ATSC

ATSC規格（Advanced Television Systems Committee standards）とは

ATSC規格は、アメリカで開発された地上波デジタルテレビ放送の規格です。ATSC（高度テレビジョンシステム委員会）という団体が策定したことからこの名称が付けられました。この規格は、広大な地域に住居が点在するような環境での利用に適していますが、都市部や移動体での受信には課題もあります。以下に、ATSC規格の詳細について解説します。

ATSC（高度テレビジョンシステム委員会）

1982年に設立されたATSCは、アメリカ国内のデジタルテレビ放送規格を開発する団体です。ATSC規格は、この委員会によって策定されました。

ATSC方式の特徴

ATSC方式は、クレストファクターが小さく、カバーエリアあたりの電力が少なくて済むという特徴があります。このため、広大な地域に住居が点在するような環境での利用に適しています。しかし、シングルキャリア方式であるため、マルチパス妨害に弱く、都市部や移動体での受信には不向きです。このため、都市部ではケーブル[[テレビ]]を利用したり、移動体受信用に別の方式を併用するなどの対策が取られています。

アメリカでは、ATSC方式への移行を促進するため、2004年までに36型以上のテレビ、2006年3月1日までに25型以上のテレビ、そして2007年7月1日までにすべてのテレビとテレビ受信機能を持つ機器へのチューナー内蔵が義務化されました。その後、2009年6月12日には、ほとんどのNTSC方式の放送が停止され、ATSC方式への全面移行が完了しました。

ATSC規格の技術仕様

• - 音声圧縮方式: AC-3（ドルビーデジタル）
• - 映像圧縮方式: MPEG-2
• - 変調方式: 8VSB

ATSC規格では、以下の解像度が規定されています。

• - 1080×1920（60i、30/24p）：ワイド（16:9）
• - 720×1280（60/30/24p）：ワイド（16:9）
• - 480×704（60i、60/30/24p）：ワイド（16:9）、ノーマル（4:3）
• - 480×640（60i、60/30/24p）：ノーマル（4:3）

注：i=インターレース、p=プログレッシブ

アメリカでは、ABCとFOXとその系列局が720pで放送しており、その他は1080iで放送しています。ATSC規格では1080pでの放送も可能ですが、現在は放送されていません。

ATSC規格の採用国

ATSC規格は、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、大韓民国で採用されています。当初はATSCを採用予定だったアルゼンチンとホンジュラスは、ISDB-Tを改良したISDB-T Internationalを採用しました。

移動体受信技術

ATSC規格に関連する移動体受信のためのデジタル放送方式として、ATSC-M/H方式とDMB方式があります。

ATSC-M/H (Advanced Television Systems Committee - Mobile/Handheld)

ATSC-M/Hは、モバイル機器でのテレビ放送受信を目的としたアメリカの標準方式です。2009年にアメリカで放送が開始されました。ATSC-M/Hは、ATSC規格を拡張したもので、モバイル環境での受信に対応できるように設計されています。

ATSC-M/Hでは、信号の保護のために追加チャンネル符号化の仕組みが導入されており、ドップラー効果やマルチパス妨害への耐性が強化されています。1チャンネルあたりの最大ビットレートは4Mbps（実質1.5Mbps）で、ワンセグ（実質416Kbps）に比べて高画質・高音質な放送を実現できます。

DMB (Digital Multimedia Broadcasting)

DMBは、ATSC規格を採用している大韓民国で開発された、主に移動体向けの放送方式です。VHF帯の電波を利用して放送が行われています。DMBは、「固定および移動体向けのデジタル方式のマルチメディア放送」という位置づけです。

ATSC規格の将来展望

ATSC 2.0

ATSC 2.0は、ATSC 1.0との後方互換性を保ちつつ、テレビをインターネットに接続し、双方向的な要素を取り入れることで、インタラクティブで複合的なテレビ技術を可能にします。高度なビデオ圧縮、視聴者測定、ターゲット広告、強化された番組ガイド、ビデオ・オン・デマンドサービス、そして非リアルタイム（NRT）なコンテンツを含む、新しい受信形態に対応します。

ATSC 3.0

ATSC 3.0は、帯域増強と効率的な圧縮性能により、多くのサービスを視聴者に提供しますが、現行版との後方互換性は失われます。ATSC 3.0は、4K UHDTV (3840x2160) の解像度の映像を60fpsでサポートするシステムとして開発が進められており、2017年5月31日に韓国で地上波による4K UHD放送が開始されました。ATSC 3.0は、今後10年以内の登場が期待されています。

まとめ

ATSC規格は、アメリカを中心に採用されている地上波デジタルテレビ放送規格であり、その技術的な特徴や関連技術は多岐にわたります。今後も、ATSC 2.0やATSC 3.0といった新しい規格が登場することで、さらなる発展が期待されています。

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