Common User Access

Common User Access (CUA) とは

Common User Access（CUA）は、IBMが開発したオペレーティングシステム（OS）とコンピュータプログラムのユーザーインターフェース（UI）に関する標準規格です。1987年にIBMのSystems Application Architecture（SAA）の一部として発表されました。

初期には、OS/MVS、VM/CMS、OS/400、OS/2、そしてWindowsといったOSで採用され、CUAの一部はUnix系OSを含む他のOSのプログラムにも実装されました。さらに、Java AWTやSwingといったUIツールキットにも影響を与えています。

CUAの目的と背景

CUAの仕様は、アプリケーションの見た目や操作性に関して詳細なルールを定めていました。その主な目的は、当時、個々に異なるUIを持っていたDOSアプリケーション間の操作性の統一を図ることでした。

例えば、ファイルを開く操作一つをとっても、以下のように各アプリケーションでキー操作が異なっていました。

WordPerfect: `[F7] - [3]`
Lotus 1-2-3: `[/]`(メニュー) - `[W]`(ワークスペース) - `[R]`(取り出し)
Microsoft Word: `[Esc]`(メニュー) - `[T]`(転送) - `[L]`(読み出し)
WordStar: `[Ctrl]+[K]+[O]`
emacs: `[Ctrl]+[x]` その後 `[Ctrl]+[f]` (find-file機能)

`[ESC]`キーの動作も、プログラムによってキャンセルや完了など、意味が異なっていました。また、`[End]`キーも行末移動やフォーム入力完了など、用途が統一されていませんでした。ヘルプキーも、`[F1]`が多い中で`[F3]`を使うアプリケーションも存在しました。このように、ユーザーは各プログラムのUIを個別に学習する必要があり、新しいプログラムを使い始めるたびに、過去の知識が無意味になるという課題がありました。

CUAは、このような状況を改善するために、操作の一貫性を目指したのです。

CUAの具体的な内容

CUAには、ダイアログボックス、メニュー、キーボードショートカットなどの操作に関する標準が含まれています。CUAの規格は詳細にわたり、今日でも多くのプログラマーによって参照されています。

CUAの特徴的な点は以下の通りです。

マウスとキーボードの両方で操作可能: すべてのアプリケーションは、マウスとキーボードの両方で操作できる必要があります。
メニュー: `[F10]`キーでメニューを選択/非選択、`[Alt]`キーとメニュー内の下線付き文字でメニューを開きます。
メニューコマンド: パラメータが必要なメニューコマンドには、リーダーが付きます。
オプション: オプション指定にはダイアログボックスを使用します。ダイアログボックスはタブでセクション分けされます。
ダイアログボックス: ダイアログボックス内での移動はカーソルキー、フィールド間の移動は`[Tab]`キー、`[Shift]+[Tab]`で戻ります。`[Esc]`でキャンセル、`[Return]`でOKを実行します。
ヘルプ: アプリケーションのヘルプはメニューバーの最後の「Help」メニューからアクセスでき、コンテキストヘルプは`[F1]`キーで表示します。
標準メニュー: 最初のメニュー項目は「File」で、新規作成、開く、保存、別名保存、終了などのコマンドが含まれます。「Edit」メニューには、取り消し、やり直し、切り取り、削除、貼り付けなどのコマンドが含まれます。
ショートカットキー: 切り取りは `[Shift]+[Del]`、コピーは `[Ctrl]+[Ins]`、貼り付けは `[Shift]+[Ins]`です。
ウィンドウサイズ変更: ウィンドウの境界をドラッグしてサイズを変更できます。

CUAは、DOSアプリケーションだけでなく、OS/2のテキストモードとPresentation Manager両方のGUI、IBMのメインフレーム、そしてWindowsのCUI（Consistent User Interface）の基礎となりました。

CUAの理念と影響

CUAは、単にDOSアプリケーションを合理化するだけでなく、IBMのコンピュータ全体（マイクロコンピュータからメインフレームまで）のソフトウェアとハードウェアの機能を統合し、調和させるという大規模な計画の一環でした。

CUAの第3版では、オブジェクト指向のワークプレースが導入され、ユーザーが操作するデータ（ドキュメントや画像など）を中心に据え、従来のアプリケーション中心の考え方から、データ中心の操作へと転換しました。

CUAは、Windowsの初期の開発段階に強い影響を与え、Windows 3.0のGUIはCUA '87に準拠していました。しかし、Windows 3.1以降はショートカットキーがMacintosh風に変更され、Windows 95のリリース以降はGUI全体もCUAの設計から離れていきました。それでも、CUAで規定された基本的なGUIウィジェットの標準キーストロークはWindowsの機能として残っています。

参考文献

IBM, Systems Application Architecture: Common User Access: Panel Design and User Interaction, Document SC26-4351-0, 1987年.
IBM, Systems Application Architecture: Common User Access: Advanced Interface Design Guide, Document SC26-4582-0, 1990年.
IBM, Systems Application Architecture: Common User Access: Basic Interface Design Guide, Document SC26-4583-0, 1990年.
IBM, Systems Application Architecture: Common User Access: Guide to User Interface Design, Document SC34-4289-00 1991年
IBM, Systems Application Architecture: Common User Access: Advanced Interface Design Reference, Document SC34-4290-00 1991年

外部リンク

Common User Access - A consistent and usable human-computer interface for the SAA environments (PDF, 1.94 MiB), by Richard E. Berry, IBM Systems Journal, Volume 27, Nº 3, 1988.
The evolution of the Common User Access Workplace Model - Technical (PDF, 2.67 MiB), by Richard E. Berry, Cliff J. Reeves, IBM Systems Journal, September 1992.
The designer's model of the CUA workplace - Common User Access - Technical, by Richard E. Berry, IBM Systems Journal, September 1992.

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