E-ビジネス

e-ビジネス

e-ビジネス（イービジネス、英: e-business）とは、企業がインターネットをはじめとするデジタル技術を、単に情報発信や電子商取引に留まらず、基幹業務を含むビジネスプロセス全般にわたって深く活用し、経営全体の効率化や変革を目指す概念、あるいはその実践形態を指します。

用語と表記

名称の冒頭にある「e」は、e-mail（電子メール）やe-money（電子マネー）と同様に、「electronic」（電子）を意味します。この用語が広まる中で、企業によって表記に違いが見られました。例えば、これを提唱し普及に大きな役割を果たしたIBMは「e-business」または「e-ビジネス」、Oracleは「E-Business」のように大文字・小文字を使い分ける例も見られました。

特にIBMは、e-businessの公式ロゴにおいて、インターネットを象徴するアットマーク（@）に似た文字を先頭の「e」として使用しました。このデザインは、「e-businessロゴ」、「e-ロゴ」、「サークルe」、「e-in-a-circle」など様々な名称で呼ばれました。同社のサーバー製品ブランドも「eServer」として統一され、ロゴと同様の字体が使用されましたが、特定のフォントが使えない環境では「IBM e(e-businessロゴ)server」といった代替表記も併用されました。

概要

e-ビジネスという考え方や用語は、1997年に当時のIBM会長であったルイス・ガースナー氏が提唱したことで広く認識されるようになりました。これは、以前からIBMが推進していたネットワーク・コンピューティングの概念をさらに発展させたもので、企業におけるインターネットの活用を、より戦略的かつ包括的なレベルへと引き上げることを目指したものです。

企業がインターネット技術を導入する段階は、一般的に以下のように進むと説明されました。

1. 情報発信中心: ウェブサイトの開設やメールの活用など、企業がインターネットを通じて一方的に情報を発信する段階。
2. 電子商取引の導入: 消費者向け（B2C）や企業間（B2B）での電子商取引を開始し、外部との双方向なやり取りを行う段階（e-Commerce）。
3. e-ビジネスの段階: 基幹業務を含む企業内のあらゆるビジネスプロセスにインターネット技術を統合し、業務全体の再設計や効率化を図る段階。
4. e-society/e-community/e-government: 最終的に、経済界、政府、教育機関など社会全体で情報技術が活用され、社会構造そのものが変革される段階。

e-ビジネスは、上記のように単なる電子商取引（e-Commerce）の上位概念であり、それとは一線を画す概念とされます。電子商取引もe-ビジネスの一部に含まれますが、e-ビジネスの核心となるのは、受発注や生産管理といった基幹業務を含むビジネスプロセスの抜本的な見直しと再構築（ビジネスプロセス・リエンジニアリング、BPR）です。これにより、市場や環境の変化に迅速に対応できる柔軟性を高め、経営効率を向上させるとともに、自社だけでなく関連企業や取引先をも含めたサプライチェーン全体の最適化（全体最適）を実現することが目指されました。

実現のための基盤

e-ビジネスを実現するためには、様々な技術やシステム、そして組織的な変革が必要となります。技術的な背景としては、インターネット自体の発展に加え、企業内ネットワークにインターネット技術を適用したイントラネット、さらに企業間ネットワークへと拡張したエクストラネットの普及が挙げられます。また、グループウェアによる情報共有、ポータルサイトによる情報集約、高性能な検索エンジン、JavaやWebサービスといった連携技術、携帯情報端末の活用なども、e-ビジネスを支える重要な要素となりました。

システム基盤（インフラ）においては、アクセス数やデータ量の急激な変動にも柔軟に対応できるスケーラビリティや可用性が求められました。これを実現するために、オートノミックコンピューティング（自律的にシステムを管理・最適化する技術）、ユーティリティコンピューティング（必要なリソースを従量制で利用する考え方）、仮想化技術などが注目されました。さらに、単なるシステム導入に留まらず、専門的なコンサルティングを通じて、情報システム以外の部分、すなわち組織構造や業務フロー自体の再構築も提案されました。これには、コールセンターの集約化、あるいは業務の標準化、外部委託（アウトソーシング）、関連企業との連携や組織再編（統廃合）なども含まれました。

その後の展開

e-ビジネスという概念は広く浸透しましたが、技術やビジネス環境の変化とともに、それに代わる新たなキーワードが登場しました。例えば、2010年にはIBM自身が、クラウドコンピューティングを「ポストe-business」と位置づける発言をしています。

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