BitTorrent DNA

BitTorrent DNA（ビットトレント・ディエヌエー）とは

BitTorrent DNAは、米ビットトレント社が開発したP2P（ピア・ツー・ピア）型のコンテンツ配信ソフトウェアです。既存のBitTorrentをベースに、特に動画配信サービスでの利用を想定して改良されました。商業利用も可能で、2007年末に登場しました。

特徴

従来の動画配信システムでは、アクセス集中によるサーバー負荷が課題でした。しかし、BitTorrent DNAでは、コンテンツデータは細分化された「ピース」として扱われ、分散された多数の「ピア」PC上に格納されます。

サーバー負荷の軽減: 動画サーバーへのアクセス集中を避けるため、データは細分化され、ハッシュ値で管理された「ピース」として、分散されたピアPC上に格納されます。
高速ダウンロード: 「DNAクライアント」は多数のピアPCと同時にセッションを張り、複数のピースを同時にダウンロードします。これにより、高速なダウンロードを実現します。
オリジナルデータ保護: 動画サーバーからはオリジナルデータの一部ピースが各ピアPCに送信されるように設定でき、特定の断片が欠けるという従来のBitTorrentの問題を解消します。
利便性: ユーザーはDNAクライアントをインストール後、ポート開放やトレントファイルを意識する必要がなく、Webページをクリックするだけでコンテンツを利用できます（無料の場合）。
HTTPプロキシ: DNAクライアントはHTTPのローカルプロキシとしてバックグラウンドで動作し、トラッカー側で配信開始を管理します。

動画配信の現状と課題

現在、アクトビラやGyaOのような有料・無料の動画配信サービスや、YouTubeやニコニコ動画のような投稿動画プラットフォームが普及しています。しかし、これらのサービスでは、大容量ファイルの配信による通信路の占有や配信元サーバーの負荷が大きな課題となっています。

IPマルチキャストなどの新しい技術も考えられていますが、既存のインターネットインフラの更新には莫大なコストがかかり、現実的な解決策とは言えません。また、アナログ放送の停波やインターネット光回線の普及、デジタルデバイスの進化により、高解像度・大画面動画コンテンツの需要はますます高まっています。

P2Pによるコンテンツ配信の将来性

BitTorrent DNAのようなP2Pによるコンテンツ配信が普及すれば、以下のようなメリットが期待できます。

ユーザー: 利用者が多いほど安定し、人気コンテンツほど高速にダウンロード可能になります。
配信事業者: 配信設備の増強が必要なくなり、サーバー負荷が軽減されます。
プロバイダ: 特別な対応は基本的に不要ですが、大容量データ配信による通信路への負荷増大への対応は必要となる可能性があります。

一方で、サーバー機器やネットワーク機器の販売機会減少や、TV放送業界への影響といったデメリットも考えられます。また、スポーツ中継のような即時性が求められる動画配信への対応には課題が残ります。

まとめ

BitTorrent DNAは、従来の動画配信システムの課題を解決し、より効率的で安定したコンテンツ配信を実現する可能性を秘めています。今後のデジタルコンテンツ配信の発展において重要な役割を果たすことが期待されます。

関連技術

Joost
BitTorrent

参考資料

「BitTorrent DNA」日経NETWORK 2008年1月号 p.28-p.29
日本法人のウェブサイト(2010年11月20日時点のアーカイブ)

もう一度検索