EFV

EFV（遠征戦闘車）

EFV（Expeditionary Fighting Vehicle：遠征戦闘車）は、アメリカ合衆国で開発されていた次世代水陸両用強襲装甲戦闘車両です。AAV7水陸両用装甲兵員輸送車の後継として設計され、主力戦車M1エイブラムスと同等以上の陸上機動性を持つことを目標としていました。

開発経緯

アメリカ海兵隊では2015年からの配備を予定していましたが、2011年に当時のロバート・ゲーツ国防長官による軍事予算削減の方針により、開発は中止されました。

特徴

EFVは、水陸両用作戦能力と高い陸上機動性を両立させるために、数多くの特徴的な設計が盛り込まれていました。

武装

砲塔には、毎分200発の発射が可能な30mm機関砲（Mk 44 ブッシュマスター II）を中心としたMk.46兵器ステーションシステムを搭載しています。副武装として、M240 7.62mm機関銃も搭載されていました。

装甲

車体前部には、フラップを兼ねた前部装甲板があり、スペースド・アーマーとしての機能が期待されていました。車体側面は多数に分割されたボルト留めの装甲板で隙間なく覆われており、その下部は水上航行時の舷側を構成するためにキャタピラの下限近くまで伸びています。ただし、車体はアルミ合金製であるため、耐弾性能は低いとされています。付加装甲の予定は不明ですが、水上航行時には重量物の取り付けは難しいと予想されます。

車内配置

EFVは、3名の乗員（車長、砲手、操縦士）と17名の兵士を搭乗させることができ、上陸作戦を遂行可能です。兵士は機関部の側面で後ろ向き、そして後部で向かい合わせに座ります。

本車の特徴的な点として、エンジンの位置が挙げられます。重量バランスの都合と思われますが、車体の中央を大きな機関部が占めており、乗員・兵員はその周囲に位置しています。居住性への影響は不明です。また、砲塔の後ろには、船の煙突のように特徴的な排気管が突き出しています。

後部兵員室の兵士は、車体後部の乗降口から出入りします。肉厚ながらも大人一人がやっと通り抜けられるほどの狭いドアは、油圧または水圧で下を軸に開いて足場を構成するため、上陸地点が水辺や泥質であっても確実なステップとして機能します。

操縦システム

EFVは、地上車両としての操縦に加え、船舶としての操船機能が求められます。水上航行時には、コンピュータの多機能ディスプレイ（CDP）によってGPSでの自車位置を含む航法情報、敵・味方の情報など、各種の情報にアクセス可能です。また、車体左側に備わった上下に伸縮する赤外線映像装置（DTV）によって車外の映像を得ることができます。

水上航行モード

陸上から水上航行に移るには、まず陸上モードのまま水上に進入する必要があります。水上に浮かんだ後、水上航行モードへの変換が行われます。

EFVは水上と陸上の両方で十分な運動性能を満たすため、車体底部周辺に多数の可動部を備えています。最も目立つのは前部のフラップで、通常は前部装甲板として折り畳まれていますが、航行時には前方へ伸ばされ、プレーニングに適した船体形状を形成します。

車体底部のキャタピラ部は格納機構により上へと上昇し、車体底部より上に位置します。後部フラップは下ろされ、車体後部の底に平らな面を作り出します。底部フラップが回転してキャタピラ部を閉じ込め、底部のほとんどが平面となります。車体前部の底からは曲線状の板が延びてきて、前部フラップとキャタピラ部の覆い板とを繋ぎ、隙間を塞ぎます。

ウォータージェット推進システムの噴出口が回転して開き、底部フラップで隠されていた吸水口から水を取り込める状態となります。これらの変形により、車体底面は段差のない平らな面となり、前部のフラップと共にプレーニングに適した形状となります。

2基のウォータージェットは、2,703馬力のディーゼルターボエンジンの力で95万リットル/分の水を噴射し、35トンの車体を46km/h（24.8kt）で水面を滑るように進めます。

地上走行モード

水上航行モードの逆の手順で地上走行モードへ移行します。地上では851馬力のMTU MT883水冷ディーゼルエンジンとキャタピラによって最高速度72km/hでの走行が可能です。水上・地上モードの変更は、車内でのボタン操作のみで行えます。

比較

EFVは、AAV7の後継として、より高い機動性と火力を目指して開発されました。しかし、開発コストの増大と、国防予算の削減により、開発は中止されました。その後、ACV（水陸両用車）が新たな水陸両用車両として採用されています。

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