An-70 (航空機)

An-70：次世代ターボプロップ輸送機の開発と変遷

An-70（アントノフ70）は、ウクライナの航空機メーカー、アントノフが開発した輸送機です。ソ連時代に開発されたAn-12輸送機を置き換えることを目指し、次世代のターボプロップ四発貨物機・輸送機として計画されました。

開発の経緯

An-12後継機の構想は1970年代から存在しましたが、本格的な開発は1990年代に入ってからです。1994年12月には試作初号機が初飛行に成功しました。開発計画はウクライナとロシアが費用を折半し、生産は両国の航空機工場で行う予定でした。ロシア政府はAn-70を160機導入する意向を示唆し、NATOへの売り込みも図られました。

しかし、開発は順風満帆とはいきませんでした。1995年には試作初号機が試験飛行中に墜落、乗員全員が死亡する事故が発生しました。その後、地上試験用の機体を改造して試作2号機が製造されましたが、2001年には寒冷地テスト中に不時着し、深刻な損傷を受けました。また、搭載するD-27エンジンの開発遅延と価格高騰も問題となりました。

2002年、ロシアとウクライナは生産上のリスクシェアリング契約で合意しましたが、ロシア政府はAn-70の性能に疑念を持ち、改良を要求しました。しかし、開発が進まないことや政治的な事情から、2006年にロシア政府は開発計画からの撤退を発表しました。その後もウクライナ単独で開発が継続され、2015年にはウクライナ空軍への導入が承認されましたが、ロシアは調達をキャンセルし、開発費の返還を要求しました。

機体の特徴

An-70は、高翼配置の主翼と通常形式の尾翼を持ちます。二重隙間フラップを備え、STOL（短距離離着陸）性を考慮しており、軽荷状態では900mの非舗装滑走路でも離着陸が可能です。主脚は胴体脇のバルジ内に収納され、六輪ダブルタイヤとなっています。エンジンはプロップファンを4基装備し、二重反転式を採用することで低燃費を実現しています。機体には複合材料が使用され、操縦系統にはグラスコックピットやフライ・バイ・ワイヤが導入されるなど、先進的な技術が採用されています。

派生型

An-70には、以下のような派生型があります。

An-70： 基本型の戦略軍用輸送機
An-70T： 民間向け輸送機型
An-70TK： 旅客機として設計された派生型
An-70-100： D-27エンジンを2基に減らした双発派生型
An-77： CFM56エンジンを搭載した戦略軍用輸送機型
An-7X： NATOに提示された派生型
An-112KC： 空中給油機仕様
An-188： An-70をベースに、翼を拡大し、エンジンを換装した派生型

運用状況

An-70は、ウクライナ空軍で運用されています。ロシア空軍も導入を検討していましたが、最終的に調達をキャンセルしました。

スペック

全長：40.70m
全幅：44.06m
高さ：16.38m
機体重量：66.23t
積載重量：47t
最大離陸重量：130t
最大速度：780km/h
航続距離：8,000km（フェリー時）、6,600km（20tの貨物搭載時）
* 最大上昇限界高度：12,000m

An-70は、開発に多くの困難を抱えながらも、ウクライナの航空技術を結集して完成した輸送機です。その先進的な設計とSTOL性能は、多様な環境での運用を可能にし、軍事・民間双方での活躍が期待されています。

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