BE-4

BE-4



BE-4、あるいはBlue Engine 4は、アメリカの宇宙開発企業ブルーオリジンによって開発された大型の液体燃料ロケットエンジンです。約2450キロニュートンという非常に大きな推力を持ち、推進剤として液体酸素と液化天然ガスを使用するのが特徴です。

このエンジンは、もともとブルーオリジン自身が開発する大型ロケット「ニューグレン」のために設計されました。ニューグレンロケットは、その第一段に7基のBE-4エンジンを搭載することで、人工衛星などの payloads を静止トランスファ軌道へ約45トン投入可能な能力を持つ見込みです。

後に、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が開発するアトラスVロケットの後継機である「ヴァルカン」にも採用されることが決まりました。ヴァルカンは第一段に2基のBE-4エンジンを使用します。

開発の歴史



BE-4エンジンの開発は、2011年にブルーオリジン社内でひっそりと始まりました。従来のロケットエンジンで広く使われるケロシンではなく、よりクリーンで効率的な推進剤として液体酸素と液化天然ガスの組み合わせを選んだのが大きな変更点です。

当初、開発の事実は公表されていませんでしたが、2014年9月にULA社が自社の新型打ち上げ機(後にヴァルカンと命名)のエンジンとしてBE-4を選択したと発表した際に、初めてその存在が広く知られることとなりました。

2015年4月には、開発作業が着実に進んでいる様子が伝えられています。この時期には、燃料や酸化剤を混合して燃焼器に送る実物大の「パワーパック」(動弁系とターボポンプのセット)と、エンジンの燃焼に必要な噴射装置の縮小版の試験準備が進められていました。

その後、2016年末には実物大エンジン全体の試験が始まる見込みと報じられ、実際に2017年3月には最初のBE-4エンジンが完成したことがブルーオリジンから発表されました。完成したエンジンの燃焼試験は2017年10月から開始され、2018年3月には最大出力の65%で114秒間の燃焼試験を成功させています。ただし、開発は常に順調だったわけではなく、2023年6月30日には燃焼試験中に爆発事故が発生するなど、困難も経験しました。

BE-4エンジンを搭載したロケットの最初の打ち上げ成功は、2024年1月にULA社のヴァルカンによって達成されました。続いて翌2025年1月には、ブルーオリジン自身のニューグレンロケットもBE-4エンジンを搭載して初の打ち上げ成功を記録しています。

主な採用ロケット



ブルーオリジンはBE-4を自社のニューグレンロケットに使用するだけでなく、他のロケット開発企業への外販も視野に入れて開発を進めてきました。最も注目された採用事例は、ULA社のヴァルカンへの搭載決定です。

ヴァルカン

2014年末、ブルーオリジンはULA社とBE-4エンジンの共同開発で合意に至り、ULAの主力ロケットであるアトラスVの後継機、ヴァルカンの第一段エンジンとしてBE-4を採用することが正式に決定しました。ヴァルカンでは2基のBE-4エンジンが使用されます。

このULAによるBE-4採用の背景には、当時ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、ヴァルカンが代替するアトラスVで使用されていたロシア製エンジンRD-180の供給安定性や地政学的なリスクに対する懸念がありました。ULAは当初、2019年以降にヴァルカンの初打ち上げを目指していましたが、BE-4の開発遅延などが影響し、実際に初打ち上げが成功したのは2024年1月となりました。

なお、ヴァルカンの第一段エンジン選定にあたっては、ケロシンを推進剤とするエアロジェット・ロケットダイン社のAR-1エンジンも対抗馬として検討されていました。しかし、ULAはメタン推進剤のBE-4を選択し、2018年9月に正式に発表しています。

ニューグレン

BE-4はブルーオリジン自身が開発する大型ロケット「ニューグレン」の主要エンジンです。ニューグレンの第一段には7基ものBE-4がクラスターとして使用され、ロケット全体の強力な推進力を生み出します。約45トンの衛星軌道投入能力を持つニューグレンは、BE-4エンジンの性能に大きく依存しています。2025年1月に無事初打ち上げに成功しました。

その他

かつてDARPAが進めていた再使用型ブースター計画「XS-1」において、ULAのパートナーであるボーイング社がBE-4の搭載可能性を検討した時期がありました。しかし、最終的にはエアロジェット・ロケットダインのAR-22エンジンがXS-1に採用されています。XS-1計画自体も2020年に中止され、BE-4が実際に使用されることはありませんでした。

諸元



推力: 最大出力時 約2,400 kN ~ 2,450 kN
* 推進剤: 液体酸素 (LOX) / 液化天然ガス (LNG)

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