ルクレール

ルクレール戦車：フランスが誇る第3.5世代主力戦車

ルクレール（Leclerc）は、フランスで開発された第3世代、または第3.5世代に分類される主力戦車です。第二次世界大戦で活躍したフランスの英雄、フィリップ・ルクレール将軍にちなんで命名されました。一部文献では「ルクレルク」と表記されることもあります。

開発の経緯と概要

フランス陸軍の主力戦車であったAMX-30の後継として、1971年に基礎研究が開始されました。国営企業GIAT社（現ネクスター社）によって1986年に試作車、1989年に量産試作車が製造され、1992年からフランス陸軍への量産型引き渡しが始まりました。

現在、フランス陸軍が400両強、アラブ首長国連邦陸軍が若干の変更を加えた「トロピック・ルクレール」を400両弱、ヨルダン陸軍がアラブ首長国連邦からの譲渡車両を80両保有しています。調達価格は約740万ユーロです。

技術的特徴

ルクレールは、開発当時としてはアメリカのM1エイブラムスやドイツのレオパルト2などの第3世代戦車と比較して新しい設計であり、多くの技術的特徴を備えていました。ただし、現在では日本の10式戦車など、さらに新しい戦車も開発されています。

火砲

ルクレールは、主砲としてF1と呼ばれる52口径120mm滑腔砲を1門搭載しています。これは、西側戦車で広く使用されているラインメタルの44口径120mm砲よりも砲身が長く、砲弾に与えるエネルギーも大きいです。ただし、現在ではより長い55口径120mm砲も採用されています。

副武装として、H2HB 12.7mm同軸機銃1門と、ANF1 7.62mm対空機銃1門を装備しています。アラブ首長国連邦陸軍向けのトロピック・ルクレールでは、対空機銃が車長が操作するFN MAG 7.62mmリモコン機銃に変更されています。

主砲弾は、OFL120F1と呼ばれるタングステン弾芯のAPFSDS（装弾筒付翼安定徹甲弾）、OECC120F1と呼ばれる多目的対戦車榴弾、OE120F1と呼ばれる榴弾などを使用します。砲塔後部にはベルト式の自動装填装置があり、砲手がスイッチを押すことで指定された砲弾が自動的に装填されます。自動装填装置内のベルト式弾倉には即用弾22発、操縦手席右側のドラム式弾薬架には予備弾18発が格納されており、合計40発を搭載可能です。12.7mm重機関銃の弾薬は950発搭載します。

レーザー測距儀や暗視装置による精密な射撃が可能であり、砲の安定化により行進間射撃の命中精度も高くなっています。車長は砲手に優先して射撃操作を行うことも可能です。時速40kmで移動しながら3,000m先の動目標に対する行進間射撃において、初弾命中率95%という高い精度を記録しています。また、1分以内に6つの目標を追尾し、攻撃することが可能です。これらの性能から、M1A1エイブラムスを超える攻撃能力を持つとも言われ、世界最高水準の性能を実現しています。

モジュラー装甲

ルクレールの車体前面および砲塔前面には、モジュール化された複合装甲が使用されています。これは、装甲機能と構造を分離することで、新型装甲の開発時に容易に交換できること、被弾時に損傷した装甲を容易に交換できることを目的としています。複合装甲はセラミックスを使用しており、重量に対する防御効率に優れています。

車載電子機器

ルクレールは、高度なデータリンクシステムを装備しており、改修によって電子機器が強化されたアメリカのM1A2エイブラムスと同等の能力を初期から備えています。このため、ルクレールは第3世代からさらに進んだ第3.5世代MBT（主力戦車）に分類されることがあります。データリンクの充実やGPSの導入により、同士討ちのリスクや移動時の無駄を低減しています。

戦車に搭載される電子機器およびその技術はベトロニクス（車輌電子工学）と呼ばれ、ルクレールはこの分野で高い能力を持っています。

動力

ルクレールは、UNI Diesel社製のV8X複合機関を搭載しています。これは、8気筒ディーゼルエンジンとチュルボメカTM 307Bガスタービンを組み合わせたもので、最高7.5バールもの加給圧によって小型で高い出力を得ています。この高出力と軽量性により、0-32km/hまでの加速時間は6秒以下、最高速度は不整地で55km/h、路上で72km/hと高い性能を発揮します。また、ガスタービンは補助動力装置（APU）として独立して作動させることができ、電子機器への電力供給を担います。

懸架装置

ルクレールは、ハイドロニューマチック懸架装置を採用しています。これはシトロエン社製自動車の技術を応用したもので、優れた路面追従性と乗り心地を提供します。

車両防護

ルクレールには、Galix戦闘車両防護システムが搭載されています。これは、複数の種類の弾体を射出し、車両を防御するシステムです。赤外線遮断効果のある発煙弾、対人榴弾、赤外線フレアなどを発射し、敵の攻撃から車両を守ります。

派生型

ルクレールAZUR: 市街地戦を想定した仕様で、増加装甲やスラット装甲などが追加されています。
ルクレールXLR: スコーピオン戦闘情報システム、追加装甲、IEDジャマ―などを装備した改修モデルです。
EMBT: ルクレールの砲塔をレオパルト2A7の車体に搭載したタイプです。

運用状況

ルクレールは、フランス陸軍の機甲旅団や機械化歩兵旅団に配備されています。KFOR（コソボ治安維持部隊）への参加で初めて実戦に投入されました。アラブ首長国連邦の車両はイエメン内戦に投入されています。

登場作品

War Thunder: PCゲーム。
* Project Reality（BF2）: PCゲーム。

ルクレール戦車は、フランスの高度な技術を結集した、世界トップクラスの主力戦車です。その革新的な設計と高い性能は、今後の戦車の開発にも大きな影響を与えるでしょう。

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