CH-47 (航空機)

CH-47 チヌーク：多用途大型輸送ヘリコプター

CH-47 チヌーク（Chinook）は、アメリカ合衆国のボーイング社（旧ボーイング・バートル）が開発した、タンデムローター式の大型輸送ヘリコプターです。初飛行から60年以上経過した現在も生産が続けられ、世界中で広く運用されています。

概要

チヌークは、元々バートル社のV-107をベースに、アメリカ陸軍の要求に合わせて大型化・強化された機体です。タンデムローター方式により、安定した飛行と大きな輸送能力を実現しています。機体後部のカーゴランプから、貨物や車両の積み降ろしが容易に行える設計となっています。

ベトナム戦争では、その高い輸送能力が評価され、榴弾砲や弾薬、兵員などを同時に輸送する作戦で活躍しました。その後も改良が重ねられ、自衛隊を含む世界各国の軍隊で採用されています。

愛称の「チヌーク」は、北アメリカの先住民族であるチヌーク族に由来します。

開発の経緯

1958年、アメリカ陸軍は、老朽化した輸送ヘリコプターの後継機として、新型中型輸送ヘリコプターの要求仕様を提示しました。これに対し、バートル社はV-107を大型化したV-114を提案し、採用が決定しました。1961年に試作機が初飛行し、1962年からアメリカ陸軍への納入が開始されました。

設計

基本構造

機体は、コクピット、キャビン、後部胴体の3つのセクションで構成されています。セミモノコック構造を採用し、強度と軽量化を両立させています。キャビンには、貨物の積み降ろしや人員の乗り降りのためのドアやハッチが設けられています。機体下部には、貨物を吊り下げて輸送するためのカーゴフックが装備されています。

動力系統

2基のターボシャフトエンジンを搭載し、タンデムローターを駆動します。タンデムローター方式により、メインローターとテールローターを持つ通常のヘリコプターに比べて、安定性が高く、より大きな積載量を運ぶことができます。初期のモデルは出力不足が指摘されましたが、エンジンの改良により、輸送能力が向上しています。

ローター

ローターブレードは、複合材料で作られており、軽量で強度が高くなっています。ブレードの先端部は、チタン合金製のフェアリングで保護されています。

機能

輸送能力

チヌークは、兵員、貨物、車両など、様々な物資を輸送することができます。キャビンには、兵員用の座席や担架を設置することができます。また、機体下部のカーゴフックを使用して、大型の貨物を吊り下げて輸送することも可能です。陸上自衛隊では、高機動車や1/2tトラックを搭載可能です。

自衛能力

自衛のために、レーダー警報受信機やミサイル警報装置、デコイ発射機などが搭載されています。また、ドアガンとして機関銃を装備することも可能です。

派生型

チヌークには、様々な派生型が存在します。

CH-47A: 最初の量産型。
CH-47B: ローターブレードの改良型。
CH-47C: エンジン強化型。
CH-47D: 大規模改修型。
CH-47F: 最新の輸送型。
MH-47D/E/G: 特殊作戦用。

この他、イギリス空軍向けのHCシリーズや、自衛隊向けのCH-47J/JAなどがあります。

運用

チヌークは、世界各国の軍隊で運用されています。アメリカ陸軍では、兵員や物資の輸送、戦闘支援、災害派遣などに使用されています。日本では、陸上自衛隊と航空自衛隊が運用しており、輸送任務や災害派遣などで活躍しています。

実戦での活躍

チヌークは、ベトナム戦争、フォークランド紛争、対テロ戦争など、数々の実戦に参加しています。ベトナム戦争では、その高い輸送能力が評価され、兵員や物資の輸送に大きく貢献しました。フォークランド紛争では、イギリス軍とアルゼンチン軍の両方がチヌークを運用し、補給や輸送任務に活用しました。

対テロ戦争では、アフガニスタンやイラクなどの戦地で、兵員や物資の輸送、特殊作戦の支援などに使用されました。

福島第一原子力発電所事故

2011年の福島第一原子力発電所事故では、陸上自衛隊のチヌークが、原子炉への放水作業に使用されました。

事故

チヌークは、これまでにいくつかの事故を起こしています。1994年には、イギリス空軍のチヌークがスコットランドで墜落し、29名が死亡する事故が発生しました。2007年には、陸上自衛隊のチヌークが徳之島で墜落し、4名が死亡しました。

諸元・性能

（各型の比較表は省略）

まとめ

CH-47 チヌークは、その高い輸送能力と多用途性により、世界中で広く運用されているベストセラーの輸送ヘリコプターです。今後も、様々な任務で活躍することが期待されます。

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