CODASYL

CODASYL（コダシル）とは

CODASYL（Conference/Committee on Data Systems Languages）は、データ処理業界における標準化を目的として1959年に設立された団体です。主に、複数のコンピュータで利用可能な標準プログラミング言語の開発を推進し、特にCOBOLの標準規格の維持と、関係データベース以前のデータベースモデルの策定に尽力しました。

CODASYLの誕生と活動

1959年、データ処理関連業界と米国政府機関のメンバーが集まり、CODASYLが組織されました。その主な目標は、データシステムの分析、設計、実装の効率化でした。設立当初は様々な言語について検討が行われましたが、具体的な標準化には至らず、標準化作業はANSI（米国規格協会）に引き継がれることになります。

1965年、CODASYLはリスト処理部会を発足させました。このグループは、COBOL言語の拡張としてレコード集合の処理機能の開発に取り組みました。この背景には、チャールズ・バックマンのIDS（Integrated Data Store）システムがあり、レコード間の関係をポインタで連結する方式が採用されていました。1967年、このグループはデータベース作業班（DBTG）と改称し、1968年1月に報告書を発表。1969年10月には、DBTGによってネットワーク型データモデルの言語仕様が発表されました。これが一般に「CODASYLデータモデル」と呼ばれるものです。

この仕様では、複数の言語が定義されました。一つはデータベースの論理スキーマを定義するデータ記述言語（DDL）、もう一つはアプリケーションからのデータベースビューを定義するサブスキーマを生成するDDLです。さらに、COBOLにデータベース操作機能を組み込むためのデータ操作言語（DML）の仕様も定義されました。この仕様はCOBOLを意識したものでしたが、DDLとDMLを分離したことで、言語に依存しないデータベースという概念が生まれるきっかけとなり、IBMがPL/I|PL_IをCOBOLの後継として宣伝する一因にもなりました。

その後の展開と衰退

1971年、プログラミング言語からの独立性を求める声が強まり、CODASYLは組織を再編しました。DDLの開発はデータ記述言語委員会が、COBOL DMLはCOBOL言語委員会が担当することになりました。しかし、後から見るとこの分割が良くない結果を生み、両委員会の仕様策定は同期されることなく独自に進められたため、ベンダーは仕様の差異に悩まされることになります。その結果、実装された製品間に非互換性が発生することになってしまいました。

それでも、いくつかのベンダーがDBTG仕様に準拠したデータベース製品を実装しました。主な製品としては、ハネウェルのIDS/2、CullinetのIDMS、UNIVACのDMS-1100、DECのDBMS32などが挙げられます。Cullinetは、グッドリッチから導入した技術を基にIDMSを開発しました。その後、Cullinetはコンピュータ・アソシエイツ（CA）に買収されましたが、CAは現在もIDMSの後継製品を販売しています。

現在、CODASYL自体は既に存在しませんが、一部の委員会は活動を続けています。CODASYLに関する記録はチャールズ・バベッジ研究所が保管しており、ウェブサイトで閲覧可能です。

1980年代に関係データベースが注目されるようになると、CODASYLの活動は徐々に縮小していきました。しかし、CODASYLはデータベース技術の発展において重要な役割を果たし、その成果は後のデータベース技術に大きな影響を与えました。

CODASYLの主な功績

COBOLの標準規格の維持：COBOLの普及と発展に貢献しました。
ネットワーク型データモデルの定義：今日のデータベース技術の基礎となる概念を確立しました。
データ記述言語（DDL）とデータ操作言語（DML）の分離：言語に依存しないデータベースの概念を提唱しました。

参考文献

The Codasyl Approach to Data Base Management. T. William Olle. Wiley, 1978. ISBN 0-471-99579-7.
The Codasyl Model. J. S. Knowles and D. M. R. Bell, in Databases - Role and Structure, ed. P. M. Stocker, P. M. D. Gray, and M. P. Atkinson, CUP, 1984. ISBN 0-521-25430-2

関連項目

ナビゲーショナルデータベース

外部リンク

* Charles Babbage Institute

CODASYLは、その活動を通じて、データ処理の標準化とデータベース技術の発展に多大な貢献をしました。その成果は、現代のデータベース技術にも受け継がれています。

もう一度検索