DMB

DMB（デジタルマルチメディア放送）とは

DMB（Digital Multimedia Broadcasting, 디지털 멀티미디어 방송）は、韓国で開発された移動体向けのデジタル放送技術です。当初は固定および移動体向けのマルチメディア放送として開発されましたが、現在は移動体向け放送に特化しています。

T-DMB（地上波DMB）

T-DMB（Terrastrial-digital media broadcasting）は、2005年に韓国で放送を開始した小型携帯機器向けの地上デジタル放送です。テレビ放送、ラジオ放送、データ放送を提供しており、日本のワンセグに相当します。地上波DMBとも呼ばれます。

技術仕様:
映像：H.264/AVC
音声：MPEG-4 BSAC
データ放送：MPEG-4 Systems Core profile
送信周波数：VHF帯

受信困難な地域や地下鉄駅には、ギャップフィラー（電波中継器）が多数設置されています。特に地下鉄駅では、携帯電話事業者が設置・管理を行っています。また、インターネットを通じてT-DMBを遠隔受信するIP放送技術も開発され、海外でもほぼ同時に視聴可能となるDMBOというサービスも存在します。

韓国では、地上デジタル放送規格として米国のATSCを採用しましたが、この規格は広い地域に家屋が点在する環境向けであり、山岳地帯と大都市が近接する韓国ではマルチパス妨害の影響を受けやすいという問題がありました。そのため、当初はヨーロッパ方式（DVB-T）への転換を求める動きもありましたが、最終的にはATSC方式が維持され、移動体向け放送としてT-DMBが独自開発されました。

韓国政府は、日本のISDB-Tと同様に、T-DMBの海外普及にも力を入れています。T-DMBは、他の放送方式が既に導入されている地域向けに、移動体向け放送規格として普及を目指しています。他の移動体向け放送方式がUHF帯を使用するのに対し、T-DMBはVHF帯を使用するため、電波が届きやすいという利点がありますが、混信のリスクや、小型端末への搭載には不利になるという側面もあります。

現在、ヨーロッパではDVB-H、米国ではATSC-M/Hといった移動体向け放送規格が採用されているため、T-DMBの海外での普及は未知数です。かつてドイツで試験放送が行われたものの、正式採用には至っていません。

サービス事業者

T-DMBのサービス事業者は、地上波テレビ放送事業者とDMB専業事業者に分かれます。地上波テレビ放送事業者は、自社のテレビ放送のサイマル放送や独自編成のチャンネルを提供しています。主な事業者としては、以下のものがあります。

兼業事業者:
KBS（韓国放送公社）
MBC（文化放送グループ）
SBSネットワーク

主なDMB専業事業者:
YTN DMB（聯合テレビジョンニュース）
U1 Media
* 韓国DMB

S-DMB（衛星DMB）

S-DMB（Satellite-digital media broadcasting）は、韓国SKテレコムの子会社TUメディアが運営していた衛星デジタルマルチメディア放送です。2005年にサービスを開始し、衛星DMBとも呼ばれていました。加入費と月額料金がかかり、日本のモバHO!と同じ衛星MBSatを使用していました。放送方式も同一のITU-R勧告に基づいています。

地上テレビ放送のサイマル放送は禁止されていたため、独自編成で番組が放送されていましたが、スマートフォンの普及に伴う赤字増大により、2012年8月末でサービスを終了しました。

まとめ

DMBは、韓国における移動体向けデジタル放送の重要な技術です。T-DMBは地上波放送の補完として、S-DMBは衛星放送として、それぞれ独自の役割を担っていましたが、S-DMBはサービスを終了しました。技術的な利点と課題、国内外の動向を考慮すると、今後のDMBの展開は不透明な部分も残されています。

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