Another Story (来生たかおのアルバム)

『Another Story』は、1994年にリリースされた来生たかおの18枚目のオリジナル・アルバムです。来生姉弟が敬愛する作家の作品タイトルをモチーフにしたコンセプト・アルバムであり、各楽曲のタイトルは、後藤明生、椎名麟三、森茉莉、田中小実昌、安岡章太郎、吉行淳之介、梶井基次郎、野坂昭如、大久保康雄といった著名な作家の作品から引用されています。

アルバム制作にあたり、作詞を担当した来生えつこは、各作家へタイトル使用の意図を説明し、許可を得るために自筆の手紙を送ったそうです。その際、失礼のないよう細心の注意を払い、その緊張感がアルバム制作にも良い影響を与えたと語っています。ただし、各歌詞はあくまでタイトルからインスピレーションを得て描かれたものであり、小説の内容と完全に一致するわけではないとのことです。

ジャケット及びブックレットには、来生たかおがプライベートでもよく訪れる奥多摩で撮影された写真が使用されています。愛犬の“マル”も写っており、リラックスした雰囲気が伝わってきます。本作からメディアはCDのみとなり、時代を感じさせます。

収録曲は以下の通りです。

1. 挟み撃ち
2. 永遠なる序章
3. 枯葉の寝床
4. ひとりよがりの人魚
5. 冷たくても夢中
6. 幕が下りてから
7. 不意の出来事
8. 檸檬
9. 夏わかば
10. 風と共に去りぬ

このうち、「永遠なる序章」は、TBS系ドラマ『愛の劇場 いつの日かその胸に』の主題歌として使用され、シングルカットもされました。また、「冷たくても夢中」は、来生えつこ自身の小説のタイトルでもあります。

アルバム収録曲について、来生たかおは、デモテープの段階ではツービートだった「挟み撃ち」が、バーシアの来日公演のCMを耳にしたことがきっかけで編曲に影響を受けたと語っています。また、元々提供曲として考えていた「永遠なる序章」を本アルバムに収録することには、当初違和感があったそうです。「不意の出来事」は歌謡曲をイメージした楽曲で、冒頭のハミングは作曲段階から来生えつこが要望していたとのことです。

2007年には、オリジナル・アルバム、企画アルバムを集めた21枚組CD-BOX『来生たかお大全集』に1995年版が収録されました。

『Another Story』は、来生たかおの音楽性と来生えつこの文学性が融合した、奥深いコンセプト・アルバムとして、今も多くのファンに愛されています。

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