EXO1

EXO1（exonuclease 1）は、ヒトにおいてEXO1遺伝子にコードされる酵素です。このタンパク質は、その名の通り5'→3'方向のエキソヌクレアーゼ活性を持つほか、DNA/RNAハイブリッドのRNA鎖を切断するリボヌクレアーゼH活性も有しています。EXO1はDNAミスマッチ修復や相同組換えといった重要なDNA代謝プロセスに関与しており、特にMSH2やMLH1といった因子と相互作用することが知られています。EXO1遺伝子からは、選択的スプライシングによって複数の異なる転写バリアントが生じることが報告されています。

減数分裂における役割

EXO1は、生物の生殖細胞形成に不可欠な減数分裂の進行に重要な役割を果たします。出芽酵母やマウスを用いた研究により、EXO1が減数第一分裂の中期への円滑な移行に必須であることが示されています。

減数分裂時の遺伝的組換えは、通常、DNAの二本鎖切断（DSB）から開始されます。DSB後、切断端の5'末端側がヌクレアーゼによって分解・除去されるresection過程が起こり、一本鎖の3'末端オーバーハングが露出します。これが相同なDNA鎖へ侵入しDループを経て、乗換え（CO）型または非乗換え（NCO）型の組換えが完了します。CO型経路は、ダブルホリデイジャンクション（DHJ）という中間体を経由し、その適切な解消が必要です。

出芽酵母におけるExo1

減数分裂期の出芽酵母では、Exo1の発現が強く誘導されます。Exo1変異酵母では、DSB後のresectionやCO型組換え頻度が著しく低下します。酵母Exo1は、組換え過程で時間的に異なる2つの重要な機能を担います。まず、早期のresection過程では、主要な5'→3'エキソヌクレアーゼとして機能します（ヌクレアーゼ活性依存）。次に、組換えの後期には、CO型組換え完了に不可欠なDHJ構造の解消を促進します（ヌクレアーゼ活性非依存）。この後期の機能では、MLH1-MLH3複合体やSgs1ヘリカーゼといった他の因子と協調して働きます。

マウスにおけるExo1

マウスでEXO1を欠損させると、オスの減数分裂ではパキテン期までは進行しますが、多くの生殖細胞でキアズマ形成異常が生じ、減数第一分裂前期を正常に終えられません。マウスにおけるこの減数分裂機能も、ヌクレアーゼ活性自体には依存しないことが示されています。ヌクレアーゼ活性を失わせる点変異マウスでも同様の表現型を示します。

DNA代謝における重要性

EXO1は、DNAミスマッチ修復や相同組換えに加え、特に減数分裂におけるDNA二本鎖切断処理や乗換え型組換え完了において、多角的に機能する重要な酵素です。

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