DTMB

DTMB（Digital Terrestrial Multimedia Broadcast）とは

DTMBは、中華人民共和国を中心に採用されている地上デジタルテレビ放送の規格です。固定されたテレビ受像機だけでなく、スマートフォンなどのモバイル端末でも受信できるのが特徴です。当初はDMB-T/Hなどと呼ばれていましたが、正式名称はDTMBとなりました。

DTMBの誕生

DTMBは、2002年に中国の放送科学アカデミーで提案された複数の標準規格を統合したものです。具体的には、上海交通大学が開発したADTB-T、清華大学が開発したDMB-T、そしてTiMiという三つの規格がベースとなっています。当初、上海交通大学と清華大学はそれぞれ自らの技術を単独の標準にしようとしましたが、最終的には互換性を確保するために両方の技術を統合し、theTIMI 3標準に併合することで合意しました。DTMB規格は2004年に策定され、2006年8月18日に中国政府の公式な地上デジタルテレビ放送規格として発表されました。

中国国内での展開

DTMBは、中国国内で以下のスケジュールで導入されました。

2005年：試験放送開始
2006年8月18日：地上デジタルテレビ放送規格として正式採用
2008年：地上デジタル放送開始
2020年12月31日：地上アナログ放送停波

香港、マカオでの展開

DTMBは、香港特別行政区とマカオ特別行政区でも採用されています。それぞれの導入スケジュールは以下の通りです。

香港特別行政区

2006年8月18日：地上デジタルテレビ放送規格として正式採用
2007年12月31日：地上デジタル放送開始
2020年11月30日：地上アナログ放送停波

マカオ特別行政区

2006年8月18日：地上デジタルテレビ放送規格として正式採用

CMMBとの比較

DTMBは、中国で採用されている別のモバイル放送規格であるCMMBと比較されることがあります。DTMBは、より高画質な映像を安定して送信できる点で優位性があります。

DTMBを採用する国と地域

DTMBは、中国本土のほか、香港、マカオ、パキスタン、ラオス、カンボジア、東ティモール（試験中）、キューバ、コモロなどで採用されています。

DTMBの特長

DTMBは、従来のテレビ放送の基本機能に加えて、新しい放送システムを利用した多様なサービスを提供できます。主な特徴は以下の通りです。

柔軟な受信形態：固定テレビだけでなく、モバイル端末でも受信可能
多様なサービス：標準デジタルテレビ放送（SD）、デジタル音声放送、マルチメディア放送、データ放送などに対応
高画質対応：高精細度デジタルテレビ放送（HDTV）にも対応
高度な変調方式：シングルキャリアとマルチキャリアの両方式に対応

技術的な詳細

DTMB規格は、高速な同期と正確なチャネル推定のために、ガードインターバルとして擬似ランダム雑音（PN）を挿入しています。また、誤り訂正には低密度パリティ検査符号（LDPC）を採用しています。SD、HD、マルチメディア放送を組み合わせるために、時間領域同期直交周波数分割多重方式（TDS-OFDM）が導入されており、高度な技術が用いられています。単一周波数ネットワーク（SFN）とマルチ周波数ネットワーク（MFN）の組み合わせにも対応しており、柔軟な放送サービスが可能です。サービスの種類やネットワーク環境に合わせて、最適なモードとパラメータを選択できます。

時間領域で定義される擬似ランダム雑音シーケンスと、周波数領域で定義される離散フーリエ変換（DFT）の情報が、時間領域で多重化されているのが「時間領域同期（TDS）」の特徴です。

送信プロセス

送信時のエンコードから変調までのプロセスは、以下のようになっています。

1. データはエンコーダ、FEC（前方誤り訂正）、コンステレーションマッピング、インターリーブの各プロセスを経て、データブロックにまとめられます。
2. データブロックとTPS（transmission parameter signaling）情報が多重化されます。
3. データプロセッサによって、ボディとなるデータが形成されます。
4. ボディ側とヘッド側の情報が組み合わされ、データフレームが形成されます。
5. SRRC（Square Root Raised Cosine）フィルタでチャネルバンド幅8MHzの信号に変換されます。
6. 最後に、放送に利用する周波数帯の電波に乗せるために変調されます。

DTMBの性能

DTMBの主な性能は以下の通りです。

ビットレート: 4.813 Mbit/s から 32.486 Mbit/s
SD、HD、マルチメディアの複合サービスに対応
柔軟性の高いサービス提供が可能
時間領域および周波数領域でのデータ処理に対応
6～15チャンネルのSD放送、または1～2チャンネルのHD放送が可能
有線放送と同等の高品質受信が可能

関連項目

OFDMシステム比較テーブル
地上デジタルテレビ放送
ATSC (高度テレビジョンシステム委員会)
DVB-T (Digital Video Broadcasting—Terrestrial)
ISDB-T (地上波統合ディジタル放送サービス)

脚注と参考文献

Kumar, Amitabh (2007). Mobile TV: DVB-H, DMB, 3G Systems and Rich Media Applications. Focal Press.
宮崎 通 (2008年6月3日). “特集 世界のデジタルテレビ放送と東芝の取組み”. www.toshiba.co.jp.
中華人民共和国国家標準 GB 20600-2006 “数字电视地面广播传输系统帧结构、信道编码和调制 (Framing Structure, Channel Coding and Modulation for Digital Television Terrestrial Broadcasting System). 中国国家標準化管理委員会. (2006)

外部リンク

http://www.legendsilicon.com/?t=1&m=1&v=46
http://en.dtvstatus.net/
http://www.altera.com/support/refdesigns/sys-sol/broadcast/ref-dmb-t.html
IEEE Spectrum - Does China Have the Best Digital Television Standard on the Planet?
（Chinese） Information page of the standard on Standardization Administration of PRC site
（Chinese） Official announcement of intent to approve the standard on August 1, 2007 made by Standardization Administration of PRC
（Chinese） ChineseNewsNet report
（Chinese） C|Net China report
Hong Kong Technical Standard for Digital Terrestrial Television Broadcasting
MING-T, Multistandard Integrated Network convergence for Global Mobile and Broadcast Technologies
* （Spanish） Venezuela starts trials DTMB

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