DEC Professional

Professional 325とProfessional 350

Professional 325（PRO-325）とProfessional 350（PRO-350）は、ディジタル・イクイップメント・コーポレーション（DEC）によって1982年に導入されたPDP-11互換のハイエンドマイクロコンピュータです。このモデルはIBM PCへの対抗機として開発されましたが、実際にはPDP-11のソフトウェアと完全な互換性を持っていませんでした。後に、性能が向上したProfessional 380（PRO-380）も登場します。

機種の特性

外観は当時販売されていたRainbow 100やDECmate IIに似ていますが、Professionalシリーズは特有のLK201キーボードと、400KB片面4倍密度のフロッピーディスクドライブ（RX50）を装備し、カラーや白黒のモニターから選択できるのが特徴です。しかし、DECのこれらの製品は市場で好評を得られず、業界はIntel 8088を利用したIBM PC互換機を主流としました。これには技術的な優位性についても理由があります。

PDP-11マイクロプロセッサはインテルのマイクロプロセッサと比較して、いくつかの点で優れていましたが、実際の市場競争では他の要素が重要視されました。例えば、PDP-11は22ビットのアドレスバスを持ち、4MBのメモリアクセスが可能でしたが、インテルの8088は20ビットのアドレスバスの制約から1MBに制限されていました。しかし、1984年のBYTE誌によると、IBM PCで動くVenix（初期のPC-UNIX）は、DEC ProfessionalやPDP-11/23で動くVenixよりもパフォーマンスが優れているとされています。

DECは、PDP-11シリーズの高利益性を守ることに注力した結果、プロフェッショナルシリーズはオフィス用または科学技術用ワークステーションとして広く受け入れられませんでした。市場では、Intel 8086やMC68000を搭載したコンピュータが主流となり、DECはその足場を失うこととなります。

技術的仕様

Professional 325および350は、DECが開発したF-11チップセットを使用しています。このチップセットは、90ピンZIFコネクタを採用した独自のCTI（Computing Terminal Interconnect）バスによって拡張スロットを最大6つまで対応可能です。Professionalシリーズは2台のRX50フロッピーディスクドライブを搭載しており、Professional 325はドライブを1つだけ備えていますが、Professional 350と380は内蔵のハードディスクを搭載しています。

PDP-11がシリアル通信端末を使用していたのに対し、Professionalシリーズでは内部ビットマップグラフィックスを用いてコントロールされたコンソールとディスプレイが統合されています。この設計により、PDP-11のオペレーティングシステムに対して大幅な修正が必要とされました。デフォルトのオペレーティングシステムはDECのP/OS（Professional Operating System）ですが、複数のオペレーティングシステムが利用可能でした。

特に、Professional 380はJ-11チップセットを搭載しており、理論上は高性能でしたが、クロッキングの問題から動作周波数が制限されました。その結果、標準のPDP-11/73システムよりも性能が低下する事態となりました。また、クローン製品としては、プロフェッショナル350がソビエト連邦においてElektronika MS-0585として製造されました。

このように、ProfessionalシリーズはPDP-11の特性を持ちながらも市場での適応に失敗し、業界の技術革新に乗り遅れる結果となりました。DECの高い技術力にもかかわらず、消費者向けコンピュータ市場での競争においては期待された成果を上げることができず、その後の企業の命運に影響を及ぼしました。

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