UNIVAC

UNIVAC（ユニバック）とは

UNIVAC（ユニバック、Universal Automatic Computer）は、1951年から販売された商用コンピュータのシリーズです。当初はエッカート・モークリー・コンピュータ・コーポレーション(EMCC)の製品として登場しましたが、買収によりレミントンランド、さらにスペリーの製品および部門名となり、合併を経てユニシスへと引き継がれました。世界初の商用コンピュータやメインフレームと呼ばれることも多く、その歴史はコンピュータ産業の黎明期を語る上で欠かせない存在です。

UNIVACの歴史

UNIVACの誕生は、ジョン・プレスパー・エッカートとジョン・モークリーがペンシルベニア大学でENIACを開発したことに端を発します。1943年から1946年にかけてENIACを構築しましたが、大学との知的所有権をめぐる対立から、1946年に二人は大学を離れ、Electronic Computer Corporation社(ECC)を設立。その後、エッカート・モークリー・コンピュータ・コーポレーション(EMCC)に改称しました。

EMCCは国勢調査局から1950年の国勢調査向けコンピュータの契約を獲得しましたが、開発の遅延と資金難に直面。小型コンピュータBINACの構築を請け負うことで資金繰りを試みましたが、BINACは納入先でほとんど使用されませんでした。

アメリカン・トータライザーの副社長ハリー・L・ストラウスの支援も受けましたが、ストラウスが飛行機事故で亡くなったことで支援は打ち切られ、1950年2月15日、EMCCはレミントンランドに買収されました。これによりUNIVAC部門が発足し、最初のUNIVAC(UNIVAC I)は1951年3月に完成・納品されました。

UNIVAC Iとその影響

UNIVAC Iは、1952年のアメリカ大統領選挙の結果を予測したことで、広く世間に知られるようになりました。従来の世論調査ではアドレー・スティーブンソン候補の勝利が予想されていましたが、UNIVAC Iはドワイト・D・アイゼンハワーの地滑り的勝利を予測。当初、この予測はあまりにも歪んでいると判断され、報道がためらわれたものの、結果的にコンピュータの予測が的中し、その正確性が証明されることとなりました。

また、アメリカ陸軍も国家動員計画の複雑な計算に対応するため、UNIVACの導入を検討。手計算や電動計算機では解決できない問題を解決するための必要性が訴えられました。

UNIVAC部門の変遷

レミントンランドは、自社の計算機研究所や、買収したエンジニアリング・リサーチ・アソシエイツ(ERA)社などを統合し、UNIVAC部門を強化しました。しかし、この統合はERAやノーウォーク研究所の人々にとっては不満の残るものでした。

1955年には、レミントンランドはスペリーと合併してスペリーランドとなり、UNIVAC部門はスペリーランドのUnivac部門に改称。1960年代には、UNIVACはアメリカ合衆国における主要なコンピュータ企業の一角を占め、「IBMと7人の小人」と称される一社となりました。その後、コンピュータ事業の売却や再編を経て、各社の頭文字をとってBUNCH（バンチ）と呼ばれるようになりました。

1963年には、沖電気工業と技術提携契約を結び、合弁会社「沖ユニバック」を設立しましたが、これにより沖電気本体はメインフレーム事業から撤退することとなりました。

その後、「スペリーユニバック(Sperry Univac)」への名称変更、事業の集中化を経て、1986年にはスペリーがバロースと合併してユニシスとなりました。現在、ユニシスはコンピュータサービスとアウトソーシングの会社へと進化し、IBM、EDS、CSCなどと競争を繰り広げています。

UNIVACの開発機種

UNIVACは、その歴史の中で数多くの機種を開発しました。

UNIVAC 60/120 (1949年): 配線盤でプログラムするパンチカード式計算器。
UNIVAC I (1951年): アメリカ初の商用コンピュータ。水銀遅延線メモリと真空管を使用。
UNIVAC II (1958年): UNIVAC Iの改良版。磁気コアメモリを使用し、一部回路がトランジスタ化。
UNIVAC III (1962年): 二進数マシンだが、十進方式の従来機種との互換性も保持。
UNIVAC Solid State: 2アドレス式の二進化十進式コンピュータ。磁気ドラムメモリと半導体を使用。
UNIVAC 1101/1102: ERAの設計による24ビットマシン。磁気ドラムメモリを使用。
UNIVAC 1103 (1953年): 36ビット機。磁気ドラムメモリとウィリアムス管を使用。
UNIVAC 1104 (1957年): 1103の30ビット版。ボマークミサイルの制御システム向けに開発。
UNIVAC 1105 (1958年): 1103Aの後継機。
UNIVAC 1100/2200 シリーズ: 36ビットのトランジスタ化されたコンピュータ。現在もユニシスで ClearPath Dorado としてサポート。
UNIVAC 1107 (1962年): レジスタに薄膜メモリを使用。
UNIVAC 1108 (1964年): 最初のマルチプロセッサ機。最大3台のCPUを搭載可能。
UNIVAC 1106 (1969年): 1108 と同じ命令セットだが、マルチプロセッサ構成は制限されていた。
UNIVAC 1110 (1972年): 最大6ウェイのマルチプロセッサ構成が可能。
UNIVAC 1100/10, 1100/20, 1100/40, 1100/60, 1100/70, 1100/80, 1100/90 : 半導体メモリを採用した新シリーズ。
UNIVAC 418 (1963-1969): 18ビット機。
UNIVAC 490, 492, 494: 30ビットワードマシン。メモリ容量を拡張。
UNIVAC 1004 (1962年): 配線盤プログラム方式のパンチカード式計算機。
UNIVAC 1005 (1966年): 1004の後継機。内部にプログラムを読み込み可能。
UNIVAC 1050 (1963年): プログラム内蔵式。32K×6ビットメモリ。
UNIVAC System 80 (1981年)
UNIVAC 9000 シリーズ: System/360に対抗して登場した互換機。Plated Wire Memory を採用。
UNIVAC 9200: 1004の後継機。メモリ容量は4K～16K。

オペレーティングシステム

UNIVAC 1107は、初の36ビットワード指向マシンであり、1100シリーズのアーキテクチャの基礎となりました。オペレーティングシステムとしては、バッチ処理向きの第二世代OSであるEXEC IIが動作しました。1108ではEXEC IIとEXEC 8が動作し、複数CPUでの並列処理やメモリ容量の増大を可能としました。

EXEC 8は、リアルタイムアプリケーション、タイムシェアリングシステム、バックグラウンドのバッチジョブを同時に実行でき、TIPというトランザクション処理環境も提供しました。後のシステムでは、EXEC 8はOS1100およびOS2200と改称され、互換性が保たれました。また、RTOSなどのOSも利用可能でした。

特撮とUNIVAC

特撮テレビ番組『ウルトラセブン』では、ウルトラ警備隊のシーンでUNIVACのコンピュータが登場しました。特に、マシン本体ではなくMT装置がよく登場し、紙テープが出力される様子が描かれました。

登録商標

UNIVAC® は以下の企業で登録商標として使用されました。

Eckert-Mauchly Computer Corporation
Remington Rand Corporation
Sperry Rand Corporation
Sperry Corporation
Unisys Corporation

参考文献

David E. Lundstrom: A Few Good Men from Univac, ISBN 0735100101
Nancy Beth Stern, From Eniac to UNIVAC: An Appraisal of the Eckert-Mauchy Computers, ISBN 0932376142
Arthur L. Norberg, Computers and Commerce: A Study of Technology and Management at Eckert-Mauchly Computer Company, Engineering Research Associates, and Remington Rand, 1946-1957 (History of Computing) (Hardcover), ISBN 026214090X
James W. Cortada, Before the Computer: IBM, NCR, Burroughs, and Remington Rand and the Industry They Created, 1865-1956 (Studies in Business and Technology), ISBN 0691050457

関連項目

UNIVACの製品一覧
マルチバック

外部リンク

UNIVAC® Memories
Universal Automatic Computer Model II
UNIVAC 1004 80/90 Card Processor
The Case 1107
Unisys History Newsletter. Volume 1, Number 3
UNIVAC timeline
A still functional UNIVAC 9400 in a German computer museum
UNIVAC Simulator 1.2 – by Peter Zilahy Ingerman
* UNIVAC I/II console photos, 1948-1955 marketing documentation and flash video (Off The Broiler blog)

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