D-18T (エンジン)

D-18T 高バイパスターボファンエンジン

D-18Tは、ソビエト連邦で初めて開発された、推力20,000kgf（44,000lbfまたは196kN）を超える3軸式高バイパスターボファンエンジンです。主に大型輸送機での使用を目的として設計されました。

概要

このエンジンはファンリバーサを備えており、モジュラー設計が採用されているため、各部の交換が容易です。1979年12月には実物大のエンジンが製造され、1982年3月にはIl-76LL試験機による最初の飛行試験が行われました。同年12月24日には、An-124輸送機に搭載されて初飛行を成功させました。D-18Tエンジンの生産は1997年に一旦終了しましたが、2002年からは改良型のシリーズ3の生産が開始されました。

設計と開発

西側諸国では、アメリカ空軍のC-5輸送機向けに開発されたゼネラル・エレクトリック TF39を皮切りに高バイパス比ターボファンエンジンが普及し、1970年代には民間機にも広く採用されるようになりました。しかし、ソビエト連邦では高バイパス比ターボファンエンジンの実用化に遅れが見られ、同国初のワイドボディ機であるIl-86の採用数が伸び悩む要因の一つとなりました。

旅客機の場合、計画経済下で東側諸国の国有企業からの発注が見込めるため、西側諸国の機体と比べて性能が劣っていても大きな問題にはなりませんでした。しかし、軍用機の性能不足は重大な問題となるため、ソビエト連邦軍はC-5に対抗できる戦略輸送機を実現するためには、高バイパス比ターボファンエンジンの開発が不可欠であると判断しました。その結果、1970年代後半からプロフレース設計局によってD-18Tエンジンの開発が開始されました。1984年からは、ザポリージャのモトール・シーチ工場で生産が行われ、ウクライナの大型輸送機であるAn-124ルスラーンとAn-225ムリーヤに搭載されました。

主な出来事

1980年9月19日 - 実物大エンジンの始動
1982年12月24日 - An-124が初飛行
1985年12月19日 – 公式地上試験に合格

現在、188基のD-18Tエンジンが運用されており、総飛行時間は100万時間を超えています。

搭載機

アントノフ An-124
アントノフ An-225

仕様

一般的特性

形式: 3軸式高バイパスターボファン
全長: 5.4m（212.6in）
全幅: 2.93m（115.6in）
全高: 2.79m（109.9in）
ファン直径: 2.33m（91.73in）
乾燥重量: 4,100kg（9,039lb）

構成要素

圧縮機: 7段中圧圧縮機, 7段軸流式高圧圧縮機
燃焼器: アニュラー式燃焼器
タービン: 高圧単段タービン, 中圧単段タービン, 低圧4段タービン

性能

推力: 23,430 Kgf; 51,655重量ポンド (229.77 kN)
全圧縮比: 27.5
バイパス比: 5.7
タービン入口温度: 1,600°K（1,327°C; 2,420°F）
推力重量比: 約5.7:1

脚注

出典

参考文献

青木謙知「ウクライナのアントノフ : その経緯と実績、そしてAn-225ムリヤのこと」『航空ファン』第71巻、第6号、文林堂、58-63頁、2022年6月。

関連項目

航空用エンジンの一覧

外部リンク

Ivchenko-Progress
* Motorsich

もう一度検索