後藤明生

後藤 明生について

後藤明生（ごとう めいせい、1932年4月4日 - 1999年8月2日）は、日本の小説家で、彼の本名は明正（あきまさ）です。出版社に勤務しながら、さまざまな作品を発表し、特に『人間の病気』で文壇に登場しました。彼は「内向の世代」と称され、前衛的な手法を用いた実験的な小説で知られています。

生い立ちと教育

後藤は朝鮮の咸鏡南道永興郡で生まれました。家族は元山市で商店を経営していましたが、彼が中学校に入る年に戦争が終わり、日本に引き揚げることになりました。引き揚げの途中で父と祖母を喪い、この悲劇が彼の作品に少なからず影響を与えました。後藤は旧制福岡県立朝倉中学校に転入した後、早稲田大学の文学部で露文学を専攻しました。在学中の1955年に小説「赤と黒の記録」で文藝の全国学生小説コンクールに入選しました。

文士としての活動

大学卒業後、一度福岡に戻りますが、経済的な理由から就職ができず、再度東京に上京しました。博報堂での勤務を経て、平凡出版に入社しながら文学活動を続けました。1959年から1965年には榊山潤主催の文芸同人誌『文芸日本』や『円卓』に参加し、1966年には立原正秋の『犀』に関与。その後、複数の文芸賞に候補として選ばれるなど、作家としての地位を固めていきました。

特に1967年に発表した「人間の病気」は、芥川賞の候補作として評価され、1968年には他の作品でも候補となるなど、彼の名声が高まりました。受賞は叶いませんでしたが、彼の作品は批評的かつユーモラスで、読者に深い印象を残しました。

受賞歴と後半生

彼の受賞歴には、1977年に『夢かたり』で平林たい子文学賞、1981年には『吉野大夫』で谷崎潤一郎賞、1990年には『首塚の上のアドバルーン』で芸術選奨文部大臣賞があります。また、1977年からは「内向の世代」の作家たちと共に季刊誌『文体』を責任編集し、文学界に新たな波をもたらしました。

1989年には近畿大学文芸学部で教授に就任し、文学研究や創作の指導に情熱を注ぎました。彼は国際的な文献を参照しながら、文学と社会を繋げる授業内容を提案しました。1993年から学部長を務めた後、1999年に肺がんにより67歳で亡くなりました。

彼の受けた影響と作品

後藤の作品は、事物や人間の関係性に深く目を向け、ニコライ・ゴーゴリやフランツ・カフカからの影響も見受けられます。特に『外套』を題材にした『挾み撃ち』は評価を受け、彼の文学的地位を確立する一因となりました。また、『小説について』では自身の作法を語り、その背景や思考過程を詳細に述べました。

著作には『私的生活』や『笑い地獄』、『吉野大夫』など多くの作品があり、特に短編の中で彼の独特な世界観が際立っています。後藤明生は、文学界において一つの光彩を放ち続け、影響力を持ち続ける作家としての道を歩みました。

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