BCG

BCG（カルメット・ゲラン桿菌）

BCGとは、ウシ型結核菌（Mycobacterium bovis）を長期間培養し、ヒトに対する毒性を失わせた細菌のことを指します。この細菌から作られた生ワクチン（BCGワクチン）は、結核の予防を目的としています。一般的に、BCGという言葉は、BCG細菌とBCGワクチンの双方を指すことが多いため、この文書では、BCG細菌を「BCG」とし、BCGを使用したワクチンを「BCGワクチン」と明確に区別します。

BCGワクチンの効果と適応

BCGワクチンは、結核の予防に関する唯一のワクチンであり、特に乳幼児に対しての有効性が80％程度とされており、重症化を防ぐ効果が確認されています。しかし、成人に対する効果は地域によって差があり、0〜80％の広範囲で報告されていることから、平均的には50％程度とされています。

さらに、BCGはハンセン病に対しても20〜80％の予防効果があり、このほかの抗酸菌感染症に対しても効果を示すことがあります。ワクチンは通常、皮下または皮内に接種され、免疫の形成を促します。BCGは、ウイルスや細胞内寄生体に対する細胞性免疫を誘発するため、他のタイプのワクチンでは得られないメリットがあります。

膀胱癌治療におけるBCG

BCGは膀胱癌の治療にも応用され、BCG療法として知られています。この療法では、生理食塩水で希釈されたBCGを尿道カテーテルを通じて膀胱内に注入し、免疫反応によって癌細胞に対抗させます。研究が進む中で、BCGが樹状細胞を活性化し、癌に対する免疫力を高めることが示唆されています。

アレルギー抑制効果

BCGにはアレルギー抑制効果もあり、特にナチュラルキラーT細胞を活性化することでIgE抗体を減少させることが示されています。このため、子供たちの花粉症予防にBCG接種が推奨されることもあります。ただし、遺伝的要因により、効果には個人差があります。

投与方法の変遷

BCGは当初、経口投与されていましたが、1923年には皮下注射法に切り替えられました。しかし、この方法では副作用が問題視され、皮内注射法や経皮接種法へと移行しました。日本では1951年からBCGワクチンの接種が法制化され、以降は大規模な接種プログラムが進められています。接種後、接種部位には瘢痕が残る特徴があります。

歴史と事故

BCGワクチンは1921年に初めて乳児に投与され、その予防効果が確認されると世界中に広まりました。しかし、1929年にはリューベック市で不適切な接種が行われ、251人の乳児が結核を発症し、72人が命を落とす事故が発生しました。これによりBCGワクチンへの信頼が一時的に揺らいだこともあります。

副反応と国ごとの接種状況

BCG接種には副反応が出る場合があり、まれに重篤な症状が報告されています。各国のBCG接種体制は異なり、定期的に接種する国もあれば、高リスク群に限定する国、任意接種のみの国もあります。BCGワクチンの有効性については調査ごとに結果がばらつくため、研究が進められています。

まとめ

結核予防においてBCGワクチンは重要な役割を果たしており、今後もその効果や適用をさらに研究していく必要があります。特に新型コロナウイルス感染症の影響を受け、BCGの新たな利用に関する研究も進められているため、今後の動向に注目したいところです。

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