DF-5 (ミサイル)

DF-5 大陸間弾道ミサイル

DF-5（中: 东风-5、Dong-Feng-5）は、中華人民共和国が開発した大陸間弾道ミサイル（ICBM）であり、DoD識別番号はCSS-4です。

開発経緯

1965年3月、第七機械工業部第一研究院（現在の中国航天科技集団公司運載火箭技術研究院）は、今後8年間で4機種の弾道ミサイルを完成させる「八年四弾」計画を中央軍事委員会に提案しました。当時、第一研究院では、中距離弾道ミサイル（MRBM）のDF-2A、DF-3の開発がほぼ完了していたため、より長射程の中距離弾道ミサイル（IRBM）と大陸間弾道ミサイル（ICBM）の開発に注力することになりました。

計画では、最大射程4,000km、ペイロード2,200kgのDF-4（IRBM）と、最大射程12,000km、ペイロード3,000kg超のDF-5（ICBM）をそれぞれ1970年と1972年までに完成させる予定でした。しかし、1967年7月、第一研究院はDF-4の開発を中止し、DF-5の開発に集中することを進言します。これは、DF-5の射程とペイロード能力があればDF-4の攻撃対象もカバーできると考え、リソースを集中させることで開発期限を守れると判断したためでした。

しかし、政治指導部はDF-5の開発が技術的に困難であるとし、DF-5の開発が頓挫した場合、IRBMとICBMの両方の保有が果たせなくなることを懸念しました。そのため、DF-4とDF-5の並行開発を指示しました。

DF-5は2段式ミサイルとして新規開発されることになり、特に以下の4つの新技術の習得が課題となりました。

1. 大推力エンジンの開発
2. 最適制御理論を取り入れた飛翔制御
3. 高強度な新型アルミ合金の使用
4. ペネトレーションエイドを備えた核弾頭放出装置の開発

これらの新技術の導入は困難を極めましたが、1971年9月10日にDF-5の発射試験が初めて成功しました。

1969年3月の中ソ国境紛争を機に、中国政府はソ連の脅威を改めて認識し、DF-5の配備を急ぎましたが、開発は遅れていました。1970年代後半に入ると開発は進み、1980年5月には南太平洋西部に向けて実弾頭を搭載しない発射試験が成功しました。その直後、ミサイルサイロ開発計画「319計画」が完了する前にDF-5の訓練部隊が編成され、仮配備が開始されました。

発射方式については、生存性と実効性の観点から、地下サイロ発射方式が採用されました。1980年末までに2基の試験用ミサイルサイロが完成し、各種試験が行われた後、1981年8月から実戦部隊への配備が開始されました。

その後、射程、運用性、信頼性の改善を目指し、1983年11月10日から近代化型DF-5Aの開発が開始され、1986年12月19日に完了しました。

技術的特徴

DF-5シリーズは、2段式ミサイルであり、全長36m、直径3.35m、発射重量183トンと、アメリカのタイタンII弾道ミサイルを上回るサイズです。ミサイルサイロへの格納を考慮し、安定翼は装備されていません。

機体には、高強度ながら溶接が難しいとされていたAl-Cu系アルミ合金の一種を使用し、溶接性を改善した新型アルミ合金が採用されています。

エンジンは、1段目に70トンの大推力を発生させるYF-20を4基クラスター化し、ジンバル式の飛翔制御方式を採用しています。2段目にはYF-20から派生したYF-22を1基使用し、4基のバーニアエンジンによる飛翔制御方式を採用しています。

推進剤は、1段目、2段目ともに燃料として非対称ジメチルヒドラジン、酸化剤として高純度の四酸化二窒素を使用しています。

DF-5はペネトレーションエイド能力を有し、敵のBMDシステムを攪乱させるため、デコイやチャフを放出する装置を搭載しています。基本型DF-5、近代化型DF-5Aの核弾頭の核出力は1〜3MT、最新型DF-5BはMIRV化され、核出力150〜350kTの核弾頭を3発搭載しています。

誘導方式は、慣性誘導直接制御方式を採用し、ジャイロセンサー、加速度センサー、機載コンピューターにより、最適な飛翔経路を制御します。

性能

最大射程は、基本型DF-5がペイロード3,900kgで12,000km、近代化型DF-5Aと最新型DF-5Bは、ペイロード3,200kgで13,000kmです。13,000kmの射程は、アメリカ本土を含めた北米全域を射程に収めます。命中精度は、基本型DF-5がCEP800m/12,000km、DF-5AとDF-5Bでは500m/13,000kmです。

発射作業

DF-5シリーズは、地下サイロから発射されます。中国では、偽装サイロを多く建設し、本物のサイロに格納されたミサイルの移動は行われていないと考えられています。地下サイロ発射方式は、発射準備作業を偵察衛星から隠蔽できるという利点があります。

配備

基本型DF-5は1981年から地下サイロに実戦配備され、近代化型DF-5Aは1986年から配備が開始されました。基本型DF-5は既に退役したと考えられています。MIRV搭載型DF-5Bは、2015年にアメリカ国防省の報告書に初めて記載され、2016年のミリタリーバランスで1個ミサイル旅団が運用しているとされました。

ジェーンズ年鑑によれば、これまでに20〜50発のDF-5と20〜30発のDF-5Aが製造されたと考えられています。2010年のアメリカ国防省の報告書では、20発のDF-5Aと20基の地下サイロが実戦配備され、4〜5発が予備として保管されているとされています。

DF-5/-5Aは、1ヶ所のミサイルサイトに4〜10基の地下サイロが設けられ、当初は河南省洛陽市洛寧県、河北省張家口市宣化県、チベット自治区アムド県に配備されたと考えられていました。その後、河北省衡水市景県、河南省三門峡市盧氏県にも配備され、酒泉と太原には予備のミサイルが保管されている可能性があります。

DF-5は2005年頃からDF-31Aへの代替が進められていますが、DF-5Aは現在も実戦配備の状態にあると考えられています。

ミリタリーバランス2016年版では、DF-5Aの運用は2個ミサイル旅団、DF-5Bの運用は1個ミサイル旅団で行われているとされています。

民間型

中国の打ち上げ用ロケットであるCZ-2A、CZ-2Cは、DF-5を基本に開発されました。

展示

中国国内の軍事パレードにもしばしば登場します。2019年10月1日の建国70周年式典では、「DF-5B」と大書されたミサイルが参加しました。

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