強力にするための機能が追加されています。この言語は、Sybase ASEとMicrosoft SQL Serverの両方で使われています。

まとめ

SAP Sybase Adaptive Server Enterprise (ASE) は、長年の歴史を持つエンタープライズ向けの強力なRDBMSです。その初期からの進化、SAPによる買収、そして独自の機能は、企業のデータベースニーズに応えるための重要な技術となっています。詳細については、公式ドキュメントや関連リソースを参照してください。

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