DNG/DCL戦車回収車

DNG/DCL戦車回収車

DNG/DCL戦車回収車は、フランスのルクレール主力戦車をベースに開発された戦車回収車です。DNGは新世代戦車回収車、DCLはルクレール戦車回収車を意味します。フランス陸軍とアラブ首長国連邦陸軍で使用されています。

開発経緯

アラブ首長国連邦（UAE）は、ルクレール戦車に独自の仕様を施した「トロピック・ルクレール」の導入を決定しました。しかし、当時UAEで使用していたAMX-30D戦車回収車では、トロピック・ルクレールの重量に対応したクレーンの吊り上げ能力やウインチの牽引能力が不足していました。そこでUAEは、開発元のGIAT社（現ネクスター）に対し、必要な能力を備えた戦車回収車の開発を依頼し、GIAT社はこの要請に基づきルクレールをベースとしたDNGを開発しました。

一方、フランスでは当初、AMX-40をベースにした戦車回収車を開発する予定でしたが、冷戦終結の影響でルクレールの調達計画が大幅に縮小されたため、開発計画は中止されました。その後、ルノーTRM-1000トラックにクレーンとウインチを搭載した回収車を採用しましたが、性能不足が問題となり、新たな戦車回収車を調達する必要が生じました。そこで、開発されていたDNGに加え、ヴィッカースのCRARRV、MaKのベルゲパンツァー3などとトライアルを行い、DNGをDCLとして採用することを決定しました。

仕様・装備

DNG/DCLは、ルクレールよりも車体を延長したため、転輪が片側七輪となっています。また、戦車型とは異なり、フランス用でもエンジンおよびトランスミッションにはユーロパワーパックを使用しています。

車体上部は、右側前部にクレーン基部、左側前部に乗員室、後部は取り外したエンジンなどを載せるための収納部となっており、戦車とは全く異なる構造となっています。

回収作業用装備

クレーン: エンジンや砲塔を吊り上げて取り外すために、車体右側にクレーンが装備されています。吊り上げ能力は30.6tで、操縦席にあるコントローラーを使って操作します。可動範囲は上下方向に水平から上へ70度、旋回方向には最大で270度です。
ウインチ: 路外に転落した戦車を引き上げるなどの作業のために、車体前部にウインチが装備されています。牽引能力は35.7tで、プーリータックルを使うことで牽引能力をおよそ107tまで増やすことができます。
ドーザー: ブルドーザーのように土を押し出したり、あるいはクレーンで物を吊り上げる時に車体を安定させるために、車体前部にドーザーが装備されています。
武装: 車長ハッチにはH2HB 12.7mm重機関銃が、また、車体前部、中央部、後部にはルクレールと同じGalix防御システム（擲弾発射装置）が装備されています。

オプション

K2D地雷除去装置: 本車には地雷除去作業を行うための地雷除去装置を装着することができます。装置は以下のものから構成されます。
マインプラウ: 前方の地面に埋まっている地雷を掻き出すための大型の鋤で、車体前部に取り付けます。
電磁地雷除去装置: 前方に埋まっている磁気反応地雷を誘爆させ処理するための電磁気発生装置で、マインプラウに取り付けます。
地雷除去ロケット: 地雷原を爆破処理して道を作るための装置で、爆薬付きのロケットを飛ばし、地雷を爆破処理します。車体上部の後部に取り付けます。
目印発射器: 車体左右に取り付けられ、地雷が除去された道を示すための印を、作業した場所の左右両端に打ち込んでいきます。
対戦車地雷散布装置: 対戦車地雷を散布するための装置で、車体上部の後部に搭載します。最大で600発の地雷を散布でき、5分で2,400の地雷原を作ることができます。
補助動力装置（APU）: 取り外し可能なディーゼル発電装置をオプションで追加できます。

関連項目

ルクレール
EPG装甲工兵車
戦車回収車

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