グッドリッチ

グッドリッチ・コーポレーション：航空宇宙からタイヤ、そしてその歴史

グッドリッチ・コーポレーションは、アメリカ合衆国を代表する航空宇宙メーカーとして知られていました。1870年、ベンジャミン・フランクリン・グッドリッチ博士によってオハイオ州アクロンで設立された同社は、当初は「グッドリッチ・テュー・アンド・カンパニー」という名称でした。その後、「BFグッドリッチ・カンパニー」と改称し、ゴム製品、特にタイヤの製造で世界的な名声を確立しました。

BFグッドリッチは、アメリカで初めて空気入り自動車用タイヤを開発したパイオニアであり、その技術力は高く評価されていました。チャールズ・リンドバーグの大西洋無着陸横断飛行では、同社の「シルバータウン」タイヤが使用されたことは有名です。また、1965年にはアメリカで初めてラジアルタイヤを発売するなど、常に業界をリードする存在でした。

しかし、グッドリッチの事業はタイヤだけに留まりませんでした。同社は、ジッパーの開発・普及にも貢献し、航空機の防氷ブーツを開発するなど、多様な分野で技術革新を牽引しました。これらの技術開発は、航空機産業に大きな影響を与えました。ボーイング777、ボーイング787、エアバスA380、F/A-18ホーネットといった数々の航空機に、グッドリッチの部品が搭載されています。

1988年、BFグッドリッチはタイヤ部門をミシュランに売却しました。これにより、BFグッドリッチブランドのタイヤはミシュランによって製造・販売されるようになりました。現在でも、ミシュランとBFグッドリッチはそれぞれ異なる市場セグメントをターゲットに、製品を提供し続けています。日本では、ミシュランが小型・普通乗用車用タイヤを、BFグッドリッチが大型SUV用タイヤを主力製品としています。モータースポーツへの関与も長く、全日本GT選手権への参戦や世界ラリー選手権（WRC）へのタイヤ供給など、実績を残しました。

2001年、BFグッドリッチ・カンパニーは社名をグッドリッチ・コーポレーションに変更し、事業の中心を航空宇宙分野に集約しました。ロー社やコルテック・インダストリーズ、TRWエアロノーティカル・システムズといった企業の買収を通じて、航空機部品製造事業を拡大し、事業ポートフォリオを強化しました。

しかし、2011年、グッドリッチ・コーポレーションはユナイテッド・テクノロジーズに買収されました。買収額は165億ドルにのぼる大型買収であり、航空宇宙業界に大きな衝撃を与えました。2012年に買収が完了し、グッドリッチ・コーポレーションは独立企業としての歴史に幕を閉じました。その後、グッドリッチの電力機器部門はサフランに売却されました。

グッドリッチ・コーポレーションは、その歴史の中で、タイヤ開発から航空機部品製造まで、幅広い分野で技術革新と事業展開を行い、世界的な企業へと成長しました。その技術とブランド力は、現在でもミシュランやユナイテッド・テクノロジーズを通じて、世界中の航空機や自動車に受け継がれています。 百年以上の歴史を持つ同社の功績は、航空宇宙産業、自動車産業、そしてゴム産業の発展に多大な貢献をしたと言えるでしょう。

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