Ectomorphed works

L'Arc〜en〜Ciel リミックスアルバム『ectomorphed works』

『ectomorphed works』（エクトモーフト ワークス）は、日本のロックバンド、L'Arc〜en〜Cielが2000年6月28日に発表したリミックスアルバムです。Ki/oon Recordsより発売されました。このアルバムは、バンドとして唯一のリミックス作品であり、yukihiroが全曲のリミックスとプロデュースを手掛けています。

アルバム概要

本作は、1998年から2000年にかけてリリースされたシングル7作品のカップリング曲として収録されていたyukihiroによるリミックス音源を再構築したものが中心となっています。さらに、本作のために新たに制作された3曲のリミックスも収録され、全10曲で構成されています。

新規リミックスとして収録されたのは、「a swell in the sun」（13thシングル「snow drop」カップリング曲）、「larva」（6thアルバム『ark』収録曲）、「l'heure」（7thアルバム『ray』収録曲）の3曲です。

マスタリングは、日本を代表するマスタリングエンジニアである小鐵徹が担当しました。小鐵氏は、yukihiroが2021年に結成したPetit Brabanconの作品でもマスタリングを手掛けています。

制作背景

本作に収録されているリミックスの多くは、過去にシングルのカップリングとして発表されたものをベースに、yukihiroが再構築したものです。yukihiroは、過去のリミックス作品を「やり直して出せるものなら出したい」という思いがあったと語っています。リミックスの対象となったのは、kenまたはyukihiroが作曲した楽曲に限定されています。

yukihiroは、ken作曲の楽曲を多く選んだ理由について、「たまたまだが、kenの曲は世界観がわかりやすいからかもしれない」と述べています。

一般的に、リミックスアルバムは外部のクリエイターにリミックスを依頼することが多いですが、本作ではyukihiroがトラックダウンまで全てを一人で担当しています。この点について、yukihiroは「ミックスを自分でやりたかった。今までは別のエンジニアに任せていたが、今回は自分の世界観を明確にしたかった」と語っています。

録音と音楽性

『ectomorphed works』の録音作業は、マスタリングを除き、全てyukihiroのセルフスタジオで行われました。曲順の決定を含むアルバム全体のプロデュースもyukihiroが単独で手掛けており、L'Arc〜en〜Cielの他のメンバーは制作にほとんど関与していません。tetsuyaは、本作を「完全にyukihiroのソロワーク」と捉え、自身の関わりはジャケットや収録曲の確認程度だったと述べています。

yukihiroは、アルバムの曲順について「前半と後半で雰囲気を分け、最後に少し救われるような流れにした」と説明しており、DJプレイを意識した構成になっていると語っています。

本作の音楽性は、yukihiroが影響を受けてきたインダストリアル、ニュー・ウェイヴ、テクノなどのダンスミュージックの要素が強く反映されており、サンプリングやコラージュを駆使したリミックスが特徴です。ダブやハウスといったジャンルの影響も感じられます。また、本作は、yukihiroがL'Arc〜en〜Ciel加入以前に制作していた作品との共通点も多く、DIE IN CRIESのリミックスアルバム『re-make』や、ソロアルバム『「8.13」LIVE AT NISSIN POWER STATION '95.8.13』との関連性も指摘されています。

さらに、1980年代後半から1990年代初頭に流行したマンチェスター・ムーブメントからの影響も感じられます。yukihiroは、マンチェスター・ムーブメントに触れたことがリミックスをしたいという欲求に繋がったと語っています。当時、ザ・ストーン・ローゼズ、プライマル・スクリーム、アンダーワールドなどの作品を愛聴していたそうです。

yukihiroは、リミックスにおける自身のアプローチを「原曲の世界観をより明確に打ち出すこと」と語っており、既存の枠にとらわれない自由な発想でリミックスを行っています。また、本作の制作を通して、自身の音楽性について「暗い、ハッピーな曲は作れない」と認識したそうです。

リミックス手法としては、サンプラーによる音源やブレイクビーツのサンプリングではなく、原曲のマルチテープを使用しています。各パートを独立して抽出し、サンプリングやエフェクト処理により音色、テンポ、キーを自在に変更しています。リミックス作業では、yukihiroが所有する様々なアナログシンセサイザーが使用されました。

本作は、yukihiroが2001年から始動したソロプロジェクト、acid androidの礎とも言える作品となっています。

アルバムタイトル、アートワーク

アルバムタイトルはyukihiroが命名しました。『ectomorphed』は、「外側から再形成する」という意味を持つyukihiroの造語です。ジャケットのアートワークは、L'Arc〜en〜Cielの多くの作品を手掛けてきたモート・シナベルが担当しました。

リリースプロモーションでは、映画『ピーター・グリーナウェイの枕草子』の美術やユニクロのクリエイティブディレクターを務めたタナカノリユキが手掛けたCM映像が放映されました。また、朝日新聞には漫画家のさいとう・たかをが手掛けた一面広告が掲載され、メンバー4人が漫画『ゴルゴ13』の主人公、デューク東郷をモチーフにしたイラストで登場しました。

リリース形態

フィジカル盤は、CDとLPの2種類が発売されました。CDは通常盤の1形態で、初回限定仕様は2面デジパック仕様です。LP盤は、L'Arc〜en〜Cielのアルバム作品として初のリリースとなりました。

2011年には、スマートフォン向け音楽ダウンロードアプリ「レコチョク」で配信が開始され、2012年にはiTunes Storeでも配信が開始されました。2019年には、各種サブスクリプションサービスでも配信が開始され、現在ではほとんどの音楽配信サービスで本作を聴くことができます。

収録曲

CD

1. larva [ectomorphed long mix]
2. trick [new2 wave of japanese heavy metal mix]
3. 花葬 [0628 mix]
4. fate [everybody knows but god mix]
5. 浸食 -lose control- [ectoborn mix]
6. a swell in the sun [system in chaos mix]
7. l'heure [quiet afternoon mix]
8. cradle [down to the moon mix]
9. 真実と幻想と [out of the reality mix #2]
10. metropolis [android goes to be a deep sleep mix]

LP

Side A
1. larva [ectomorphed long mix]
2. trick [new2 wave of japanese heavy metal mix]
3. 花葬 [0628 mix]
4. fate [everybody knows but god mix]
5. 浸食 -lose control- [ectoborn mix]

Side B
1. a swell in the sun [system in chaos mix]
2. l'heure [quiet afternoon mix]
3. cradle [down to the moon mix]
4. 真実と幻想と [out of the reality mix #2]
5. metropolis [android goes to be a deep sleep mix]

各曲解説

larva [ectomorphed long mix]
6thアルバム『ark』収録曲のリミックス。曲を長くすることを意識し、原曲よりも3分近く長い7分を超える大作に。アンダーワールドのような雰囲気を目指した。
trick [new2 wave of japanese heavy metal mix]
7thアルバム『ray』収録曲のリミックス。シングル「NEO UNIVERSE／finale」に収録されたものとは別バージョン。サンプリングから作ったギターリフがきっかけでリミックスされた。キックの音選びに苦労した。
花葬 [0628 mix]
11thシングル表題曲のリミックス。シングル「forbidden lover」などに収録されたものとは別バージョン。デペッシュ・モードを意識した。シングル版からリズム部分が変更されている。「0628」は発売日に由来。
fate [everybody knows but god mix]
5thアルバム『HEART』収録曲のリミックス。シングル「Pieces」に収録されたものとは別バージョン。kenが新たにギターを弾いており、そのテイクをyukihiroが編集した。イントロにはイタリアのオペラ歌手の声をサンプリングしたものが使われている。「everybody knows but god mix」は「神のみぞ知らず」を意味する。
浸食 -lose control- [ectoborn mix]
12thシングル表題曲のリミックス。シングル版とは大きくアレンジが異なる。ドラムンベース的でロックテイストな仕上がり。元々はナイン・インチ・ネイルズの曲がアイディアの源泉。yukihiroはシングル版の出来に納得しておらず、本作で再度リミックスしている。
a swell in the sun [system in chaos mix]
13thシングル「snow drop」カップリング曲のリミックス。レコードノイズとディストーションサウンドが特徴的。混沌としたイメージを、砂嵐のような音で表現した。原曲から音を足す作業はあえて行われなかった。
l'heure [quiet afternoon mix]
7thアルバム『ray』収録曲のリミックス。静かな午後の雰囲気を意識。ベースとドラムの音作りにこだわった。ドラムの音がドライなのが特徴。
cradle [down to the moon mix]
6thアルバム『ark』収録曲のリミックス。シングル「Driver's High」に収録されたものとは別バージョン。女性ボーカルが追加されている。hydeのボーカルを女性が英語で歌い、掛け合いのように聴こえるのが特徴。
真実と幻想と [out of the reality mix #2]
6thアルバム『ark』収録曲のリミックス。シングル「LOVE FLIES」に収録されたものとは別バージョン。原曲のコード感を全てバラし、全く異なる音源に。ベースラインはレゲエやダブを意識している。後半にはゲートによる音のカットが施されている。
metropolis [android goes to be a deep sleep mix]
8thシングル「winter fall」カップリング曲のリミックス。シングル「HEAVEN'S DRIVE」に収録されたものとは別バージョン。スローなハウスを意識して制作。ダウナーで気怠い印象に。爽やかなミックスにするため、音数が減らされている。演奏時間は10分と、L'Arc〜en〜Cielの中で最長。yukihiroは過去のインタビューでこのリミックスを「一番気に入っている」と発言している。

クレジット

hyde：Vocal
ken：Guitar
tetsu：Bass
yukihiro：Drum

[Produce & Mastering]

yukihiro：All Re-mixed & Produced
小鐵徹：Mastered

[Artwork etc]

中山千恵子：Directed
中山道彦：A&R
So Fukuda：L' Project
Masahito Ishikawa：L' Project
Hirokuni Sakai：L' Project
Tadahiko Shida：L' Project
Amiko Tanaka：L' Project
Masakazu Enya：Management
Takayuki Seki：Management
Nobuyuki Akani：Management
Kiyoshi Fukushima：Management
モート・シナベル：Art Direction & Design
Hiroshi Yano：Illustration & Design Assistant
Aya Sasamori：Product Co-ordinate
Tatsuo Adachi：Executive Producer
大石征裕：Executive Producer

参考文献

『uv vol.32』、ソニー・マガジンズ、1998年
『Gb』、ソニー・マガジンズ、1998年11月号
『GiGS』、シンコー・ミュージック、1998年12月号
『R&R NewsMaker』、ビクターエンターテインメント、1999年6月号No.129
『R&R NewsMaker』、ビクターエンターテインメント、1999年7月号No.130
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジンズ、1999年11月号
『CDでーた』、角川書店、2000年2月5日号 vol.12 No.2
『WHAT's IN?』、ソニー・マガジンズ、2000年7月号
『uv vol.56』、ソニー・マガジンズ、2000年
『L'Arc〜en〜Ciel Box Set of The 15th anniversary in formation CHRONICLE of TEXT 02』、ソニー・マガジンズ、2006年
* 『L'Arc〜en〜Ciel Box Set of The 15th anniversary in formation CHRONICLE of TEXT 03』、ソニー・マガジンズ、2006年

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