AMX-30

AMX-30：フランス生まれの主力戦車

AMX-30は、フランスのイシー＝レ＝ムリノー工廠で開発された、戦後第二世代に分類される主力戦車です。第二次世界大戦後のフランスは、戦車の技術開発が遅れていましたが、独自の道を模索し、西ドイツとの共同開発構想を経て、AMX-30を誕生させました。

開発の背景

第二次世界大戦で技術が途絶えたフランスは、戦後、アメリカ製のM4シャーマンやドイツのパンターを運用しつつ、ARL-44やAMX-50といった独自の戦車を開発していました。しかし、性能不足や開発の遅れから、1954年以降はM47パットンを主力としていました。そのような状況下で、フランスは新型主力戦車の独自開発を目指し、西ドイツとの共同開発構想が持ち上がりました。これが、後のAMX-30へと繋がります。

1957年、フランスと西ドイツは標準戦車に関する協定を結びました。この協定では、両国がそれぞれ開発した戦車を試験し、性能が優れた車両を両国が採用することとされました。当時、対戦車ミサイルや携帯対戦車兵器の脅威が増しており、標準戦車には高い機動力が求められ、装甲防御力は重視されませんでした。

特徴

1959年から試作車の製作が始まり、翌1960年には試作車が完成しました。フランスが開発した標準戦車の試作車両は、車高を低く抑えるためにイスパノ・スイザ製対向12気筒多燃料液冷ディーゼルエンジンを採用しました。また、目標を素早く発見するために、視察装置も重視されました。

主砲には、独自開発のCN-105-F1 105mm砲を搭載しました。この砲は、当初G弾という特殊なHEAT専用であり、ベアリングにより弾頭の周囲だけを回転させることで弾道を安定させ、成型炸薬弾の性能を最大限に発揮できるとされていました。しかし、コストが高く、威力も劣るという結果になったため、後にAPFSDSも開発されました。砲塔内にはエアコンプレッサーとブロアーが搭載されており、発砲後の排煙と装薬残滓の排出は高圧送風で行われました。

副武装として、主砲に並置する形で12.7mm重機関銃（改良型のB2は20mm機関砲）を装備しています。この機関銃は、対空射撃に使用することを想定し、独立して俯仰角を取ることができます。

標準戦車構想の頓挫とAMX-30の採用

1962年から、西ドイツ、フランス、イタリアの三カ国による共同試験が始まりました。しかし、西ドイツ製のレオパルト1の方が加速性や速度で僅かに勝っていました。試験後、フランス製標準戦車はAMX-30と命名され、フランス陸軍は1963年に正式採用を決定しました。一方、西ドイツもレオパルト1の採用を決定したため、標準戦車構想は頓挫しました。

AMX-30の量産は1965年から始まり、1974年まで続けられました。NATO標準戦車の座はレオパルト1に奪われましたが、AMX-30はスペインでライセンス生産され、ギリシャ、キプロス、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、ベネズエラなどに輸出されました。改良を重ねながら現在も使用されており、後継車であるルクレールと共に配備されています。

改良型と派生型

AMX-30は、その後の改良でFCSを中心に改良されたAMX-30B2や、輸出向けに改良されたAMX-30Sなどの派生型が登場しました。

AMX-30B2

1979年に開発が発表され、1982年からフランス陸軍への引き渡しが開始されました。166両が新規に生産されたほか、既存のAMX-30戦車から493両がB2仕様に改修されました。主砲同軸装備の12.7mm重機関銃は20mm機関砲に変更され、FCSが新型に換装されました。また、エンジンとトランスミッションが改良され、NBC防護装置が強化されました。

AMX-30B2 ブレニュス

1990年代中盤、AMX-30B2に爆発反応装甲を装着した改良型として開発されました。ブレニュスは、フランス陸軍の3個戦車連隊に配備されました。

AMX-32/40

輸出専用にAMX-30を発展させた型です。AMX-32は、AMX-30の車体、砲塔を全面的に改設計し、複合装甲を付与した上、新型FCSを搭載しましたが、1両も売れませんでした。AMX-40は、ルクレールと同じ120mm滑腔砲F1を搭載しましたが、これも受注がなく試作のみに終わりました。

その他の派生型

戦車型以外にも、AMX-30のシャーシを利用した装甲回収車型であるAMX-30Dや装甲工兵車型のAMX-30 EBG、地雷処理車型のAMX-30 EBD、155mm榴弾砲を搭載したAuF1 155mm自走榴弾砲、ローランド自走地対空ミサイルシステムを搭載した対空車両などが存在します。

採用国

AMX-30は、フランスの他に、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、キプロス、カタール、スペイン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ベネズエラなどで採用されました。

登場作品

AMX-30は、映画『ジャッカルの日』や『TAXi2』に登場しています。また、ゲーム『World of Tanks』や『Warthunder』にも登場します。

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