EJSM

エウロパ・ジュピター・システム・ミッション (EJSM)

EJSM（Europa Jupiter System Mission）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）と欧州宇宙機関（ESA）が共同で進める木星探査計画です。この計画は木星の衛星、特にエウロパとガニメデに注目しており、2020年に探査機が打ち上げられる予定です。ESAではこのプロジェクトを「ラプラス」と呼んでいます。

2009年の2月に、NASAとESAは従来のTSSMプロジェクトよりもEJSMを優先させると決定しました。しかし、ESA内部ではLISAやIXOという他の2つのミッションとの間で資金の競合が発生し、2013年には最終的にこの3つの計画から1つを選ぶ必要が出てきました。これに対し、NASAは計画の一部を単独で遂行するための代替案も保持し続けています。さらに、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）とロシア連邦宇宙局（Roscosmos）もEJSMに関心を示していますが、正式な協定はまだ締結されていません。また、EJSMの推定予算はオービターのみにおいて44.5億ドルであり、NASAが38億ドル（85%）、ESAが6.5億ドル（15%）を分担することになっています。

ミッション概念

EJSM計画の大きな特徴は、2機から4機のオービターやランダーの運用が提案されている点です。具体的な計画は以下の通りです：

- NASA: エウロパ周回機（JEO, Jupiter Europa Orbiter）—エウロパとイオを観測。
- ESA: ガニメデ周回機（JGO, Jupiter Ganymede Orbiter）—ガニメデとカリストを観測。
- JAXA: 磁気圏探査機（JMO, Jupiter Magnetospheric Orbiter）—木星の磁気圏を観測。
- Roscosmos: エウロパ着陸機（JEL, Jupiter Europa Lander）—エウロパの表面に軟着陸して直接観測。

EJSMのベースラインはJEOとJGOから成り、これらの機器は2020年に打ち上げられ、エウロパとガニメデの周回軌道に投入される前に、木星圏における複雑な探査活動を行います。これにより、イオの火山活動や木星の大気、及びガリレオ衛星との相互作用といった現象の観測が可能になります。また、エウロパとガニメデの氷の下に存在する海の特性調査も行われます。

JAXAの参加により、JMOは木星の磁気圏も探査し、JGOとJEOとの共同観測によりより広範なデータ収集が期待されています。

目的

EJSMの主たる目的は、木星系に生命が存在する可能性を探ることです。特に、エウロパやガニメデの居住性に関連する科学的な調査が行われます。具体的な科学的目標には以下の内容が含まれます：

- 地表下に存在する海の特性についての調査
- 氷の殻と地下水の性質の分析
- ガニメデの深部構造と固有の磁場に関する調査
- 外気圏、プラズマ環境、磁場の相互作用の比較
- 地表全体の構成物質や化学的特性の測定
- 現在または最近活動を行っている地域の地表特徴についての理解
- 将来の詳細な探査のための候補地の特定

ロシアのエウロパランダー計画

ロシア連邦宇宙局とロシア科学アカデミーは、エウロパに着陸する探査機計画を検討しています。ロシアのランダーはNASAやESAのオービターとは別にソユーズ系列のロケットで打ち上げられ、そのデータをNASAやESAのオービターを経由して地球に送信する予定です。この降下モジュールには、広範囲な国際的な参加が期待されており、探査装置や科学機器が搭載されることになります。

NASAのエウロパ掘削研究

NASAはエウロパの氷の下にある海を直接探査するための技術を開発中です。2002年にはノルウェーで氷を溶かしつつ進むロボット（クライオボット）の試験が行われ、23メートルの深さまで成功裏に潜ることができました。このクライオボットが氷の層を貫通し、水に到達すると、自律型の水中機（ハイドロボット）を放出してデータを収集します。これらの機器は、地球からの生物とエウロパの生物を混同しないよう、またエウロパの海を汚染しないように厳重に殺菌処理が施される予定です。さらに、放射線に耐える新しいカメラ技術も開発されており、これによりエウロパの海の探査が進められています。新型潜水試作機「ENDURANCE」は、2009年の段階で南極大陸のボニー湖で試験が行われています。

以上のように、EJSMは人類にとって新たな宇宙の探求の一環として重要な役割を果たすことが期待されています。

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