Dbx

dbx（ディー・ビー・エックス）とは

dbxは、1971年にデヴィット・ブラックマーによって設立されたアメリカの音響機器メーカーです。現在は、ハーマン・インターナショナルの傘下となっています。社名のdbxは、創業者のデヴィット・ブラックマーのアイデアである「Decibel Expansion（デシベル拡張）」に由来しています。

dbxは、プロフェッショナル向けのオーディオ機器、特にコンプレッサー、リミッター、マイクプリアンプなどのシグナルプロセッサーを主力製品として製造しています。これらの機器は、音響制作の現場で、音のダイナミックレンジを調整し、よりクリアで高品質なサウンドを実現するために不可欠です。

dbxノイズリダクション

dbxが開発したノイズリダクションシステムは、コンパンディング技術を応用したもので、特にアナログテープレコーダーやレコードなどのノイズ低減に効果を発揮します。

コンパンディング技術

コンパンディングとは、録音時に信号レベルを圧縮し、再生時に伸長する技術です。dbxノイズリダクションでは、録音時に原信号のダイナミックレンジを圧縮し、小さい信号を相対的に大きくします。これにより、録音時のノイズレベルが相対的に小さくなります。再生時には、圧縮された信号を元のダイナミックレンジに戻すことで、ノイズが低減されたクリアなサウンドを再現します。

具体的には、録音時に信号レベルを最大レベルに近づけるように圧縮します（例：-20dBの信号を-10dBに、-10dBの信号を-5dBに）。再生時には、この逆変換を行い、元の信号レベルに戻します（例：-5dBの信号を-10dBに、-10dBの信号を-20dBに）。このプロセスにより、ノイズレベルが低減され、よりクリアなサウンドが得られます。

Type I と Type II

dbxノイズリダクションには、Type IとType IIの2つのタイプがあります。

• - Type I：主に業務用として、38cm/s以上のテープ速度を持つオープンリールアナログテープデッキや、サンプリング周波数が40kHz以上のデジタルレコーダー向けに設計されています。
• - Type II：主に民生用として、アナログカセットテープデッキや、19cm/s以下のテープ速度を持つオープンリールアナログテープデッキ向けに設計されています。

他のノイズリダクションシステムとの比較

dbxノイズリダクションは、ドルビーノイズリダクションシステムと比較して、可聴域全帯域幅のノイズを効果的に抑えることができるという特長があります。しかし、ドルビー方式が比較的簡易な方法で再生できるのに対し、dbx方式は対応機器以外では適切に再生することが難しいという弱点があります。

dbx方式で録音されたテープを対応していない機器で再生すると、音圧が極端に上がった状態になり、正常な音質で聴くことができません。また、dbxの変換に必要な指数・対数変換回路は、テープ全盛期には高価であったため、機器の普及を妨げる要因にもなりました。

その他の類似システム

dbxの圧縮伸長比は1：2であるため、他のシステムでの簡易再生が事実上不可能でした。これにより、dbxの衰退を招いた要因の一つと考えられます。類似のシステムとしては、圧縮伸長比が1：1.5のadres（東芝）、同じ比率で周波数帯域分割をしたSuperD（三洋電機）、コンパンダ（日立製作所）、ハイコム（テレフンケン）などがあります。

まとめ

dbxは、プロフェッショナル向けの音響機器と独自のノイズリダクション技術で知られるメーカーです。dbxノイズリダクションは、その効果の高さから多くの支持を集めましたが、対応機器の制約やコストの問題から、普及には至りませんでした。しかし、その技術は現代の音響機器にも影響を与え続けています。

関連情報

• - 参考文献: Richard James Burgess, "The History of Music Production" (Oxford University Press, 2014).
• - 関連項目: 様々な[ノイズリダクション]]システム、コンパンディング、VHS Hi-Fi。
• - 外部リンク:

- [公式ウェブサイト（英語）
- ヒビノ（輸入総代理店）

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