EMPAR

EMPAR (European Multifunction Phased-Array Radar)

EMPARはイタリアのアレニア・マルコーニ・システムズ社（現在のSELEX）によって設計された艦載多機能3次元レーダーです。このレーダーは、PAAMS(E)武器システムの中心的なセンサーとして機能し、特にイタリア海軍ではMM/SPY-790として広く採用されています。

来歴

EMPARの開発は1965年に始まり、1980年代後半にNATO加盟国による共通フリゲートのプロジェクトであるNFR-90計画と密接に関連しています。この計画では、イタリア海軍向けに同社製の多機能レーダーが搭載される予定でしたが、計画の調整が難航し、1990年にイタリアは脱退しました。しかし、その後フランスやイギリスとの協業によりホライズン計画が発足し、このプロジェクトに応じてEMPARの開発は継続されました。1995年中盤には、アルピーノ級フリゲートのカラビニエーレに試作機が搭載され、洋上試験が始まりました。2008年にはフランス海軍の「フォルバン」が初の実用機搭載艦として就役しました。

設計

EMPARの設計には、パッシブ・フェーズド・アレイ（PESA）方式が採用されており、アンテナには2,160個の送信管が配置され、多様な目標を検出できます。試作機では背中合わせの回転式が使用されていましたが、実用機では一面回転式に変更されています。アンテナはおおよそ2100mmの高さと2200mmの幅、1010mmの奥行きを有し、傾斜角は垂直から約30度です。最大出力は約120キロワットで、Cバンドで動作し、ペンシル・ビームの幅は通常2.6度に設定されています。

レーダーは大きな目標に対しては180km、2m²の小型目標には100km、0.1m²の目標に対しては50kmの探知距離を持っています。EMPARは300個の目標を同時に処理でき、その中で50個の目標については武器を指向する精度で追尾が可能です。しかし、実際に同時に攻撃できる目標数は24に限られています。また、最大でレーダーの75%を新たな目標捜索に、20%を既知の目標追尾に、5%をミサイル誘導の指令に使用することが計画されています。

採用国と搭載艦

EMPARは複数の国で採用されており、具体的には以下のような艦に搭載されています。

- アルジェリア海軍：揚陸艦「カラート・ベニ・アベス」（KRONOS）
- イタリア海軍：軽空母「カヴール」、アンドレア・ドーリア級駆逐艦、カルロ・ベルガミーニ級フリゲート
- カタール海軍：アル・ズバラ級フリゲート（KRONOS）
- フランス海軍：フォルバン級駆逐艦

EMPARは、その高い性能と多機能性から、現代の海軍戦力に不可欠な存在となっています。

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