Digital BETACAM

Digital BETACAM（デジタルベータカム）

Digital BETACAMは、SDTV（標準画質テレビ）に対応した放送および映像制作用のデジタルビデオテープレコーダー（VTR）規格の一つです。業界内では「デジベ」または「デジベタ」と略称されることもあります。

開発の背景

1993年、ソニーは、放送用ビデオ機器として事実上の業界標準（デファクトスタンダード）となっていたBetacamおよびBetacam SPの後継規格として、Digital BETACAMを開発・製品化しました。これにより、従来のBetacamフォーマットからの移行を促進し、より高画質な映像制作を可能にしました。

技術的な特徴

Digital BETACAMは、10bit量子化のデジタルコンポーネント（YCbCr 4:2:2）記録方式を採用しています。これにより、原画に忠実な色再現性と高画質を実現しています。音声は4チャンネルに対応しており、多チャンネルでの収録が可能です。

映像信号は、入力されたデジタルコンポーネント映像信号のビットレートを約1/2に低減し、DCT（離散コサイン変換）圧縮という不可逆圧縮方式を用いて記録されます。この圧縮方式は、視覚上の劣化を最小限に抑えつつ、データ量を削減することを目的としています。また、編集作業において、フレーム単位での編集を可能にするため、フレーム内圧縮方式（イントラフレーム圧縮方式）を採用しています。後継のBetacam SXなどのようにMPEG-2圧縮は採用されていません。

カセットの仕様

使用するビデオカセットの大きさはBetacamと同一ですが、Digital BETACAM対応カセットであることを識別するための検出孔が追加されています。カセットのボディは青灰色で、リッド（蓋）は黒色です。

また、Digital BETACAM機器の一部には、BetacamおよびBetacam SPフォーマットの再生に対応した機種も存在します。これにより、過去のアーカイブ素材をDigital BETACAM環境で活用することが可能です。

規格名の由来

ソニーは、Digital BETACAMを「D-1」「D-2」のように「D-4」と命名することを望んでいましたが、LTC（タイムコード）の記録方式がアナログであったため、D-4という規格名にすることはできませんでした。このため、D-4は欠番となっています。

実際の運用

Digital BETACAMは、その高画質と信頼性から、ドラマの収録、クロマキー合成による映像制作、比較的予算を抑えたCM制作など、幅広い分野で利用されています。特に、アニメーション制作においては、マスターテープとして事実上の標準フォーマットとして広く採用されています。

また、DVDのマスターテープとしても標準的なフォーマットと見なされており、映像制作業界における重要な役割を果たしています。放送局では、メディアコストの高いD-2フォーマットに代わる送出フォーマットとして、地方局を中心に多くの局で採用されています。スカパー！などの有料放送チャンネルでも、予算規模の大きいチャンネルを中心に、広く利用されています。

脚注

関連項目

ITU-R601
D-1 VTR
D-2 VTR
D3-VTR
D5-VTR
DVCAM
DVCPRO
Betacam SX
MPEG IMX
MII
HDCAM
P2
D-VHS
W-VHS

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