D-STAR

D-STAR（Digital Smart Technologies for Amateur Radio）

D-STARは、日本アマチュア無線連盟（JARL）が1990年代末に開発したデジタルアマチュア無線通信方式です。音声（DV）とデータ（DD）の両方に対応しており、世界各国のアマチュア無線家によって利用されています。

概要

D-STARは、最小偏移変調とパケット通信を採用しており、従来の無線機同士の直接通信やレピータを介した通信に加え、レピータ間の中継が可能です。アマチュア無線専用に開発された最初のデジタル通信規格であり、HF、VHF、UHFなどのアマチュア無線周波数帯で使用できます。

D-STAR無線機は、インターネットなどの通信網に接続して、音声やパケットデータを送受信できます。アイコム、ケンウッド、フレックスレディオ・システムなどのメーカーがD-STAR対応無線機を製造しています。

通信モード

D-STARには、以下の2つの通信モードがあります。

DV（Digital Voice）モード: 音声を2.4kbpsに符号化し、GMSKで変調して送信するモードです。音声コーデックにはAMBEが用いられています。4.8kbpsのデジタルデータ通信機能も備えており、ArduinoやRaspberry Piと接続して長距離データ通信が可能です。D-STARトランシーバに標準搭載されているDPRS（位置情報システム）も、このデータ通信機能を利用しています。
DD（Digital Data）モード: 1200MHz帯を使用し、150kHzの帯域幅で128kbpsのデジタルデータ通信を行うモードです。LANケーブルを接続してイーサネット接続が可能です。

DPRSのシンプレックス運用

438.01MHzでは、DPRSやウェザーステーションの自動送受信が行われています。D-STARトランシーバの自動送信タイマーを設定することで、位置情報や気象情報を自動的に送信し、他のアマチュア無線局と共有できます。これにより、コミュニケーションの活性化や、登山時の遭難予防に役立てることが可能です。

DVゲートウェイ機能

DVゲートウェイ機能には、ターミナルモードとアクセスポイントモードがあります。

ターミナルモード: D-STARトランシーバをPCやスマホ経由でインターネットに接続し、他のレピータ局へアクセスする機能です。付近にD-STARレピータがない場合や、自宅からアンテナを出すのが難しい場合に便利です。
アクセスポイントモード: D-STARトランシーバをPCやスマホ経由でインターネットに接続し、私設のD-STARレピータとして使用する機能です。複数の局で共有できます。

従来のパケット通信との互換性

D-STARのDDモードはイーサネットであるため、従来のAX.25によるTCP/IP通信とは互換性がありません。相互運用する場合は、レイヤ3を通す必要があります。

中継

デジタルレピータ局間は、5GHzまたは10GHz帯のレピータアシスト局によるATM回線、またはレピータに接続されたゲートウェイPC間のインターネット接続により中継できます。

利用

D-STARは、ローカル局同士の直接通信や、デジタルレピータを経由した遠距離通信に利用されます。DVモードでの音声通信と同時に、GPSとデータ通信機能を利用して、位置情報をリアルタイムに交換することも可能です。

D-STARトランシーバとスマートフォンを接続して、写真やテキストデータを送受信したり、D-RATSソフトウェアを用いてチャットやファイル共有を行うこともできます。

歴史

1998年：日本アマチュア無線連盟が「アマチュア無線へのデジタル技術導入に関する調査検討」プロジェクトを開始。
2001年：D-STARシステムの実験局免許を取得し、実用化実験を開始。
2004年：D-STARシステムの運用開始。
2007年：世界初の衛星を介したD-STAR通信に成功。
* 2014年：ロシアのD-STAR搭載アマチュア衛星「TabletSat-Aurora」が打ち上げ。

まとめ

D-STARは、アマチュア無線におけるデジタル通信の先駆けとして、世界中で利用されています。音声とデータの両方に対応し、インターネットとの連携も可能なため、多様な活用が期待されています。

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