D端子

D端子：日本のアナログ映像伝送規格

D端子とは、日本の電子機器メーカーが開発した、アナログ映像信号を伝送するための接続端子です。その形状がアルファベットの「D」に似ていることから名付けられました。デジタル放送機器との関連性から「デジタル」端子と誤解されることも多いですが、実際にはアナログ信号（コンポーネント映像信号）を伝送します。

D端子の歴史と規格

D端子は、日本電子機械工業会（EIAJ）によってRC-5237規格として1999年7月に制定されました。正式名称は「デジタル放送映像信号用（Y, Pb, Pr）接続用D端子コネクタ」ですが、これはデジタル放送に対応することを示すものであり、信号自体がデジタルであることを意味するものではありません。

従来、コンポーネント映像信号の伝送には3本のケーブルが必要でしたが、D端子は1本のケーブルで映像信号と制御信号の伝送を可能にしました。これにより、接続が簡素化され、省スペース化にも貢献しました。

D端子の構造とピン配列

D端子は14ピンで構成されており、輝度信号、色差信号、識別信号、プラグ挿入検知信号などを伝送します。さらに、3つの予備ラインも備えています。識別信号ラインは、ケーブルの外被GNDを使用するため、実質的な端子数は15となります。機器のスペース制約によっては、特殊なD端子が使用される場合もあります。

D端子の種類と解像度

D端子は、伝送可能な映像信号の解像度や走査方式によって、D1からD5までの種類に分類されます。それぞれの規格は以下のとおりです。

D1 (480i/525i): 720×480ドット、インターレース方式。標準画質で、アナログテレビ放送やSD画質のデジタル放送、DVDなどに相当します。
D2 (480p/525p): 720×480ドット、プログレッシブ方式。D1と同様の解像度ですが、プログレッシブ方式のため、より滑らかな映像表現が可能です。DVDプレーヤーなどのプログレッシブ出力に対応した機器で使用されます。
D3 (1080i/1125i): 1920×1080ドット、インターレース方式。フルハイビジョン画質で、多くのハイビジョン放送番組がこの規格に対応しています。
D4 (720p/750p): 1280×720ドット、プログレッシブ方式。ハイビジョン画質で、多くのハイビジョンテレビや機器がこの規格に対応しています。
* D5 (1080p/1125p): 1920×1080ドット、プログレッシブ方式。フルハイビジョン映像のプログレッシブ方式で、最も高精細な映像を伝送できます。

これらの規格は、互換性を考慮して設計されていますが、必ずしも下位規格との互換性が保証されているわけではありません。例えば、D4出力に対応した機器でも、D1入力に対応していない場合があります。

ゲーム機とD端子

多くのゲーム機もD端子出力に対応していました。具体的な対応状況は機種によって異なりますが、一般的に、高解像度の映像出力に対応した機種では、より高精細な映像を楽しむことができました。

たとえば、初代Xboxは480iから720pまで、Xbox 360は最大1080pまで対応していました。また、PlayStation 2やWii、PlayStation 3、PlayStation PortableなどもD端子に対応していました。しかし、PlayStation 3では、モデルによってはD端子によるブルーレイ再生が制限されるなど、機種による違いがありました。

D端子の利点と欠点

D端子の利点としては、1本のケーブルで映像信号と制御信号を伝送できること、コンポーネント端子と比較して安価で省スペースであることが挙げられます。一方、欠点としては、画質がコンポーネント端子に比べてやや劣るとされること、日本独自の規格であるため、海外製の機器との互換性に乏しいことが挙げられます。

HDMI登場後のD端子

HDMIの普及により、D端子は徐々に姿を消しつつあります。HDMIはデジタル信号伝送であり、より高精細な映像伝送と著作権保護の観点から、D端子よりも優れています。

多くのハイビジョン対応テレビでは、HDMIは1080p以上の高解像度に対応している一方、D端子は720pまでの対応にとどまる機種が多いです。また、コピーガードの制限から、DVDビデオソフトのアップコンバート出力はHDMIに限定される傾向があります。

2010年代以降、D端子は多くの機器から姿を消し、現在では生産終了となっています。

まとめ

D端子は、かつて日本の家庭用AV機器において広く普及したアナログ映像伝送規格でした。しかし、HDMIの普及や著作権保護の強化により、その役割を終えつつあります。本稿では、D端子の規格、対応機器、HDMIとの比較などを解説しました。D端子に関する知識は、過去の映像機器を理解する上で役立つでしょう。

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